クレタとカエルと騎士

富井

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まだまだ続く旅

行くか帰るか

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「どうしてまた理玖のばあちゃんちに戻った。」

「戻ったわけじゃない。メシを食うところがここ以外思いあたらないんだ。それに寝床もセットだから探さなくてすむし。朝飯もあるしな。」

「俺達は、受け付けに向かっているんだろうな。」

「おう、それは大丈夫だ。ちゃんと方位磁針も持ってるし、地図だって・・・ほら。」

広げて見せたが、その地図は理玖達には理解不能だった。

大事そうに角を揃え、折り目を整えてたたみ、机の上に方位磁針と重ねて置いた。

「さあ、晩御飯を取ってきてくれよ。」

「またコロッケじゃねえだろうな。」

「お前が好きだと思ったから初日はコロッケにしてやったんだ。今日は俺が大好きなやつだ。」

「なんだ、大好きなやつって。」

「とりあえず取って来いよ。取って来たらわかる」


理玖の背中を階段のほうへ「ポン」と押した。

階段を下りて店に行くと、今日も店の中で働く祖父と祖母の幻影が見えた。

今日見えた二人は少し若い感じがした。

店のカウンターの端にいたのは小学校の頃の理玖だった。

祖母にお弁当を作ってもらい、リュックサックに入れてもらっているところだった。

リュックを担いで手を振り店の外へと出て行った。

理玖は思い出した。遠足の前日に母親が入院し、お弁当を店で作ってもらったんだった。

その弁当を持って父親の車で学校へ送って行ってもらった。

どうしてそんな幻影を見るのか、少し不思議だった。

カウンターの上には山のようなエビフライとタルタルソース。

それとお稲荷さん。

理玖は大きめのお盆にそれを乗せて二階へ運んだ。

「うわー!やったー!」

クレタは子供のように喜んでエビフライを手づかみでタルタルソースのはいった器を独り占めして食べはじめた。

太もそれに倣い、競うように食べ始めた。

理玖は一生懸命思い出していた。

祖母の弁当を持って遠足に行った時、何かとても特別な事があったはずだった。

「なあ、小学校の遠足で・・・」

「ああ、理玖と太が大喧嘩した。」

ヒロトがケラケラと涙まで浮かべて笑いながら話しを始めた。

「そんな面白い事だったか?」

「ごめん。笑っちゃダメだね。3年生の遠足の時の喧嘩が最高だった。

理玖のお弁当事件。」

「あー・・・」

理玖と太は指を指し、同時に声をあげた。

あの時は、祖母が特大のエビフライを3匹入れてくれた。

前日、太と大喧嘩して、仲直りして3人で分けるようにと、タルタルソースも3つの入れ物に小分けして持たせてくれたのに、その日はみんなの荷物が荒らされる事件が起きた。

みんなはせいぜい弁当の蓋が開けられるくらいだったのに、理玖の弁当だけきれいに食べられていたという事件だ。

ひそかにエビフライを楽しみにしていた太も思い切りキレて、理玖はお腹がすいたのに食べるものがなくて、その時の二人の喧嘩は伝説になるほど激しく、止めにはいったヒロトも腕を骨折した。


「クレタ・・その味を知っているということは・・・」

「そう、俺が食べた。あの日、雲の上からお前たちをのぞいていたらおっこちちゃって、ちょうどお腹も空いてたし。色々見てまわった中で理玖のが一番美味しそうで、匂いもとてもよかった。だから食べた。」

「食べたじゃねー俺の前歯の右側返せ。」

「はあ?」

「やっと生え揃ったと思ったら、この日理玖に折られた。」

「あ~・・・」

理玖とヒロトは、その時の状況を細かに頭の中に思い浮かべると、思わず声が出た。

そして、妙にぴったりと呼吸が合い声がそろうと、太はムッとした顔で睨みつけた。

「悪かったよ。ごめんな。あんなに思い切り殴って。痛かっただろう。」

「もう忘れた。思い出ってやつだ。

それよリ、早く食わないとなくなるぞ。女神様の食べるスピードが想像以上に早いぞ。」


理玖も話しをしている時からチラチラと気にはなっていたが、クレタは両手に二、三本持って頬張ると言うより、喰らっていると言う表現の方が正しいし、女神と言うより悪魔に近い食べっぷりだ。


「そのたべっぷりを見ているだけでお腹いっぱいだよ。」

「じゃあ食うなよ。減るし。こんなに美味しいのに。」

「美味しいのはしってる・・・クレタがそんなに喜んで食べているのを知ったら、じいちゃんもばあちゃんも喜ぶよ。」

「じゃ、お前達を送ったら今度はお客さんでこようかな・・・
そうだ、理玖に手紙が届いていた。」

「誰から。」

「神様」

「クレタも神様だろう。」

「もっともっともーっと、偉い神様から。」

「そんな偉い神様から何。」

クレタはエビフライのカスと油で汚れた手のまま、ジャージのズボンのポケットから封筒を一通取り出した。

「クレタのポケットって、ポストにもなるのか。」

指の汚れがくっきりとついた封筒は、ハスの型押しがついた白よりも白い、とても上質な紙でできたものだった。

丁寧に封を開けると、中からは眩しい程に輝く金の紙が2枚。

「折り紙?」

「違う。天国行きのキップだよ。理玖はお利口さんだからご褒美だよ。
これを使ったら、今すぐ天国に行ける。2枚あるから、太かヒロトのどっちか連れていける。どっちにする?」

「そんな選べる訳ないだろ。二人とも大切な友達だ。
第一、ヒロトを置いて行ったとして、クレタはヒロトの傷の手当てしてあげられるの。」

「いやだ。ヒロトガエルのイボ潰れて臭い。無理だ。」

「じゃあ太を置いて行ったら?ヒロトがいるからまだおとなしくしているけど、いなくなったら、どれくらい暴走するか、俺は想像できないけど。
クレタは大丈夫なんだろうな。」

「それも無理。」

「じゃあ、残るしかないだろ。それに、3人一緒じゃないと意味ないんだ。
それは最初にクレタだって言っていただろ。だから、これは使わない。みんなと一緒に行くよ。」

「いいのか、これを使ったら簡単に、楽に、楽しいところに行けるんだぞ。」
「いや、いいよ。それに三人じゃないところの楽しいところなんて興味ない。

太がもう一度あっちに戻りたいと言うなら俺も戻る。

そこに、ヒロトも戻ってもらわないと困る。そこが俺たちの居場所だ。」

「本当にいいのか。
この先、辛いことや苦しいこともたくさんあるかもしれないぞ。それでも行くのか。」

「行くよ。辛いことも苦しいこともあるだろうけど、楽しい事や嬉しい事もあるかもしれない。それは行ってみないとわからないだろ。だから、これは返すよ。」

「いいんだなそれで。」

「それに俺はクレタも心配で離れられないよ。俺達がいないと絶対たどり着けないだろう。」

クレタは「あっ」と何かを思い出したように動きが止まり、両手に持っていたエビフライをポトッと落とした。

「理玖にそんな紙を渡すくらいなら、俺たちに何か武器をよこせよ。」

太の言葉に今度は「えっ」という顔をして、せっかく拾ったエビフライを又落とした。
「いや・・・危ないから・・・・」

「突然ガリウスが現れたらどうするんだよ。お前が戦えるのか。」

「た・・・戦うさ・・・」

「弱いのに?」

「お前ら・・やっぱり俺をバカにしてる・・・」


「そんなことないよ、心配しているんだよ。

クレタが一人で戦うにはガリウスは強すぎるでしょ。僕ら3人でもかなわなかったのに。」

クレタは又俯いて鼻をぐずぐずとすすりだした。

ひょっとしたらまた泣くんじゃないかと思い、ヒロトが慌てて慰めに入った。

理玖も太も泣き出しそうになった時はめんどくさいなと思ったから、ヒロトがいてくれて本当に助かったと思った。

ヒロトはそんな二人の気持ちが手にとるように分かった。

そしてまた思っていた、理玖と太は本当にそっくりだと。

だから喧嘩もよくするけど、わかり合えると大親友になれる。

今、二人はほぼわかり合えている。

だから、この旅が終わることには大親友になっているに違いない。

「ねえ、理玖にはさっきの剣がいいんじゃない。上手に使いこなせてた。」

「俺はさっきのロケットランチャーでいいぞ。」

「あれは危ない・・・太も剣でいいじゃないかなあ。

ロケットランチャーはもう玉がない・・・」

「いっぱい持って来たって言っただろ。」

「言ったけど、あんなにいろいろなものぶっ壊していたら、俺が怒られる。」

「なら。太も剣にしろよ、ヒロトも。おそろいでいいだろ。そのほうが喧嘩しない。」

「そうだな。俺がランチャー持っていたら、理玖と喧嘩するたびに撃ってしまいそうだしな。」

「怒らせないように努力するよ。」


太と理玖とヒロトはおそろいの剣を借りた。クレタのポケットはいろいろなものが出てくるから面白いが、元は太のジャージだ。

でも太が手を入れたもポケットの隅にたまったほこりくらいしか出てこない。

本当に不思議だ。

「晩飯が終わったら寝ろ。明日もいっぱい歩くぞ。」

「クレタ、明日の朝ご飯はアイスコーヒーだね。」

「うん。ミルクいっぱいにしてくれよ。」

「わかった。・・・・お休み。」
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