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四日目
さよならカエル
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今日も快晴だった・・・
「ハイ、皆さん。注目!」
電話帳を2冊重ねた上にクレタが乗って一回手を叩いた。
コホ、コホっと2度ほど咳ばらいをしてから手を後ろに組み、三人が自分のほうを見たことを確認すると演説を始めた。
「はい、このたび・・・かわいい顔してとってもダークなヒロト君。
虫も殺さないような優しい顔で友達をガンガン裏切って来たヒロト君。
何も知らない、純真無垢な顔をして、恐ろしいことを企てて来たヒロト君。
嘘をついてカエルの手に変えられてしまった哀れなヒロト君が、十六年の人生の中で、たった、たった、たった、たった・・・・・一度だけ、いいことをしていることが判明いたしました!
それで、そのいい事が認められ、カエルから人間にかえる運びとなりました!」
「おお!!まじかよ!よかったなヒロト。」
「よかった。やったな。」
「うん、ありがとう!!」
三人は少し涙ぐみ、肩を組んで喜んだ。
「あのさ、カエルとかえるで、ダジャレだったんだけど・・・気づいてくれた??」
「で、いつだよ。いつちゃんとした手に変えてもらえるんだ。」
「それはこれから話すけど・・・ダジャレ、気づいてくれた??」
「よかったな・・・ヒロト・・・」
「うん。ありがとう、太、理玖。二人には本当に迷惑ばかりかけて・・・ごめんね。」
「いいんだ。そんな、迷惑だなんて思ってない。よかったな・・・本当に良かった。」
「またその細い指でマッサージしてくれよ。」
「うん。いいよ。」
理玖、太、ヒロトは本当に、本気で喜んだ。そして、クレタのダジャレには全く気が付いていなかった。それなのに・・・
「ねえ、ねえ、ねえ、気づいてくれた?おもしろい、ねえ、面白かった??」
クレタは三人が抱きあって喜んでいる真ん中に顔を無理やりこじ入れて何度も確かめた。
「うん、うん。おもしろかった。だから、いつ戻るのか教えてくれよ。」
「本当に?本当に思っているのか。」
「思ってるって。だから、いつだよ。」
「実は・・・・・ドロドロドロ・・・」
クレタは自分でドラムロールのような効果音をつけて三人の気を引いた。
「早く言えよ。」
太は三人の中では一番気が短く、こういう気を持たせるような感じが嫌いだった。
「わかった。もう言わない。」
「いや、聞くから、待つから、クレタが全部ドロドロ言うの待つから・・・」
「じゃあ、もう一回最初からやるから。ちゃんと聞くように。」
三人は、電話帳の上に乗ったクレタの前に体操すわりをした。
「実は・・・・・ドロドロドロ・・・
ドロドロドロ・・・・
ドロドロドロ・・・・・、ドロドロドロ・・・。
今日です!!」
「やった!」
ヒロトは大きく飛び上がった。
太も理玖も抱き合って喜んだ。
「これから向かうから、昼には人間の手にしてもらえるはず。今晩からお前の臭い手の匂いを嗅がなくても済むと思うと、俺もうれしいよ。」
クレタは電話帳から降りて、ジャージのジッパーを上げ、出発の準備をした。
「そうだ、大事なことを言い忘れた。
この、いいことは俺が見つけて、俺が上に掛け合ったんだからな。感謝しろよ。」
振り返ると、太はヒロトの涙を拭いて、理玖はヒロトの手に濡れたタオルを巻いていて、クレタの話を真剣に聞いているのは自分が今乗っていた電話帳くらいだった。
「おまえらな・・・話聞けって・・・・」
「理玖、カバン忘れるなよ。ちゃんと剣、入っているか。」
「大丈夫、入ってる。ヒロト、背負えるか?」
「うん。大丈夫だよ。」
「じゃあ、階段気お付けろよ。」
三人は、クレタより先に外へ出るための階段を下りて行った。
「この手ともお別れかと思うと、寂しい・・・いや、やっぱ人間の手がいいな。ヒロトの細くて白いきれいな手は最高だもんな。そこら辺の女より全然きれいだもん。」
「まひろとどっちがきれい?」
「知らねえよ。手とか繋いだことねえし・・・」
「なら、そこら辺の女よりっていう表現、おかしくね?」
「コンビニとかで、おつり貰ったり・・・って感じだよ。」
三人はヒロトを真ん中に手をつないでどんどんと歩いて行った。
「お前ら・・・・」
「コンビニか・・・そろそろ肉まんの季節かな?」
「まだ早いだろ。」
「でも、最近は真夏でもあったりするしな。」
「真夏の肉まんは見てるだけで暑苦しいけど、練習終わりはあの熱さが最高なんだよな。」
「お前ら・・・・俺が、何で一番後ろなんだよ。」
「あ・・・・」
うれしすぎてクレタの存在をつい忘れて、学校帰りのような感覚でいた。
「ごめん・・・」
「もう一回言う。いいか、お前ら、しっかり聞けよ。
ヒロトのいいことは俺が見つけて、俺が上に掛け合ったんだからな。感謝しろよ。」
「ありがとう。クレタ・・・」
ヒロトはクレタの首に手を絡みつけ、ほっぺにチュウをした。
「わ、わ、わかればいい。」
「クレタは僕の事嫌いなのかと思ってたけど・・・気にしてくれていたんだね。
ありがとう。」
ヒロトのふわっとした魔性の微笑みで、
「そりゃあ、そうだろ。お前ひとり、可哀そうかな・・・と思ってさ。」
「やさしい。クレタのそういうところ、大好きだよ。」
「そうか!」
クレタは絶好調に機嫌が直ってスキップしながらヒロトと手をつないで先頭を歩いて行った。
「結構、簡単だな・・・」
「しっ。聞こえるぞ。すごい地獄耳だから。ヒロトの手が人間の手に戻るまでは機嫌を損なうようなことはするなよ。」
「おう、わかってる。」
太と理玖は少し距離をおいてついて行った。
「ハイ、皆さん。注目!」
電話帳を2冊重ねた上にクレタが乗って一回手を叩いた。
コホ、コホっと2度ほど咳ばらいをしてから手を後ろに組み、三人が自分のほうを見たことを確認すると演説を始めた。
「はい、このたび・・・かわいい顔してとってもダークなヒロト君。
虫も殺さないような優しい顔で友達をガンガン裏切って来たヒロト君。
何も知らない、純真無垢な顔をして、恐ろしいことを企てて来たヒロト君。
嘘をついてカエルの手に変えられてしまった哀れなヒロト君が、十六年の人生の中で、たった、たった、たった、たった・・・・・一度だけ、いいことをしていることが判明いたしました!
それで、そのいい事が認められ、カエルから人間にかえる運びとなりました!」
「おお!!まじかよ!よかったなヒロト。」
「よかった。やったな。」
「うん、ありがとう!!」
三人は少し涙ぐみ、肩を組んで喜んだ。
「あのさ、カエルとかえるで、ダジャレだったんだけど・・・気づいてくれた??」
「で、いつだよ。いつちゃんとした手に変えてもらえるんだ。」
「それはこれから話すけど・・・ダジャレ、気づいてくれた??」
「よかったな・・・ヒロト・・・」
「うん。ありがとう、太、理玖。二人には本当に迷惑ばかりかけて・・・ごめんね。」
「いいんだ。そんな、迷惑だなんて思ってない。よかったな・・・本当に良かった。」
「またその細い指でマッサージしてくれよ。」
「うん。いいよ。」
理玖、太、ヒロトは本当に、本気で喜んだ。そして、クレタのダジャレには全く気が付いていなかった。それなのに・・・
「ねえ、ねえ、ねえ、気づいてくれた?おもしろい、ねえ、面白かった??」
クレタは三人が抱きあって喜んでいる真ん中に顔を無理やりこじ入れて何度も確かめた。
「うん、うん。おもしろかった。だから、いつ戻るのか教えてくれよ。」
「本当に?本当に思っているのか。」
「思ってるって。だから、いつだよ。」
「実は・・・・・ドロドロドロ・・・」
クレタは自分でドラムロールのような効果音をつけて三人の気を引いた。
「早く言えよ。」
太は三人の中では一番気が短く、こういう気を持たせるような感じが嫌いだった。
「わかった。もう言わない。」
「いや、聞くから、待つから、クレタが全部ドロドロ言うの待つから・・・」
「じゃあ、もう一回最初からやるから。ちゃんと聞くように。」
三人は、電話帳の上に乗ったクレタの前に体操すわりをした。
「実は・・・・・ドロドロドロ・・・
ドロドロドロ・・・・
ドロドロドロ・・・・・、ドロドロドロ・・・。
今日です!!」
「やった!」
ヒロトは大きく飛び上がった。
太も理玖も抱き合って喜んだ。
「これから向かうから、昼には人間の手にしてもらえるはず。今晩からお前の臭い手の匂いを嗅がなくても済むと思うと、俺もうれしいよ。」
クレタは電話帳から降りて、ジャージのジッパーを上げ、出発の準備をした。
「そうだ、大事なことを言い忘れた。
この、いいことは俺が見つけて、俺が上に掛け合ったんだからな。感謝しろよ。」
振り返ると、太はヒロトの涙を拭いて、理玖はヒロトの手に濡れたタオルを巻いていて、クレタの話を真剣に聞いているのは自分が今乗っていた電話帳くらいだった。
「おまえらな・・・話聞けって・・・・」
「理玖、カバン忘れるなよ。ちゃんと剣、入っているか。」
「大丈夫、入ってる。ヒロト、背負えるか?」
「うん。大丈夫だよ。」
「じゃあ、階段気お付けろよ。」
三人は、クレタより先に外へ出るための階段を下りて行った。
「この手ともお別れかと思うと、寂しい・・・いや、やっぱ人間の手がいいな。ヒロトの細くて白いきれいな手は最高だもんな。そこら辺の女より全然きれいだもん。」
「まひろとどっちがきれい?」
「知らねえよ。手とか繋いだことねえし・・・」
「なら、そこら辺の女よりっていう表現、おかしくね?」
「コンビニとかで、おつり貰ったり・・・って感じだよ。」
三人はヒロトを真ん中に手をつないでどんどんと歩いて行った。
「お前ら・・・・」
「コンビニか・・・そろそろ肉まんの季節かな?」
「まだ早いだろ。」
「でも、最近は真夏でもあったりするしな。」
「真夏の肉まんは見てるだけで暑苦しいけど、練習終わりはあの熱さが最高なんだよな。」
「お前ら・・・・俺が、何で一番後ろなんだよ。」
「あ・・・・」
うれしすぎてクレタの存在をつい忘れて、学校帰りのような感覚でいた。
「ごめん・・・」
「もう一回言う。いいか、お前ら、しっかり聞けよ。
ヒロトのいいことは俺が見つけて、俺が上に掛け合ったんだからな。感謝しろよ。」
「ありがとう。クレタ・・・」
ヒロトはクレタの首に手を絡みつけ、ほっぺにチュウをした。
「わ、わ、わかればいい。」
「クレタは僕の事嫌いなのかと思ってたけど・・・気にしてくれていたんだね。
ありがとう。」
ヒロトのふわっとした魔性の微笑みで、
「そりゃあ、そうだろ。お前ひとり、可哀そうかな・・・と思ってさ。」
「やさしい。クレタのそういうところ、大好きだよ。」
「そうか!」
クレタは絶好調に機嫌が直ってスキップしながらヒロトと手をつないで先頭を歩いて行った。
「結構、簡単だな・・・」
「しっ。聞こえるぞ。すごい地獄耳だから。ヒロトの手が人間の手に戻るまでは機嫌を損なうようなことはするなよ。」
「おう、わかってる。」
太と理玖は少し距離をおいてついて行った。
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