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四日目の午後
風呂上がりの牛乳事件
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「まったく、しょうがねえ奴だ・・・お前たちも苦労するが、あと少しだから勘弁してやってくれ。」
「大丈夫、かなり慣れた。たまにすっごくムカつくこともあるけど、そういう時はガリウスに八つ当たりしてる。」
「そう。ありがとう。君たちでよかったよ。クレタが行くって聞いてから、同級生の中ではここへ二度と帰ってはこれないだろうって、みんなが言ってたんだ。本当に勇敢な君たちでよかったよ。」
「まったく、どっちが引率してんだか、分かんねぇよな。」
「怒り出すし、遊びだすし、弱いし。」
「そうか・・・でも、あいつ、いいやつなんだ。だから、君らが連れて来てくれて、みんな喜んでいるよ。ありがとうな。」
ベジービーは三人の頭を撫でてくれた。
「そうだ、ここから少し離れた、広場に立っていた老人。って・・・」
「あ、サント先生か・・・」
「先生なの。」
「ああ、クレタの剣の先生さ。クレタがちっとも上手にならなくて途中で通うのをやめたんだ。毎日さぼってお花畑で昼寝して、あいつだけ落第したんだ。けど、お父さんに頼み込んで、補修は必ず行くという約束で、何とか学校は卒業したんだけど・・・」
「ひょっとして、まだ行ってない・・・」
「ああ。それで先生はまだ待っている。もう年も取って教師でもなくなって、後ちょっとで命がなくなるのに、それでもまだクレタの事待っている。約束の場所で。もう何年も。」
「しょうがねぇやつだな。クレタは。」
「クレタも本心では申し訳ないと思っているんじゃないかな。」
「思ってねえよ、あいつは。」
「そうかな・・・」
「ベジービーはいい人だから、クレタを悪く言いたくないのはわかるけど、相当ヤな奴だぜ。女神だか王子様か何だかわかんねえけど、あそこまでわがままな奴はなかなかいないよな。」
「マンガでは王子さまってもっとキラキラして崇高で言葉遣いもきれいで優しくって世間知らずでおちゃめなイメージだったけど。」
「合っているのは世間知らずってとこだけじゃん。」
「悪口言っていると来るぞ。あいつ、地獄耳だからな。」
「耳は悪魔か。」
「まあ、そういうな、あれでも精一杯なんだ。クレタにしてみれば。」
「そうかな・・・」
「そうだよ。きっと。さあ、風呂から上がって飲み物をご馳走するよ。好きなものをなんでもいっぱい飲みなさい。」
太は風呂から上がってコーヒー牛乳を飲んだ。理玖はイチゴ牛乳、ヒロトはフルーツ牛乳をコップに入れてもらって飲んだ。
「やばい、なぜか風呂上りはアレンジ牛乳が超うまく感じる。」
「でも、ここで2本目飲むとお腹痛くなるんだよな・・・」
「なんでも控えめがいいってことだな。」
そう話しながら部屋へ行くと、髪がびしょ濡れのまま、布団の上に寝転がって苦しんでいるクレタがいた。
「おなえ、髪ぐらい乾かせ。」
「お・・・お腹痛い・・・」
「お前、コーヒー牛乳2本飲んだだろ。」
「飲んでない!」
「牛乳瓶が2本転がっている。」
「飲んでない!」
「風呂上がりにお腹痛くて、牛乳瓶が2本転がっているのは、コーヒー牛乳を2本飲んだ以外に何があるんだ。」
「コーヒー牛乳は1本しかのんでない。フルーツ牛乳を2本飲んだんだ。」
「だったら、合計3本じゃないか。」
「違う。白い牛乳も飲んだから4本だ。」
「・・・・」
「お・・・お腹痛い・・・なんとかしろよ・・・なんとかしてくれ・・・」
「トイレ行って寝てりゃ、そのうち何とかなるって。」
「だめだ!それでは。今すぐ何とかしろ。まだイチゴ牛乳を飲んでない!」
「・・・・わがままもここまで来ると呆れる・・・」
「・・・なんて返せばいいのか・・・言葉が見つからない・・・」
「何とかしろ・・・・」
びしょ濡れの髪のままベッドで暴れて、今晩寝るところがびしょ濡れになった。
「やっと布団で寝れると思ったのにね・・・」
「また床かよ・・・」
「うるさい!何とかしろ。」
ベビージーがつかつかっと部屋へ入ってくるとクレタの襟首をヒョイとつかんで廊下に立たせた。
「とりあえず、トイレに行ってこいよ。イチゴ牛乳はあっためておいてやるから。
髪も乾かして、パックするんだろ。」
「うん。」
「ほら。行ってこい。駄々こねている間に朝が来ちゃうぞ。」
クレタは黙ってトイレに向かった。
「すごい・・・」
「言うこと聞いた・・・・」
「よっぽどパックしたかったんだな・・・」
「違うよ。多分、サント先生のことが気になっているんだよ。
申し訳ないと思っている気持ちがどんどん膨らんで、忘れたくてバカなことをしてしまうんだろうな・・・」
「はあ・・・わかりづれぇ・・・謝っちゃえばいいじゃん。」
「そうだな。多分、それが一番いい。
この部屋はべしゃべしゃで使えないから、今日は屋根裏部屋で寝よう。
とても星がきれいだぞ。」
ベジービーは廊下の突き当りの細いドアを開け、はしごを引き出した。
太は一番にそこを登った。ヒロト、理玖と続いて登った。
理玖の部屋より少し広いくらいの部屋は床がふかふかで、ぽんと乗るとふわふわととてもいい気分になった。三人はならんで仰向けに寝っ転がった。
屋根が透けて、満点の星空が広がった。星もタップり見えるのに、大きな月が部屋を明るく照らしていた。
「素敵・・・」
「プラネタリウムみたいだ・・・」
「星座わかる?」
「わかんねぇ。なあ理玖ならわかるか?バルタン星人はどの星から来たんだ。」
「しるか。俺は教科書に書いてないことは知らない。そもそも、バルタンって言う星があるのか?」
「しらねえ。俺がわかんねえから聞いているんだろ。質問を質問で返すな。」
「まあ、まあ・・・どれがどの星でもいいじゃん。
こんなにいっぱいあるんだもの・・・どこから何が来ても、どこにいてもおかしくないよ。」
ヒロトは理玖と太の間に入った。
「この旅も後ちょっとだな。」
「ああ。なんか頑張ったな俺達。」
「僕は・・・あまり頑張っていない・・・ごめんね理玖。太・・・僕、ちゃんと人間に戻れるのかな・・・」
「大丈夫だよ。ヒロトはとても頑張った。泉でだって、滑り台の時だって、一番最初だってガリウスと素手で戦ったじゃないか。きっと認めてくれるって。」
「だめだな、そんなんじゃ!カエルのままだ!」
クレタは三人の間に思い切りダイブした。三人はその反動でプワンプワンと何度も跳ね返った。
「静かに入って来いよ、なんだよ。」
「お腹痛いの治った。」
「知らねえよ。三人でいい気分だったのに、ぶち壊すな。」
「ぶ・ち・こ・わ・す・・・・ぶち壊す・ぶち壊す・ぶち壊す・俺がいないところで楽しむな!」
クレタはバタバタと暴れて、三人はぴょんぴょんと何度も床ではねた。
「わかったからやめろよ。もうおとなしく寝ろ。」
「ベジービーに髪乾かしてもらった。見て、ここのことろ。くるくるってなっているだろ。」
「ああ、ほんと、なってる。」
「明日も早いんだろ、もう寝るぞ。」
「ヒロト、ちゃんと布団かかっているか?」
「うん。大丈夫、お休み。」
三人はクレタを無視して部屋の端っこのほうにまとまって眠りにつこうとしていた。
「ちょっとまて、お前ら。ここのところくるくるしているのをちゃんと確認してから寝ろよ。くるくるしてもらったんだって。」
クレタは理玖の布団をめくって何度も訴えたが、今日、一日中引っ張りまわされた疲れと、風呂の気持ちよさで一気に睡魔に飲み込まれていた。
「もう、その辺にしておいてやれよ。疲れてるんだ。お前の相手は俺だ。会ったの久しぶりだろ。こっちへ来い。話を聞かせてくれ。」
べジービーはクレタの背中を押して、理玖達が眠っている反対側端っこへ連れて行き話を聞いた。ずっと、ずっと夜通しクレタの取り止めもないわがまま話をたっぷりと聞いた。
「大丈夫、かなり慣れた。たまにすっごくムカつくこともあるけど、そういう時はガリウスに八つ当たりしてる。」
「そう。ありがとう。君たちでよかったよ。クレタが行くって聞いてから、同級生の中ではここへ二度と帰ってはこれないだろうって、みんなが言ってたんだ。本当に勇敢な君たちでよかったよ。」
「まったく、どっちが引率してんだか、分かんねぇよな。」
「怒り出すし、遊びだすし、弱いし。」
「そうか・・・でも、あいつ、いいやつなんだ。だから、君らが連れて来てくれて、みんな喜んでいるよ。ありがとうな。」
ベジービーは三人の頭を撫でてくれた。
「そうだ、ここから少し離れた、広場に立っていた老人。って・・・」
「あ、サント先生か・・・」
「先生なの。」
「ああ、クレタの剣の先生さ。クレタがちっとも上手にならなくて途中で通うのをやめたんだ。毎日さぼってお花畑で昼寝して、あいつだけ落第したんだ。けど、お父さんに頼み込んで、補修は必ず行くという約束で、何とか学校は卒業したんだけど・・・」
「ひょっとして、まだ行ってない・・・」
「ああ。それで先生はまだ待っている。もう年も取って教師でもなくなって、後ちょっとで命がなくなるのに、それでもまだクレタの事待っている。約束の場所で。もう何年も。」
「しょうがねぇやつだな。クレタは。」
「クレタも本心では申し訳ないと思っているんじゃないかな。」
「思ってねえよ、あいつは。」
「そうかな・・・」
「ベジービーはいい人だから、クレタを悪く言いたくないのはわかるけど、相当ヤな奴だぜ。女神だか王子様か何だかわかんねえけど、あそこまでわがままな奴はなかなかいないよな。」
「マンガでは王子さまってもっとキラキラして崇高で言葉遣いもきれいで優しくって世間知らずでおちゃめなイメージだったけど。」
「合っているのは世間知らずってとこだけじゃん。」
「悪口言っていると来るぞ。あいつ、地獄耳だからな。」
「耳は悪魔か。」
「まあ、そういうな、あれでも精一杯なんだ。クレタにしてみれば。」
「そうかな・・・」
「そうだよ。きっと。さあ、風呂から上がって飲み物をご馳走するよ。好きなものをなんでもいっぱい飲みなさい。」
太は風呂から上がってコーヒー牛乳を飲んだ。理玖はイチゴ牛乳、ヒロトはフルーツ牛乳をコップに入れてもらって飲んだ。
「やばい、なぜか風呂上りはアレンジ牛乳が超うまく感じる。」
「でも、ここで2本目飲むとお腹痛くなるんだよな・・・」
「なんでも控えめがいいってことだな。」
そう話しながら部屋へ行くと、髪がびしょ濡れのまま、布団の上に寝転がって苦しんでいるクレタがいた。
「おなえ、髪ぐらい乾かせ。」
「お・・・お腹痛い・・・」
「お前、コーヒー牛乳2本飲んだだろ。」
「飲んでない!」
「牛乳瓶が2本転がっている。」
「飲んでない!」
「風呂上がりにお腹痛くて、牛乳瓶が2本転がっているのは、コーヒー牛乳を2本飲んだ以外に何があるんだ。」
「コーヒー牛乳は1本しかのんでない。フルーツ牛乳を2本飲んだんだ。」
「だったら、合計3本じゃないか。」
「違う。白い牛乳も飲んだから4本だ。」
「・・・・」
「お・・・お腹痛い・・・なんとかしろよ・・・なんとかしてくれ・・・」
「トイレ行って寝てりゃ、そのうち何とかなるって。」
「だめだ!それでは。今すぐ何とかしろ。まだイチゴ牛乳を飲んでない!」
「・・・・わがままもここまで来ると呆れる・・・」
「・・・なんて返せばいいのか・・・言葉が見つからない・・・」
「何とかしろ・・・・」
びしょ濡れの髪のままベッドで暴れて、今晩寝るところがびしょ濡れになった。
「やっと布団で寝れると思ったのにね・・・」
「また床かよ・・・」
「うるさい!何とかしろ。」
ベビージーがつかつかっと部屋へ入ってくるとクレタの襟首をヒョイとつかんで廊下に立たせた。
「とりあえず、トイレに行ってこいよ。イチゴ牛乳はあっためておいてやるから。
髪も乾かして、パックするんだろ。」
「うん。」
「ほら。行ってこい。駄々こねている間に朝が来ちゃうぞ。」
クレタは黙ってトイレに向かった。
「すごい・・・」
「言うこと聞いた・・・・」
「よっぽどパックしたかったんだな・・・」
「違うよ。多分、サント先生のことが気になっているんだよ。
申し訳ないと思っている気持ちがどんどん膨らんで、忘れたくてバカなことをしてしまうんだろうな・・・」
「はあ・・・わかりづれぇ・・・謝っちゃえばいいじゃん。」
「そうだな。多分、それが一番いい。
この部屋はべしゃべしゃで使えないから、今日は屋根裏部屋で寝よう。
とても星がきれいだぞ。」
ベジービーは廊下の突き当りの細いドアを開け、はしごを引き出した。
太は一番にそこを登った。ヒロト、理玖と続いて登った。
理玖の部屋より少し広いくらいの部屋は床がふかふかで、ぽんと乗るとふわふわととてもいい気分になった。三人はならんで仰向けに寝っ転がった。
屋根が透けて、満点の星空が広がった。星もタップり見えるのに、大きな月が部屋を明るく照らしていた。
「素敵・・・」
「プラネタリウムみたいだ・・・」
「星座わかる?」
「わかんねぇ。なあ理玖ならわかるか?バルタン星人はどの星から来たんだ。」
「しるか。俺は教科書に書いてないことは知らない。そもそも、バルタンって言う星があるのか?」
「しらねえ。俺がわかんねえから聞いているんだろ。質問を質問で返すな。」
「まあ、まあ・・・どれがどの星でもいいじゃん。
こんなにいっぱいあるんだもの・・・どこから何が来ても、どこにいてもおかしくないよ。」
ヒロトは理玖と太の間に入った。
「この旅も後ちょっとだな。」
「ああ。なんか頑張ったな俺達。」
「僕は・・・あまり頑張っていない・・・ごめんね理玖。太・・・僕、ちゃんと人間に戻れるのかな・・・」
「大丈夫だよ。ヒロトはとても頑張った。泉でだって、滑り台の時だって、一番最初だってガリウスと素手で戦ったじゃないか。きっと認めてくれるって。」
「だめだな、そんなんじゃ!カエルのままだ!」
クレタは三人の間に思い切りダイブした。三人はその反動でプワンプワンと何度も跳ね返った。
「静かに入って来いよ、なんだよ。」
「お腹痛いの治った。」
「知らねえよ。三人でいい気分だったのに、ぶち壊すな。」
「ぶ・ち・こ・わ・す・・・・ぶち壊す・ぶち壊す・ぶち壊す・俺がいないところで楽しむな!」
クレタはバタバタと暴れて、三人はぴょんぴょんと何度も床ではねた。
「わかったからやめろよ。もうおとなしく寝ろ。」
「ベジービーに髪乾かしてもらった。見て、ここのことろ。くるくるってなっているだろ。」
「ああ、ほんと、なってる。」
「明日も早いんだろ、もう寝るぞ。」
「ヒロト、ちゃんと布団かかっているか?」
「うん。大丈夫、お休み。」
三人はクレタを無視して部屋の端っこのほうにまとまって眠りにつこうとしていた。
「ちょっとまて、お前ら。ここのところくるくるしているのをちゃんと確認してから寝ろよ。くるくるしてもらったんだって。」
クレタは理玖の布団をめくって何度も訴えたが、今日、一日中引っ張りまわされた疲れと、風呂の気持ちよさで一気に睡魔に飲み込まれていた。
「もう、その辺にしておいてやれよ。疲れてるんだ。お前の相手は俺だ。会ったの久しぶりだろ。こっちへ来い。話を聞かせてくれ。」
べジービーはクレタの背中を押して、理玖達が眠っている反対側端っこへ連れて行き話を聞いた。ずっと、ずっと夜通しクレタの取り止めもないわがまま話をたっぷりと聞いた。
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