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最後の最後
でっかい口ビル
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「おい、クレタ!受付ってどこだよ。」
「おい、とはなんだ!口の利き方に気お付けろ、太!何度も言うが、俺は王子様なんだ。女神で王子なんだぞ。偉いんだ!お前なんか、パパに頼んで地獄行きにしてやる。」
明るくなったが、ただ平たいところを走っているだけで、方向感覚も鈍り、クレタの元気とは裏腹に、精神的な疲労が極限まで達し、ただただ、もう終わってくれとしか考えることができなくなっていた。
「ねえ、あそこじゃないかな。」
ヒロトが指を指した先に本の小さく、ポツンと赤い丸印が見えた。
「そうなのか?クレタ、あそこに行けばいいのか?」
クレタは車から身を乗り出してその赤い丸印を見た。本当に小さく米粒くらいの丸だった。
「ああ・・・・そう?かなぁ・・・・」
「頼りないな。最後くらいガツンとやれよ!」
「じゃ・・・そうだ!あれだ!あれに違いない!」
クレタは、今までの7日間の中で一番大きな声で叫んだ。
すると、その赤い丸印は「みつけた!」と言わんばかりに、急激にむっちりと膨らみ、ぐぅいぃぃーーーんと膨張し続けながら、理玖たちに向かってきた。
「お、おい!クレタ・・・マジかよ・・・あ、あれ・・・・」
「な、なに、なに、なにーーーーぃ」
「理玖!ブレーキ、ブレーキ!」
「やってる!こっちじゃない、あっちが来るんだ!」
「バックだバック!」
「バックって・・・どうやるんだ!」
「知るか!」
「ぎぇぇぇぇぇーーーー」
その赤い膨らんだものは唇の形に変化し、「ぱか」っと空いたかと思うと、「ぺろ」っと車ごと悲鳴も一緒にのみこんだ。
(もうだめだ・・・せっかくここまで来たのに・・・こんな終わりかたって、ないよな・・・)
などと、四人が思っていたとき、
「クレタ、遅かったな。」
と天から優しい声が降って来た。
そっと目を開けると、そこはド定番な天国の景色、アニメや絵本によくあるような、お決まりのように池があり噴水があり、庭には花が咲き乱れ蝶が飛び小鳥が歌い・・・
それに加えて、ちょっとアミューズメントパーク的な要素が加わった女子がきゃあきゃあ言って喜びそうな、なんだかかわいい建物が並んでいるそんなところにいた。
噴水の奥にある大きな門から、白いローブを着た白髪のロン毛に白髭、木の枝をバキッと折ってきたような杖を持った、これまたベタベタの定番神様の装いの男が、数人の従事を引き連れ現れた。
「クレタ!」
「クレタ?」
クレタはその声を聞くと、車の後部座席から思い切りビョーンっと飛び出し、先頭にいた白髪のいかにも神様の装いの男に飛びついた。
「パパ!」
「パパ?」
車に残された理玖たち三人はクレタと父親の再会を最初は暖かく見守ったが、抱擁があまりに長くてイラっとした。
「クレタ!おい!いいかげんにしろ!いつまでやっているんだ!」
太はクレタを怒鳴りつけた。
「仕方ないだろ。一週間も離れていたんだ!」
「たった一週間だろ・・・それより俺達をもてなせよ。俺達が客だろ。」
「ああ・・・悪かったね。君たち。」
「あんたがここの神様か。」
「なんでわかった?」
これでわからない奴がいたら教えてほしいというほどド定番なその人は不思議そうな顔で太と理玖を見た。
「さすがじゃな、理玖君は賢い。」
「いえ、見たマンマですから。」
クレタの父親のローブを着て白髪のロン毛の人は、自分の姿をまじまじと見た後、
「スーツのほうがよかったかな?」
と聞いた。
「着る物なんてなんでもいいです。早く僕達を戻してください。」
「ああ、そうじゃったな。それでは、戻れるようにしよう。
おっと、その前に、クレタをここまで送ってくれて本当にありがとう。
今までご苦労だったね。今、お茶でも用意するよ。」
「いえ、何もいらないです。一刻も早く僕達を元居た場所に帰してください。」
「そうかい、わかった。今用意するから、少しだけ待ちなさい。
おっと、その前に、私の名前を言わないと。私はここの門の神、パビレックだ。よく名前を憶えておきなさい。そしてまた今回のようなことが起きたら、私の名前を思い出しなさい。」
「そしたらどうなる?」
「ちょっとは気持ちが救われる。」
「え?それだけ。」
「え?十分でしょ。」
理玖たち三人は顔を見合わせ、そして深く頷いた。その時思っていたことは
(やっぱ、クレタの父親に間違いない。この親にしてこの子アリだ。)
と思っていた。
「もういいよ。早く帰りたい。これからどうするんだ、あんたでいいのか、それとも、もっと偉い神様に会うのか、どうなんだよ。」
太はパビレックの言葉に少し苛ついた。偉い神様っぽい身なりはしているが、それよりも何よりも待たされることが大嫌いだった。
「わかった。わかった。それでは・・・」
「おい、とはなんだ!口の利き方に気お付けろ、太!何度も言うが、俺は王子様なんだ。女神で王子なんだぞ。偉いんだ!お前なんか、パパに頼んで地獄行きにしてやる。」
明るくなったが、ただ平たいところを走っているだけで、方向感覚も鈍り、クレタの元気とは裏腹に、精神的な疲労が極限まで達し、ただただ、もう終わってくれとしか考えることができなくなっていた。
「ねえ、あそこじゃないかな。」
ヒロトが指を指した先に本の小さく、ポツンと赤い丸印が見えた。
「そうなのか?クレタ、あそこに行けばいいのか?」
クレタは車から身を乗り出してその赤い丸印を見た。本当に小さく米粒くらいの丸だった。
「ああ・・・・そう?かなぁ・・・・」
「頼りないな。最後くらいガツンとやれよ!」
「じゃ・・・そうだ!あれだ!あれに違いない!」
クレタは、今までの7日間の中で一番大きな声で叫んだ。
すると、その赤い丸印は「みつけた!」と言わんばかりに、急激にむっちりと膨らみ、ぐぅいぃぃーーーんと膨張し続けながら、理玖たちに向かってきた。
「お、おい!クレタ・・・マジかよ・・・あ、あれ・・・・」
「な、なに、なに、なにーーーーぃ」
「理玖!ブレーキ、ブレーキ!」
「やってる!こっちじゃない、あっちが来るんだ!」
「バックだバック!」
「バックって・・・どうやるんだ!」
「知るか!」
「ぎぇぇぇぇぇーーーー」
その赤い膨らんだものは唇の形に変化し、「ぱか」っと空いたかと思うと、「ぺろ」っと車ごと悲鳴も一緒にのみこんだ。
(もうだめだ・・・せっかくここまで来たのに・・・こんな終わりかたって、ないよな・・・)
などと、四人が思っていたとき、
「クレタ、遅かったな。」
と天から優しい声が降って来た。
そっと目を開けると、そこはド定番な天国の景色、アニメや絵本によくあるような、お決まりのように池があり噴水があり、庭には花が咲き乱れ蝶が飛び小鳥が歌い・・・
それに加えて、ちょっとアミューズメントパーク的な要素が加わった女子がきゃあきゃあ言って喜びそうな、なんだかかわいい建物が並んでいるそんなところにいた。
噴水の奥にある大きな門から、白いローブを着た白髪のロン毛に白髭、木の枝をバキッと折ってきたような杖を持った、これまたベタベタの定番神様の装いの男が、数人の従事を引き連れ現れた。
「クレタ!」
「クレタ?」
クレタはその声を聞くと、車の後部座席から思い切りビョーンっと飛び出し、先頭にいた白髪のいかにも神様の装いの男に飛びついた。
「パパ!」
「パパ?」
車に残された理玖たち三人はクレタと父親の再会を最初は暖かく見守ったが、抱擁があまりに長くてイラっとした。
「クレタ!おい!いいかげんにしろ!いつまでやっているんだ!」
太はクレタを怒鳴りつけた。
「仕方ないだろ。一週間も離れていたんだ!」
「たった一週間だろ・・・それより俺達をもてなせよ。俺達が客だろ。」
「ああ・・・悪かったね。君たち。」
「あんたがここの神様か。」
「なんでわかった?」
これでわからない奴がいたら教えてほしいというほどド定番なその人は不思議そうな顔で太と理玖を見た。
「さすがじゃな、理玖君は賢い。」
「いえ、見たマンマですから。」
クレタの父親のローブを着て白髪のロン毛の人は、自分の姿をまじまじと見た後、
「スーツのほうがよかったかな?」
と聞いた。
「着る物なんてなんでもいいです。早く僕達を戻してください。」
「ああ、そうじゃったな。それでは、戻れるようにしよう。
おっと、その前に、クレタをここまで送ってくれて本当にありがとう。
今までご苦労だったね。今、お茶でも用意するよ。」
「いえ、何もいらないです。一刻も早く僕達を元居た場所に帰してください。」
「そうかい、わかった。今用意するから、少しだけ待ちなさい。
おっと、その前に、私の名前を言わないと。私はここの門の神、パビレックだ。よく名前を憶えておきなさい。そしてまた今回のようなことが起きたら、私の名前を思い出しなさい。」
「そしたらどうなる?」
「ちょっとは気持ちが救われる。」
「え?それだけ。」
「え?十分でしょ。」
理玖たち三人は顔を見合わせ、そして深く頷いた。その時思っていたことは
(やっぱ、クレタの父親に間違いない。この親にしてこの子アリだ。)
と思っていた。
「もういいよ。早く帰りたい。これからどうするんだ、あんたでいいのか、それとも、もっと偉い神様に会うのか、どうなんだよ。」
太はパビレックの言葉に少し苛ついた。偉い神様っぽい身なりはしているが、それよりも何よりも待たされることが大嫌いだった。
「わかった。わかった。それでは・・・」
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