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夢のはじまり
第10話 夢のはじまり
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今日は朝からバタバタしていた。
ケーキは生ものだから冷凍庫がないこの世界では作り置きができない。
スイのおかげで一時保存ができる冷蔵庫ができたのは何所かのおバカさん……コホン、ロベリアに感謝したい程だ。本人は喜ばないだろうけど。
現在調理場では私とディオンの二人で、ケーキの生地からホイップクリームまで多種多彩の材料がひしめき合っている。
私には前世でのパティシエとしての経験と知識があるけれど、ディオンは言わば洋食専門。だけど悔しいかな、私の試作品を近くで見ていただけでこのクオリティ。泣いてなんかいないんだからねっ!
次々に陳列ケースに並ぶケーキ達、販売スペースで準備をしているエレンとエリスのキャーキャーと騒ぐ声が先ほどから途切れることなく聞こえて来る。
女の子はケーキが大好きだからね。
まずは店頭に並べる商品を作り、その後に試食用の商品をつくる。
別々に作ったのは販売用のケーキは丸いホール型だけど、試食用は四角いスクエア型にしたからだ。
スクエア型の方が無駄なく切り揃えられるし薄くしても倒れにくいのだ。
私はケーキの上に乗った板チョコやイチゴを食べのは『後派』な人間だ、もし同じ『後派』の人がいれば誰もが経験があるだろう。そう最後にはバランスを崩し必ず転けてしまう、私はこれが密かに許せなかったのだ。
何回「私のいちご~~!!」っと叫んだ事か。若かったなぁ私。
「……様、おじぃ……ま、お嬢様!」
「はっ! ごめんなさい、別の世界に行きかけていたわ」
どうやら天井を眺めながらブツブツ言っていたらしい。
エレンが心配して話しかけてくれたお陰で戻ってこれたわ。危ない危ない。
「もう少しで危ない子のレッテルを貼られるところだったわ」
「お嬢様、心の声が漏れております」
最近エレンのツッコミも磨きがかかってきたみたいね、この子の前世もきっと関西人ね。
そんな私の心の声も知らず着々と準備が進んでいった。
「取りあえずこんな処かしら」
数々の種類のケーキが並ぶ陳列ケースを眺め独り言が漏れる。
「こ、これ、お嬢様がお作りになられたのですか!」
「私だけじゃないけれどそうよ」
そう言えば試作品の試食はしてもらってたけれど、エレン達にはちゃんと見せてなかったわね。
試作品はあくまで材料の調整だけだったから、ここまで完璧にデコレーションをしてなかったことを思い出した。
「恐らく今日は売れ残るはずだから、余った分は夜にでも皆んなで頂きましょう」
再びエレンとエリスがキャーキャーと叫び出す。
この二人以外と仲がいいのよね。
「しかしお嬢様、試作品から見てましたがいったどこで習ってんですか? 私も結構この業界は長いですが、こんな華やかなスイーツは見たことも聞いたこともありませんよ」
そう言って調理場から出てきたディオンが私に訪ねてくる。
『それは前世で習ってきたのよ』とは流石に言えず、他国の書物や想像を形にしただけだと説明した。
そしたら料理の腕は? と聞かれたが「私は普通の令嬢とは違うのよ」と答えればディオンはおろか、エレンまで納得したのは少々異議申し立てをしたいところだ。
「昨日も説明したと思うけど、今日からしばらくの期間はお客様にケーキの存在を知ってもらうためよ。この立地は多くの商人やお屋敷に勤める使用人達が通る場所、その人たちにケーキの試食をしてもらい噂を広めていくのが第一の目的。口コミで広げるには最適な職業の人たちだから、店前を通る人にはできる限り試食をしてもらって」
「分かりました、ですがお嬢様よく試食や口コミですか? そんな戦略思いつきますね。私には考えも及びませんよ」
「ま、まぁ伊達に長生きしていないわよ。おほほ」
「今は私と同じ16歳ですよね?」
「細かなことは気にしない、さぁ始めるわよ」
私は店内を見渡し、そして私についてきてくれた人たちを改めて見つめた。
「今までありがとう、そしてこれからもよろしく」
私は淑女の礼カーテシーではなく日本の礼であるお辞儀で頭を深くさげた。
そして頭を上げた時皆んなの笑顔が私に向けられていた。もう迷うことは何もない。
一つ大きく息を吸い私は皆んなに最終確認のいや、これから始まる言葉を掛ける。
「ディオン、ケーキの準備は整っているわね」
「大丈夫です、すでに店頭のケースに準備しております」
「グレイ、試食用のケーキは大丈夫?」
「はい、お嬢様、食べやすいよう小さく切りそろえております」
「エレン、お持ち帰り用の小箱の数は大丈夫かしら」
「バッチリですお嬢様、無理を言って沢山作って頂きましたから」
「エリス、今日はエレンのサポートをお願いね」
「はい、お姉さま」
「スイ、エン、リリー、皆んなも準備はいい?」
「「おう(よ)」」
「まかせてママ」
「それじゃ、お店を開けるわよ」
『 いらっしゃいませ、ローズマリーヘようこそ』
私たちの夢のお城 スイーツショップ ローズマリー、本日オープンです!
ケーキは生ものだから冷凍庫がないこの世界では作り置きができない。
スイのおかげで一時保存ができる冷蔵庫ができたのは何所かのおバカさん……コホン、ロベリアに感謝したい程だ。本人は喜ばないだろうけど。
現在調理場では私とディオンの二人で、ケーキの生地からホイップクリームまで多種多彩の材料がひしめき合っている。
私には前世でのパティシエとしての経験と知識があるけれど、ディオンは言わば洋食専門。だけど悔しいかな、私の試作品を近くで見ていただけでこのクオリティ。泣いてなんかいないんだからねっ!
次々に陳列ケースに並ぶケーキ達、販売スペースで準備をしているエレンとエリスのキャーキャーと騒ぐ声が先ほどから途切れることなく聞こえて来る。
女の子はケーキが大好きだからね。
まずは店頭に並べる商品を作り、その後に試食用の商品をつくる。
別々に作ったのは販売用のケーキは丸いホール型だけど、試食用は四角いスクエア型にしたからだ。
スクエア型の方が無駄なく切り揃えられるし薄くしても倒れにくいのだ。
私はケーキの上に乗った板チョコやイチゴを食べのは『後派』な人間だ、もし同じ『後派』の人がいれば誰もが経験があるだろう。そう最後にはバランスを崩し必ず転けてしまう、私はこれが密かに許せなかったのだ。
何回「私のいちご~~!!」っと叫んだ事か。若かったなぁ私。
「……様、おじぃ……ま、お嬢様!」
「はっ! ごめんなさい、別の世界に行きかけていたわ」
どうやら天井を眺めながらブツブツ言っていたらしい。
エレンが心配して話しかけてくれたお陰で戻ってこれたわ。危ない危ない。
「もう少しで危ない子のレッテルを貼られるところだったわ」
「お嬢様、心の声が漏れております」
最近エレンのツッコミも磨きがかかってきたみたいね、この子の前世もきっと関西人ね。
そんな私の心の声も知らず着々と準備が進んでいった。
「取りあえずこんな処かしら」
数々の種類のケーキが並ぶ陳列ケースを眺め独り言が漏れる。
「こ、これ、お嬢様がお作りになられたのですか!」
「私だけじゃないけれどそうよ」
そう言えば試作品の試食はしてもらってたけれど、エレン達にはちゃんと見せてなかったわね。
試作品はあくまで材料の調整だけだったから、ここまで完璧にデコレーションをしてなかったことを思い出した。
「恐らく今日は売れ残るはずだから、余った分は夜にでも皆んなで頂きましょう」
再びエレンとエリスがキャーキャーと叫び出す。
この二人以外と仲がいいのよね。
「しかしお嬢様、試作品から見てましたがいったどこで習ってんですか? 私も結構この業界は長いですが、こんな華やかなスイーツは見たことも聞いたこともありませんよ」
そう言って調理場から出てきたディオンが私に訪ねてくる。
『それは前世で習ってきたのよ』とは流石に言えず、他国の書物や想像を形にしただけだと説明した。
そしたら料理の腕は? と聞かれたが「私は普通の令嬢とは違うのよ」と答えればディオンはおろか、エレンまで納得したのは少々異議申し立てをしたいところだ。
「昨日も説明したと思うけど、今日からしばらくの期間はお客様にケーキの存在を知ってもらうためよ。この立地は多くの商人やお屋敷に勤める使用人達が通る場所、その人たちにケーキの試食をしてもらい噂を広めていくのが第一の目的。口コミで広げるには最適な職業の人たちだから、店前を通る人にはできる限り試食をしてもらって」
「分かりました、ですがお嬢様よく試食や口コミですか? そんな戦略思いつきますね。私には考えも及びませんよ」
「ま、まぁ伊達に長生きしていないわよ。おほほ」
「今は私と同じ16歳ですよね?」
「細かなことは気にしない、さぁ始めるわよ」
私は店内を見渡し、そして私についてきてくれた人たちを改めて見つめた。
「今までありがとう、そしてこれからもよろしく」
私は淑女の礼カーテシーではなく日本の礼であるお辞儀で頭を深くさげた。
そして頭を上げた時皆んなの笑顔が私に向けられていた。もう迷うことは何もない。
一つ大きく息を吸い私は皆んなに最終確認のいや、これから始まる言葉を掛ける。
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「大丈夫です、すでに店頭のケースに準備しております」
「グレイ、試食用のケーキは大丈夫?」
「はい、お嬢様、食べやすいよう小さく切りそろえております」
「エレン、お持ち帰り用の小箱の数は大丈夫かしら」
「バッチリですお嬢様、無理を言って沢山作って頂きましたから」
「エリス、今日はエレンのサポートをお願いね」
「はい、お姉さま」
「スイ、エン、リリー、皆んなも準備はいい?」
「「おう(よ)」」
「まかせてママ」
「それじゃ、お店を開けるわよ」
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