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桜花爛漫
第12話 過去への払拭(4)
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「それで、早い者勝ちなんて案を出したんだから、何らかの考えがあるんだよな?」
「えぇ、もちろんよ」
北条家の術者達が立ち去ったのを確認し、改めて結城家の皆さんを集めての作戦会議。
念のために、こちらの声が聞こえないよう、風華には風の結界を張ってもらっている。
「正直未熟な私じゃ、今の弱っている妖魔を見つけ出すのは至難の技よ。せめて通常時ならば多少離れていても妖気を感られたのでしょうけど、ここまで弱っているとなれば、かなり近寄らなければ難しいでしょうね」
霊力と従えている精霊は超一級品と自負する私でも、熟練の術者と比較するとやはり出来ない事は多いだろう。特に戦闘とは関係のない調査・捜索といった繊細な術は非常に苦手なのだ。
「まぁ、俺も似たようなもんだ。そもそも相棒が火の属性だからな、細かい事は苦手でなんだよ。その点システィーナの精霊は風の属性だろ? お前が分からないのに、俺が分かるはずもないだろう」
蓮也が契約しているのは烈火という鷲型の精霊。精霊には扱える属性があり、その属性の特徴上どうしても得意不得意の分野が存在する。
そして火の属性である烈火の場合、直接的な打撃力はあるものの、調査・捜索といった支援系はどうしても苦手になるのだ。
「確かに風華は風の属性だけど、いまの私じゃ力の調整がきかないのよ」
本来風の属性は調査・捜索に向いているものの、私の霊力も風華の霊力も、並の術者と比べると非常識なレベルでかなり強い。それでもまだ私が一流の術者ならば、力のコントロールをして捜索にも使えたのだろうが、生憎と強力過ぎるが故微調整が非常に難しく、うっかり操作を誤って近くの民家を根こそぎドカン! なんて可能性も十分あり得る。
そういった周りへの被害を抑えるため、紫乃さんがわざわざ私と蓮也の二人を派遣したのに、私がその被害の原因になってしまえば本末転倒であろう。
「それじゃどうするんだ? 連れてきた術者を総動員で探しても時間がかかるだけだぜ」
若干集まってくださった術者の面々から、自分達にそこまでの能力はないよ、すがるような視線を受けてしまう。
まぁ、後方支援をメインに置いておられるとはいえ、ここに集まってくださっているのは、あくまでも結界や障壁の専門家。流石の私も本来の役目以上の事をお願いするのは、やはり躊躇う気持ちは持ちが勝ってしまう。そもそも人海戦術なんてやっていれば、それこそ勝敗は運任せになることだろう。
「蓮也、白銀の属性は知っているわよね?」
「あぁ、聖雷だろ?」
「えぇ、聖属性と雷属性の複合型」
「せ、聖属性!?」
蓮也との話を聞いておられた結城家の術者さん達から、ざわめきが沸き起こる。
本来精霊が扱う属性とは大きく分けで地・水・風・火・雷・氷の6属性。さらに浄化や治療に特化した光属性と、幻影や精神といったものに影響を与える闇属性があるのだが、聖属性はその中で光属性の上位版、とでも言えばわかりやすいだろうか。
ただこの聖属性、実は扱える精霊が極めて稀で、恐らく現代の日本術者においては、白銀だけではないかと紫乃さんがおっしゃっていた。
「時間がないので簡単に説明しますが、私が契約している精霊の属性は聖雷、早い話が妖魔にとっては弱点ともいえる聖属性の雷なんです」
私は集まってくださった術者さんにも分かるよう、掻い摘んで説明する。
「ただ雷という特性上、私が見える範囲にしか当てられないし、その威力は軽く地面に穴を開けちゃうほど強すぎて、どうしても扱える場所が限られてしまうという欠点があるんです」
もちろん目標を定めずに、広範囲に雷を落とす事も可能だが、その被害は風華の風を暴走させるよりも被害は大きくなる事だろう。
「だったら余計に危険になるんじゃねぇか? 確かに聖属性は妖魔にとっては弱点だが、市街地に被害を広めては意味がないだろう?」
「もちろんよ。でもね、別に聖属性と雷属性を別々で使えないって、わけでもないのよ」
「!?」
白銀の聖属性はどちらかと言えば癒しに特化した特殊型。攻撃としても扱えるには扱えるのだが、正直雷の破壊力の方が勝ってしまう。
ただ聖属性という霊力その物が妖魔にとっては弱点となるため、使用者である私はただ聖属性の霊力を高めるだけで、妖魔にとっては全身に熱湯を浴びるような感覚を与える事ができるのだ。
つまりただ霊力を高めるだけなら、未熟な私でも出来るというわけ。
「なるほどな、霊力を高めるだけなら人的被害は起こらないし、隠れ潜んでいる妖魔にとっては逃げ出さざるを得ないというわけか」
「そういう事」
通常の状態の妖魔でも、聖属性の霊力を当てられればじっとしていることは出来ないので、手負いの今なら直ぐに霊力が届かない場所へ逃げ出そうとするだろう。そして動けば動くほど、苦しめば苦しむほど妖気が漏れてしまい、私や蓮也でもその気配を感じ取ることができるはずだ。
「でもよ、霊力を高めるだけっていっても、そんなに広範囲に広げられるものなのか?」
話を最後まで聞いていた蓮也が、ふと思い出したかのように尋ねてくる。
「無理に決まっているでしょ。術を展開させるわけじゃないんだから、そんなことは出来ないわよ」
「おいおい、それじゃ意味が……」
「もう忘れた? 私には心強いもう一人の相棒がいることを」
蓮也が最後まで言い切る前に、答えというべき最大のヒントを示す。
それだけでどうやら私が言いたいことが理解できたのか……
「そうか、風か!」
「えぇ、風華の力で範囲を広げるのよ」
白銀の力だけでは周りに影響を与えすぎる。かといって風華の風を起こすだけの力では妖魔に直接的なダメージは与えられない。ならば二人の力を混ぜればいいのだ。
白銀の聖属性に特化した霊力だけを私が高め、風華の風の力でその霊力を広げる。当然拡散する分威力は弱くなるのだが、今回の目的はあくまでも炙り出しなので、効果は十分発揮してくれるだろう。
「ただ問題が二つ。一つは妖魔が隠れ潜んでいる場所がわからない以上、発見出来次第向かわなけれいけないという点」
この中で直接攻撃に移れるのは私と蓮也の二人のみ。私は霊力を高めている関係、直ぐには動けない状態なので、実質蓮也一人に頼ってしまうことになる。
相手はD級とはいえ手負いの妖魔。追い詰められた挙句最悪周りを巻き込んで自爆、なんて可能性も否定できないため、発見から滅殺まで時間をかけるわけにはいかない。
わざわざ私と蓮也の二人を派遣されたのに、被害を出してしまいました、では信頼してくださった紫乃さんに申し訳がたたない。
「心配するな。俺に任せておけ」
「そうね。蓮也ならば問題ないわね」
一瞬の躊躇いもなく蓮也ならばと信じてしまえる。
それに蓮也の契約している烈火は空を飛べる。移動に関しては烈火にしがみ付けば移動にそうはかからないだろう。
ただ念には念を、出来る対策は出来るだけ事前に貼っておくのは越した事がない。
「それで後方支援の方々にお願いしたいのですが、私の予想では妖魔は河川敷ではなく、市街地に潜んでいる可能性が非常高いのです。ですから皆さんは事前に市街地方面へ散らばっていただき、妖魔の気配を感知したら直ぐに結界で閉じ込めてもらいたいんです」
これは妖魔の逃走を阻む理由と、一般人への目撃情報を減らすための私なりの配慮。
警察の方々が交通規制をされているのはこの多摩川周辺の河川敷のみ。妖魔の最後の目撃が、河川敷の北側だったため仕方がないのだが、私の予想では既に妖魔は移動しており、近くの市街地で潜んでいるんではないかと考えている。
「予め警戒しておくのはいいが どうしてそう思うんだ?」
「よく考えてもみて、妖魔はもともと負の感情抱く人間の近くに潜むわ。今回は手負いの状態で逃走しているわけだから、必ず妖力を補充しようと考えているはず。そこで妖力を回復しつつ一番身を潜めやすい場所は?」
「人間の心か!」
「そういう事よ」
よく低級の妖魔は人の心に住まうと言われている。そしてその大半は弱いまま消えてしまうか、別の人間に移り住むかを繰り返していくのだが、取り憑かれた側の人間はそれを認知できないのだ。
恐らく妖魔は力を蓄えるために人の心に潜んで、あわよくば妖力の回復と私たち術者からの逃亡を試みようとしているのではないだろうか?
「わかりました。そういう事でしたら我らにお任せください」
「えぇ、宜しくお願いします」
さすが結城家に所属する方々だ、理解が早くて助かる。
「それでもう一つの懸念ってなんだ?」
「北条家の出方よ」
彼方の目的も妖魔を見つけ出し、即座に討伐。
今回私は無作為に炙り出そうとしているため、最悪北条家が捜索しているエリアに出現、なんて事もありえるのだ。
「確かにそれはどうしようもないな」
「運を天に任せる、なんてナンセンスな事は言いたくはないんだけれど、こればかりはね」
風を操って北条家が捜索しているエリアだけを省く、なんて風という自然現象の特性上、はっきり言ってそんな細かな操作は不可能に近い。
むしろ北条家が捜索しているエリアを丸ごと結界で囲む方が、よほど効率的であろう。ただこれには捜索を妨害されたと、ネチネチと後で文句を言われる事が想定されるため、出来ればあまりやりたくないというのが本音ではある。
あとは私の霊力に気づかず、妖魔の妖気が感知できなかったという可能性もあるのだが、落ちぶれても神奈川を守護する術者一族なので、そんな単純な見落としはしないだろう。
「まぁ任せておけって。彼方さん側の近くに沸いたところで、移動と討伐までには多少の時間は掛かる。その僅かな時間さえあれば、俺が先に到着して倒して来てやるさ、俺を信じろ!」
ドキッ。
蓮也の頼もしい姿に一瞬三ヶ月前の光景が蘇る。
『女一人も守れず何が男だ。守ってやるさ、だから俺を信じろ!』
瞼を閉じれば今も浮かぶ光景。
そうね、そうだったわね。あの時もそうだったように、蓮也の言葉にはどこか『そうなるんだ』という力強さを感じてしまう。
大丈夫、あんな男に蓮也が負けるはずはないわ。
「任せたわ蓮也」
「あぁ、任された」
こうして各々作戦のために準備に取り掛かる。
「えぇ、もちろんよ」
北条家の術者達が立ち去ったのを確認し、改めて結城家の皆さんを集めての作戦会議。
念のために、こちらの声が聞こえないよう、風華には風の結界を張ってもらっている。
「正直未熟な私じゃ、今の弱っている妖魔を見つけ出すのは至難の技よ。せめて通常時ならば多少離れていても妖気を感られたのでしょうけど、ここまで弱っているとなれば、かなり近寄らなければ難しいでしょうね」
霊力と従えている精霊は超一級品と自負する私でも、熟練の術者と比較するとやはり出来ない事は多いだろう。特に戦闘とは関係のない調査・捜索といった繊細な術は非常に苦手なのだ。
「まぁ、俺も似たようなもんだ。そもそも相棒が火の属性だからな、細かい事は苦手でなんだよ。その点システィーナの精霊は風の属性だろ? お前が分からないのに、俺が分かるはずもないだろう」
蓮也が契約しているのは烈火という鷲型の精霊。精霊には扱える属性があり、その属性の特徴上どうしても得意不得意の分野が存在する。
そして火の属性である烈火の場合、直接的な打撃力はあるものの、調査・捜索といった支援系はどうしても苦手になるのだ。
「確かに風華は風の属性だけど、いまの私じゃ力の調整がきかないのよ」
本来風の属性は調査・捜索に向いているものの、私の霊力も風華の霊力も、並の術者と比べると非常識なレベルでかなり強い。それでもまだ私が一流の術者ならば、力のコントロールをして捜索にも使えたのだろうが、生憎と強力過ぎるが故微調整が非常に難しく、うっかり操作を誤って近くの民家を根こそぎドカン! なんて可能性も十分あり得る。
そういった周りへの被害を抑えるため、紫乃さんがわざわざ私と蓮也の二人を派遣したのに、私がその被害の原因になってしまえば本末転倒であろう。
「それじゃどうするんだ? 連れてきた術者を総動員で探しても時間がかかるだけだぜ」
若干集まってくださった術者の面々から、自分達にそこまでの能力はないよ、すがるような視線を受けてしまう。
まぁ、後方支援をメインに置いておられるとはいえ、ここに集まってくださっているのは、あくまでも結界や障壁の専門家。流石の私も本来の役目以上の事をお願いするのは、やはり躊躇う気持ちは持ちが勝ってしまう。そもそも人海戦術なんてやっていれば、それこそ勝敗は運任せになることだろう。
「蓮也、白銀の属性は知っているわよね?」
「あぁ、聖雷だろ?」
「えぇ、聖属性と雷属性の複合型」
「せ、聖属性!?」
蓮也との話を聞いておられた結城家の術者さん達から、ざわめきが沸き起こる。
本来精霊が扱う属性とは大きく分けで地・水・風・火・雷・氷の6属性。さらに浄化や治療に特化した光属性と、幻影や精神といったものに影響を与える闇属性があるのだが、聖属性はその中で光属性の上位版、とでも言えばわかりやすいだろうか。
ただこの聖属性、実は扱える精霊が極めて稀で、恐らく現代の日本術者においては、白銀だけではないかと紫乃さんがおっしゃっていた。
「時間がないので簡単に説明しますが、私が契約している精霊の属性は聖雷、早い話が妖魔にとっては弱点ともいえる聖属性の雷なんです」
私は集まってくださった術者さんにも分かるよう、掻い摘んで説明する。
「ただ雷という特性上、私が見える範囲にしか当てられないし、その威力は軽く地面に穴を開けちゃうほど強すぎて、どうしても扱える場所が限られてしまうという欠点があるんです」
もちろん目標を定めずに、広範囲に雷を落とす事も可能だが、その被害は風華の風を暴走させるよりも被害は大きくなる事だろう。
「だったら余計に危険になるんじゃねぇか? 確かに聖属性は妖魔にとっては弱点だが、市街地に被害を広めては意味がないだろう?」
「もちろんよ。でもね、別に聖属性と雷属性を別々で使えないって、わけでもないのよ」
「!?」
白銀の聖属性はどちらかと言えば癒しに特化した特殊型。攻撃としても扱えるには扱えるのだが、正直雷の破壊力の方が勝ってしまう。
ただ聖属性という霊力その物が妖魔にとっては弱点となるため、使用者である私はただ聖属性の霊力を高めるだけで、妖魔にとっては全身に熱湯を浴びるような感覚を与える事ができるのだ。
つまりただ霊力を高めるだけなら、未熟な私でも出来るというわけ。
「なるほどな、霊力を高めるだけなら人的被害は起こらないし、隠れ潜んでいる妖魔にとっては逃げ出さざるを得ないというわけか」
「そういう事」
通常の状態の妖魔でも、聖属性の霊力を当てられればじっとしていることは出来ないので、手負いの今なら直ぐに霊力が届かない場所へ逃げ出そうとするだろう。そして動けば動くほど、苦しめば苦しむほど妖気が漏れてしまい、私や蓮也でもその気配を感じ取ることができるはずだ。
「でもよ、霊力を高めるだけっていっても、そんなに広範囲に広げられるものなのか?」
話を最後まで聞いていた蓮也が、ふと思い出したかのように尋ねてくる。
「無理に決まっているでしょ。術を展開させるわけじゃないんだから、そんなことは出来ないわよ」
「おいおい、それじゃ意味が……」
「もう忘れた? 私には心強いもう一人の相棒がいることを」
蓮也が最後まで言い切る前に、答えというべき最大のヒントを示す。
それだけでどうやら私が言いたいことが理解できたのか……
「そうか、風か!」
「えぇ、風華の力で範囲を広げるのよ」
白銀の力だけでは周りに影響を与えすぎる。かといって風華の風を起こすだけの力では妖魔に直接的なダメージは与えられない。ならば二人の力を混ぜればいいのだ。
白銀の聖属性に特化した霊力だけを私が高め、風華の風の力でその霊力を広げる。当然拡散する分威力は弱くなるのだが、今回の目的はあくまでも炙り出しなので、効果は十分発揮してくれるだろう。
「ただ問題が二つ。一つは妖魔が隠れ潜んでいる場所がわからない以上、発見出来次第向かわなけれいけないという点」
この中で直接攻撃に移れるのは私と蓮也の二人のみ。私は霊力を高めている関係、直ぐには動けない状態なので、実質蓮也一人に頼ってしまうことになる。
相手はD級とはいえ手負いの妖魔。追い詰められた挙句最悪周りを巻き込んで自爆、なんて可能性も否定できないため、発見から滅殺まで時間をかけるわけにはいかない。
わざわざ私と蓮也の二人を派遣されたのに、被害を出してしまいました、では信頼してくださった紫乃さんに申し訳がたたない。
「心配するな。俺に任せておけ」
「そうね。蓮也ならば問題ないわね」
一瞬の躊躇いもなく蓮也ならばと信じてしまえる。
それに蓮也の契約している烈火は空を飛べる。移動に関しては烈火にしがみ付けば移動にそうはかからないだろう。
ただ念には念を、出来る対策は出来るだけ事前に貼っておくのは越した事がない。
「それで後方支援の方々にお願いしたいのですが、私の予想では妖魔は河川敷ではなく、市街地に潜んでいる可能性が非常高いのです。ですから皆さんは事前に市街地方面へ散らばっていただき、妖魔の気配を感知したら直ぐに結界で閉じ込めてもらいたいんです」
これは妖魔の逃走を阻む理由と、一般人への目撃情報を減らすための私なりの配慮。
警察の方々が交通規制をされているのはこの多摩川周辺の河川敷のみ。妖魔の最後の目撃が、河川敷の北側だったため仕方がないのだが、私の予想では既に妖魔は移動しており、近くの市街地で潜んでいるんではないかと考えている。
「予め警戒しておくのはいいが どうしてそう思うんだ?」
「よく考えてもみて、妖魔はもともと負の感情抱く人間の近くに潜むわ。今回は手負いの状態で逃走しているわけだから、必ず妖力を補充しようと考えているはず。そこで妖力を回復しつつ一番身を潜めやすい場所は?」
「人間の心か!」
「そういう事よ」
よく低級の妖魔は人の心に住まうと言われている。そしてその大半は弱いまま消えてしまうか、別の人間に移り住むかを繰り返していくのだが、取り憑かれた側の人間はそれを認知できないのだ。
恐らく妖魔は力を蓄えるために人の心に潜んで、あわよくば妖力の回復と私たち術者からの逃亡を試みようとしているのではないだろうか?
「わかりました。そういう事でしたら我らにお任せください」
「えぇ、宜しくお願いします」
さすが結城家に所属する方々だ、理解が早くて助かる。
「それでもう一つの懸念ってなんだ?」
「北条家の出方よ」
彼方の目的も妖魔を見つけ出し、即座に討伐。
今回私は無作為に炙り出そうとしているため、最悪北条家が捜索しているエリアに出現、なんて事もありえるのだ。
「確かにそれはどうしようもないな」
「運を天に任せる、なんてナンセンスな事は言いたくはないんだけれど、こればかりはね」
風を操って北条家が捜索しているエリアだけを省く、なんて風という自然現象の特性上、はっきり言ってそんな細かな操作は不可能に近い。
むしろ北条家が捜索しているエリアを丸ごと結界で囲む方が、よほど効率的であろう。ただこれには捜索を妨害されたと、ネチネチと後で文句を言われる事が想定されるため、出来ればあまりやりたくないというのが本音ではある。
あとは私の霊力に気づかず、妖魔の妖気が感知できなかったという可能性もあるのだが、落ちぶれても神奈川を守護する術者一族なので、そんな単純な見落としはしないだろう。
「まぁ任せておけって。彼方さん側の近くに沸いたところで、移動と討伐までには多少の時間は掛かる。その僅かな時間さえあれば、俺が先に到着して倒して来てやるさ、俺を信じろ!」
ドキッ。
蓮也の頼もしい姿に一瞬三ヶ月前の光景が蘇る。
『女一人も守れず何が男だ。守ってやるさ、だから俺を信じろ!』
瞼を閉じれば今も浮かぶ光景。
そうね、そうだったわね。あの時もそうだったように、蓮也の言葉にはどこか『そうなるんだ』という力強さを感じてしまう。
大丈夫、あんな男に蓮也が負けるはずはないわ。
「任せたわ蓮也」
「あぁ、任された」
こうして各々作戦のために準備に取り掛かる。
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