ポルターガイスト

sherry

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未練なんて分かりきってるでしょ。

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『京ちゃん。私、もうすぐ消えちゃうのかもしれない。』



突然震える声でそう言い出した彼女に驚いて、俺は手に持っていたコーヒーカップを床に落としてしまった。

『何やってるのよ、もう。早く片付けないとシミになるでしょ!…私は触れられないのよ。やってあげられないの。』

そう俯く彼女を横目に、気づかないふりを続ける俺はこぼしたコーヒーを片付ける。

『あのね、京ちゃん。私、幽霊って、未練がなくなるまでずっとこの世にいられると思ってたの。でも違うみたい』

『なんとなくね、わかるの。私はもうすぐ天国に行かなきゃならない。』



京ちゃん、寂しくなるでしょう、と彼女は微笑んだ。



『私の未練は京ちゃん、あなただったのよ。感情を表に出すのが苦手で、私のお葬式でもちっとも泣かなかったけど、本当はとっても苦しかったの、私知ってるよ。それ見てたら、もう少し一緒にいたいと思ってさ、そしたら幽霊になっちゃった。京ちゃんが元気になって、新しい彼女を作ったり、結婚したり、幸せになるのを見届けたら、ちゃんと成仏するつもりだったのよ?』


こんなこと言っても聞こえてないのはわかってるけどね、とまた彼女は微笑んだ。



その瞬間、彼女の体が光り始める。



『京ちゃん、ほんとにお別れみたい。まだまだ見守っていたかったよ。最後に春って呼んで欲しかったな。』



そう言って涙を流す彼女を見て





「春…。」




思わず声が漏れた俺の目からは涙が流れていた。
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