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◆在るべきところへ◇17話◇終わりにしよう ⑤
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◆在るべきところへ◇17話◇終わりにしよう ⑤
「レイ……許してほしい。あの時、傷ついたとしても皆で進むべきだった。俺が命を落としたせいで、ミゼリットは壊れてしまった。こんなはずでは……こんなはずではなかったんだ」
インティスは、自分の頬を涙が伝っていることに気が付いた。夢を見始めるようになってから聞こえていた声、それは神話の時代から後悔し続けていた父親の声だったのだ。
その父親の声が、インティスに向けられる。
「……君も、守りたいものがあるなら、自分一人きりで守りきろうと思わないで。俺みたいにならないようにね」
「……っ」
流れてくる悲しみに満ちた感情と嗚咽が邪魔をして、インティスは頷くことしかできなかったが、ジャドニックは満足そうに微笑んだ。
「……ミゼリット」
ジャドニックは恋人の名前を呼んで一息で立ち上がると、カーリアンの腕の中の彼女の元へゆっくりと近づいた。
レイの短剣がもたらした傷から流れる血を、カーリアンは止めなかった。
ぐったりと体を預け、瞳は虚ろだったが、ジャドニックが側へ行くとその目は今までで一番嬉しそうに笑った。
「ジャドニック……本当に……?」
「ああ、本当だよ。今までありがとう……後はずっと一緒にいような」
ジャドニックはカーリアンからミゼリットを預かると、ぎゅうっと抱きしめた。そのまま、レイとカーリアンに視線をやる。
「レイ……」
声をかけようとしたインティスを、レイが振り向いて制した。それからカーリアンと視線を合わせ、二人分の姿が一瞬で霞むほどの大きな炎を呼んだ。
静かに激しく燃える炎の中で、ジャドニックの眼差しはいつまでも優しくミゼリットを映していた。
◇
頃合いを見て炎を退けると、そこにはもう何もなくなっていた。
気を失ったままのアテネの汚れた手をさすってやりながら、ライネが小さく息をついた。
終わったんだ。何もかも。誰もがそう思った。
フェレナードはインティスに声をかけようとして手を伸ばしたが、その指先に触れた空気が熱いことに気付いた。
「賢者様……!」
異変にフェレナードは声を上げたが遅く、インティスの体から炎が吹き出した。
両親の力の継承が始まった。
「レイ……許してほしい。あの時、傷ついたとしても皆で進むべきだった。俺が命を落としたせいで、ミゼリットは壊れてしまった。こんなはずでは……こんなはずではなかったんだ」
インティスは、自分の頬を涙が伝っていることに気が付いた。夢を見始めるようになってから聞こえていた声、それは神話の時代から後悔し続けていた父親の声だったのだ。
その父親の声が、インティスに向けられる。
「……君も、守りたいものがあるなら、自分一人きりで守りきろうと思わないで。俺みたいにならないようにね」
「……っ」
流れてくる悲しみに満ちた感情と嗚咽が邪魔をして、インティスは頷くことしかできなかったが、ジャドニックは満足そうに微笑んだ。
「……ミゼリット」
ジャドニックは恋人の名前を呼んで一息で立ち上がると、カーリアンの腕の中の彼女の元へゆっくりと近づいた。
レイの短剣がもたらした傷から流れる血を、カーリアンは止めなかった。
ぐったりと体を預け、瞳は虚ろだったが、ジャドニックが側へ行くとその目は今までで一番嬉しそうに笑った。
「ジャドニック……本当に……?」
「ああ、本当だよ。今までありがとう……後はずっと一緒にいような」
ジャドニックはカーリアンからミゼリットを預かると、ぎゅうっと抱きしめた。そのまま、レイとカーリアンに視線をやる。
「レイ……」
声をかけようとしたインティスを、レイが振り向いて制した。それからカーリアンと視線を合わせ、二人分の姿が一瞬で霞むほどの大きな炎を呼んだ。
静かに激しく燃える炎の中で、ジャドニックの眼差しはいつまでも優しくミゼリットを映していた。
◇
頃合いを見て炎を退けると、そこにはもう何もなくなっていた。
気を失ったままのアテネの汚れた手をさすってやりながら、ライネが小さく息をついた。
終わったんだ。何もかも。誰もがそう思った。
フェレナードはインティスに声をかけようとして手を伸ばしたが、その指先に触れた空気が熱いことに気付いた。
「賢者様……!」
異変にフェレナードは声を上げたが遅く、インティスの体から炎が吹き出した。
両親の力の継承が始まった。
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