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◆在るべきところへ◇18話◇継承 ②
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◆在るべきところへ◇18話◇継承 ②
「ちょっと、あんたはここにいなさい。動いちゃだめよ」
大気が唸るような轟音に目を覚まし、体を起こそうとしたアテネに水の精霊は釘を刺した。
「ライネ……、どうなってるの……?」
刺された釘を無視して、アテネが体を起こす。
水の膜ではっきりとは見えないが、何人かが集まる中心から柱のような炎が見えた。
その光景にアテネははっとした。彼女の本能が、あれはインティスのものだと理解させた。彼の声で意識を取り戻した記憶があるから、彼もここにいるはずなのだ。
「あれは……あれはインティスよね?」
「黙ってそこにいなさいって言ってるでしょ」
ライネは頑としてアテネの質問に答えない。すると、地面についた手の近くでぱちぱちしていた目と、アテネの視線がぶつかった。
「トキト! ねえ、あそこで炎を出してるのは誰?」
彼にわかるよう、なるべく簡単な言葉で聞いた。
「にんげんだよ」
惜しい、もうちょっと。
「髪は? あたしみたいな色?」
アテネが自分の髪を指すと、小さな二つの目はまたぱちぱちと瞬きをした。
「うん、そう」
「ありがとう。ライネ、あれはインティスの炎の力なのね?」
お喋りなやつね、とライネは文句を言ったが、頷かざるを得なかった。
「そうよ。いいからあんたは引っ込んでなさい……って、こら! 待ちなさい!」
ライネが言い終わる前に、アテネは水の膜から飛び出していた。
「……っ、だから黙ってたのに! フェレナード! アテネがそっちに行くから何とかして!」
「えっ!」
ライネは精霊の動きを見ると、インティスの周りの炎や熱を動かしているのがフェレナードだと判断して声をかけた。
さすがに突然名前を呼ばれてフェレナードは焦ったが、走って来るアテネに声をかけて何とか迎え入れた。
「賢者様、インティスは……!」
アテネの質問に、レイは苦々しい顔で頷くと、状況だけ手短に説明した。
「彼の両親が死んだ。これはその力の継承だ」
「継承……」
アテネは息を呑んだ。小さい頃から教えられている炎の力の制御さえ自分はうまくいかないのに、目の前の幼なじみは、使ったことすらない力を宿されようとしているのだ。しかも、自分以上に膨大な力を。それは燃え盛る炎を見ればわかる。
アテネはレイが抱きかかえるインティスの正面で両膝をつくと、ぐったりと下がる両手に手を伸ばした。
「まずい、今触ると……」
「大丈夫です。火傷は慣れてるの」
アテネはフェレナードに答えると、インティスの両手を取ってぎゅっと握った。
「ちょっと、あんたはここにいなさい。動いちゃだめよ」
大気が唸るような轟音に目を覚まし、体を起こそうとしたアテネに水の精霊は釘を刺した。
「ライネ……、どうなってるの……?」
刺された釘を無視して、アテネが体を起こす。
水の膜ではっきりとは見えないが、何人かが集まる中心から柱のような炎が見えた。
その光景にアテネははっとした。彼女の本能が、あれはインティスのものだと理解させた。彼の声で意識を取り戻した記憶があるから、彼もここにいるはずなのだ。
「あれは……あれはインティスよね?」
「黙ってそこにいなさいって言ってるでしょ」
ライネは頑としてアテネの質問に答えない。すると、地面についた手の近くでぱちぱちしていた目と、アテネの視線がぶつかった。
「トキト! ねえ、あそこで炎を出してるのは誰?」
彼にわかるよう、なるべく簡単な言葉で聞いた。
「にんげんだよ」
惜しい、もうちょっと。
「髪は? あたしみたいな色?」
アテネが自分の髪を指すと、小さな二つの目はまたぱちぱちと瞬きをした。
「うん、そう」
「ありがとう。ライネ、あれはインティスの炎の力なのね?」
お喋りなやつね、とライネは文句を言ったが、頷かざるを得なかった。
「そうよ。いいからあんたは引っ込んでなさい……って、こら! 待ちなさい!」
ライネが言い終わる前に、アテネは水の膜から飛び出していた。
「……っ、だから黙ってたのに! フェレナード! アテネがそっちに行くから何とかして!」
「えっ!」
ライネは精霊の動きを見ると、インティスの周りの炎や熱を動かしているのがフェレナードだと判断して声をかけた。
さすがに突然名前を呼ばれてフェレナードは焦ったが、走って来るアテネに声をかけて何とか迎え入れた。
「賢者様、インティスは……!」
アテネの質問に、レイは苦々しい顔で頷くと、状況だけ手短に説明した。
「彼の両親が死んだ。これはその力の継承だ」
「継承……」
アテネは息を呑んだ。小さい頃から教えられている炎の力の制御さえ自分はうまくいかないのに、目の前の幼なじみは、使ったことすらない力を宿されようとしているのだ。しかも、自分以上に膨大な力を。それは燃え盛る炎を見ればわかる。
アテネはレイが抱きかかえるインティスの正面で両膝をつくと、ぐったりと下がる両手に手を伸ばした。
「まずい、今触ると……」
「大丈夫です。火傷は慣れてるの」
アテネはフェレナードに答えると、インティスの両手を取ってぎゅっと握った。
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