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第14話 きっかけは大勝利
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期末テストを挟んだせいで二十日振りに見た守護獣は、やはり大きな黒い犬だった。
昨日一日特訓しただけでそうそううまくいくわけないと誰もが思っていたのに、いざ相手にしてみると奇跡が立て続けに起こった。
犬から吐き出された炎は真っ直ぐ飛んで来るので、勢いはあるものの軌道を読むことができた。問題の噛みつき攻撃も、ダグラスの特訓が見事に功を奏した。
暁はもちろん、優貴も何とかかわすことができ、ことみは水の膜と霧を状況によって使い分ける。
それはちょうど二人の姿を隠し、犬の目くらましに最大限の効果を発揮した。
おまけにローザが雷を作って翻弄してくれたので何度も隙が生まれた結果、暁とインティスによって早々に決着がついてしまったのだった。それは本人たちが一番驚いていた。
優貴自身は今回全く戦力にならなかったが、全ての攻撃をかわせたのは自分なりの功績だと思っている。
「やった! 勝てたじゃん! 特訓の成果よ!」
「良かったわ」
ことみは隣のローザと手を取り合って喜んでいた。そして、暁に声をかける。
「やったじゃない! っていうか、何かあいつ弱くない? こんなんだったっけ?」
「知らん」
暁は大して気に留めていない様子だったが、ことみは気付いたのかもしれない。そして優貴は確信していた。
やはり、特訓の時と比べて体が軽い。特に炎を避けた時に体が速く動くので実感した。それはつまり、この世界に転移したからという単純な理由ではなく、恐らく文献調査に訪れているこの墓自体に理由があるのではないだろうか。でなければ、昨日の特訓の時点で速く動けているはずだ。
試しに聞いてみようと、優貴は次の部屋への扉を調べているインティスの方へ行った。
「ちょっと待って、今開けるから」
侵入者向けの良くない仕掛けがないかを確認すると、インティスは腰に着けたいくつもの小さな道具袋の一つから、持ち手のついた針金をいくつか出した。
優貴は解錠の作業を見守りながら、邪魔をしない程度に話しかけた。
「特訓で使ってる部屋とここって、何か違う?」
「え?」
視線は手元に向けたまま、インティスが聞き返す。
「いや、その……ここで戦ってる時、何か体が軽い気がして……」
「へえ、勘がいいな。気付いたんだ」
「え?」
インティスからの答えが予想外で、逆に優貴が聞き返してしまった。
まさか、この場所に理由があるという予想は本当に当たっていた?
その時、扉の鍵が開いた。
インティスが離れていたことみとローザ、暁を呼び寄せ、扉を開ける。
「もう次に進むの?」
「どんなやつかだけ確認したら戻る」
「わかったわ」
ことみとインティスのやり取りの後、扉が開けられた。
優貴は思わず考え込む。
気付いた、と言ったということは、インティスは何かしらの仕組みを知っているということだ。
どうしてここだと体が軽いのだろう。王家の呪いを研究していた人のお墓なのに。
会話が自然消滅してしまったせいで、優貴には疑問だけが残ってしまった。
◇
ダグラスとの特訓が大成功だった話は、薬屋に戻って来てすぐ、高校生たちから直接ダグラス本人へ報告された。彼もまた、次の戦いのために必要な情報がわかればと、自ら話を聞きに来たようだった。
「楽勝だったか、そりゃ良かったな」
「そうなの。暁も優貴もちゃんと動くから見直しちゃった」
「…………」
暁は相変わらず無言だったが、ことみは機嫌が良さそうだ。今日の勝利が相当嬉しかったのかもしれない。彼女は優貴たちを見直した、と言ったが、実際に根を詰めて水膜や霧の練習をしていたのは彼女自身だ。頑張ったおかげで結果を出せたなら嬉しいに決まっている。
次の部屋に出現したのは大きな猪で、猪突猛進の四字熟語のまま真っ直ぐ走って来る様子や、牙での突き上げは方向の予測をつけにくいことなどの共有を終えた後、最初に席を立ったのはローザだった。
「それじゃ、私はそろそろ帰るわね」
「え、もう?」
慌てたようにことみも立ち上がる。
「次の守護獣については話したけど、まだ何かあったかしら?」
「あ、いや、えっと……」
言葉に詰まることみを見て、ローザが思い出したように首を傾げた。
「……そういえばコトミ、今日は来るのが少し遅かった気がするけど……」
「……そうなの?」
優貴は小声で恐る恐る暁に聞くと、彼は無言のまま頷いた。
時間にうるさい彼女が珍しい。今日は優貴が一番最後に来たので、全員時間通りだと思っていた。
「……大したことじゃないの。大丈夫よ」
「そう……」
ことみが笑って見せるので、ローザはそれ以上聞くことなく帰って行った。
少しだけ、ラウンジに沈黙が残る。
「…………ほ、ほんとに大丈夫……?」
ことみの表情が曇っているように見えて、優貴はそっと彼女に聞いてみた。彼女は、ひょっとしたらまだローザと一緒にいたかったのではないだろうか。理由はわからないが。
大丈夫って言ってるじゃない! と怒られるかと思ったが、ことみは優貴と目が合うと、溜息と一緒に吐き出した。
「……午前中、ちょっとおばあちゃんのお見舞いに行ってたの」
「……そ、そっか……」
そういうことなら、さすがにそれ以上は踏み込めない。
優貴がそれだけ返すと、ことみはじゃあね、とだけ言って自分の部屋へ戻った。
後ろ手に部屋の扉を閉めると、飲み込んだままだった溜息がこぼれた。
自分の魔法と、彼らの力で守護獣を倒すことができた。
前の日はずいぶん衝突したが、今日はそういうことはなかった。逆に、何とかこの先もやっていけるのではないかという手応えすらあったほどだ。
それなのに胸の内がすっきりしないのは、午前中の病院のせいだ。
祖母はかねてより病気で入院していて、久しぶりに母とお見舞いに行った。
前に来た時よりだいぶ痩せたと思ったが、ずっと寝ていたので会話をすることはなかった。
帰り道、母から祖母が余命一ヶ月だと聞かされた。それはことみに隠していたのではなく、母も医師から最近聞かされたのだという。
ヨメイって何だっけ、と思ってしまうくらい、実感が湧かない。
祖母はいつもにこにこしているような人で、昔から近所に住んでいた。ことみが小さい頃は一緒に遊んだりしたものの、さすがに中学に入ってからは友達と遊ぶことが多くなったので、祖母に会う機会は減った。病気が発覚して入院したのは、高校に入ってからだ。
あと一ヶ月で本当に死んでしまうのだろうか。余命宣告を受けても生きている人はいっぱいいる。祖母はどうなるのだろう。
くすぶる不安を、せめてローザに打ち明けられればと思っていたが、今日はその機会を失ってしまった。
現実を受け止めようにも戸惑いと動揺の方が大きくて、まだ涙が出ることはなかった。
◇
ことみが帰ってから、他の二人もそれぞれ部屋に戻って行った。
インティスは後片付けをしながら目を細める。
ダグラスは席を立ったものの、何か考え事をしているようだった。腕を組みながら、片手で自らの顎髭を触るのは彼の昔からの癖だ。
「次の特訓は何するか決まった?」
「ん? んー……」
話しかけても生返事だ。
「ユウキたち、だいぶ強くなっただろ」
「……ああ、確かに」
今度はまともな答えが返って来た。
「……このままじゃまずいな」
「え?」
ダグラスの一言に、インティスの背筋が何故かぞくっとした。
「……いや、このままだと特訓の中身にも限界があると思ってな」
「そういうことか……」
気の抜けた溜息をついて、インティスは片付けの続きに取りかかった。
◇
その日の真夜中、褪せた金髪の男がダグラスの部屋の扉を叩いた。
彼は一番最初にこの部屋を訪れたアルトメリア家の男だった。優しそうな目元と、気弱そうな仕草は相変わらずだ。
扉が開くと、男は慌てたように部屋へ滑り込んだ。
「ダグラス、君から呼ぶなんて珍しいじゃないか。王子を守ってくれると言ったのに、何かあったのかい?」
「その王子を守る話についてなんだが」
不安そうな様子の男を見下ろすと、ダグラスは低い声で切り出した。
「……協力してほしいことがあってな」
昨日一日特訓しただけでそうそううまくいくわけないと誰もが思っていたのに、いざ相手にしてみると奇跡が立て続けに起こった。
犬から吐き出された炎は真っ直ぐ飛んで来るので、勢いはあるものの軌道を読むことができた。問題の噛みつき攻撃も、ダグラスの特訓が見事に功を奏した。
暁はもちろん、優貴も何とかかわすことができ、ことみは水の膜と霧を状況によって使い分ける。
それはちょうど二人の姿を隠し、犬の目くらましに最大限の効果を発揮した。
おまけにローザが雷を作って翻弄してくれたので何度も隙が生まれた結果、暁とインティスによって早々に決着がついてしまったのだった。それは本人たちが一番驚いていた。
優貴自身は今回全く戦力にならなかったが、全ての攻撃をかわせたのは自分なりの功績だと思っている。
「やった! 勝てたじゃん! 特訓の成果よ!」
「良かったわ」
ことみは隣のローザと手を取り合って喜んでいた。そして、暁に声をかける。
「やったじゃない! っていうか、何かあいつ弱くない? こんなんだったっけ?」
「知らん」
暁は大して気に留めていない様子だったが、ことみは気付いたのかもしれない。そして優貴は確信していた。
やはり、特訓の時と比べて体が軽い。特に炎を避けた時に体が速く動くので実感した。それはつまり、この世界に転移したからという単純な理由ではなく、恐らく文献調査に訪れているこの墓自体に理由があるのではないだろうか。でなければ、昨日の特訓の時点で速く動けているはずだ。
試しに聞いてみようと、優貴は次の部屋への扉を調べているインティスの方へ行った。
「ちょっと待って、今開けるから」
侵入者向けの良くない仕掛けがないかを確認すると、インティスは腰に着けたいくつもの小さな道具袋の一つから、持ち手のついた針金をいくつか出した。
優貴は解錠の作業を見守りながら、邪魔をしない程度に話しかけた。
「特訓で使ってる部屋とここって、何か違う?」
「え?」
視線は手元に向けたまま、インティスが聞き返す。
「いや、その……ここで戦ってる時、何か体が軽い気がして……」
「へえ、勘がいいな。気付いたんだ」
「え?」
インティスからの答えが予想外で、逆に優貴が聞き返してしまった。
まさか、この場所に理由があるという予想は本当に当たっていた?
その時、扉の鍵が開いた。
インティスが離れていたことみとローザ、暁を呼び寄せ、扉を開ける。
「もう次に進むの?」
「どんなやつかだけ確認したら戻る」
「わかったわ」
ことみとインティスのやり取りの後、扉が開けられた。
優貴は思わず考え込む。
気付いた、と言ったということは、インティスは何かしらの仕組みを知っているということだ。
どうしてここだと体が軽いのだろう。王家の呪いを研究していた人のお墓なのに。
会話が自然消滅してしまったせいで、優貴には疑問だけが残ってしまった。
◇
ダグラスとの特訓が大成功だった話は、薬屋に戻って来てすぐ、高校生たちから直接ダグラス本人へ報告された。彼もまた、次の戦いのために必要な情報がわかればと、自ら話を聞きに来たようだった。
「楽勝だったか、そりゃ良かったな」
「そうなの。暁も優貴もちゃんと動くから見直しちゃった」
「…………」
暁は相変わらず無言だったが、ことみは機嫌が良さそうだ。今日の勝利が相当嬉しかったのかもしれない。彼女は優貴たちを見直した、と言ったが、実際に根を詰めて水膜や霧の練習をしていたのは彼女自身だ。頑張ったおかげで結果を出せたなら嬉しいに決まっている。
次の部屋に出現したのは大きな猪で、猪突猛進の四字熟語のまま真っ直ぐ走って来る様子や、牙での突き上げは方向の予測をつけにくいことなどの共有を終えた後、最初に席を立ったのはローザだった。
「それじゃ、私はそろそろ帰るわね」
「え、もう?」
慌てたようにことみも立ち上がる。
「次の守護獣については話したけど、まだ何かあったかしら?」
「あ、いや、えっと……」
言葉に詰まることみを見て、ローザが思い出したように首を傾げた。
「……そういえばコトミ、今日は来るのが少し遅かった気がするけど……」
「……そうなの?」
優貴は小声で恐る恐る暁に聞くと、彼は無言のまま頷いた。
時間にうるさい彼女が珍しい。今日は優貴が一番最後に来たので、全員時間通りだと思っていた。
「……大したことじゃないの。大丈夫よ」
「そう……」
ことみが笑って見せるので、ローザはそれ以上聞くことなく帰って行った。
少しだけ、ラウンジに沈黙が残る。
「…………ほ、ほんとに大丈夫……?」
ことみの表情が曇っているように見えて、優貴はそっと彼女に聞いてみた。彼女は、ひょっとしたらまだローザと一緒にいたかったのではないだろうか。理由はわからないが。
大丈夫って言ってるじゃない! と怒られるかと思ったが、ことみは優貴と目が合うと、溜息と一緒に吐き出した。
「……午前中、ちょっとおばあちゃんのお見舞いに行ってたの」
「……そ、そっか……」
そういうことなら、さすがにそれ以上は踏み込めない。
優貴がそれだけ返すと、ことみはじゃあね、とだけ言って自分の部屋へ戻った。
後ろ手に部屋の扉を閉めると、飲み込んだままだった溜息がこぼれた。
自分の魔法と、彼らの力で守護獣を倒すことができた。
前の日はずいぶん衝突したが、今日はそういうことはなかった。逆に、何とかこの先もやっていけるのではないかという手応えすらあったほどだ。
それなのに胸の内がすっきりしないのは、午前中の病院のせいだ。
祖母はかねてより病気で入院していて、久しぶりに母とお見舞いに行った。
前に来た時よりだいぶ痩せたと思ったが、ずっと寝ていたので会話をすることはなかった。
帰り道、母から祖母が余命一ヶ月だと聞かされた。それはことみに隠していたのではなく、母も医師から最近聞かされたのだという。
ヨメイって何だっけ、と思ってしまうくらい、実感が湧かない。
祖母はいつもにこにこしているような人で、昔から近所に住んでいた。ことみが小さい頃は一緒に遊んだりしたものの、さすがに中学に入ってからは友達と遊ぶことが多くなったので、祖母に会う機会は減った。病気が発覚して入院したのは、高校に入ってからだ。
あと一ヶ月で本当に死んでしまうのだろうか。余命宣告を受けても生きている人はいっぱいいる。祖母はどうなるのだろう。
くすぶる不安を、せめてローザに打ち明けられればと思っていたが、今日はその機会を失ってしまった。
現実を受け止めようにも戸惑いと動揺の方が大きくて、まだ涙が出ることはなかった。
◇
ことみが帰ってから、他の二人もそれぞれ部屋に戻って行った。
インティスは後片付けをしながら目を細める。
ダグラスは席を立ったものの、何か考え事をしているようだった。腕を組みながら、片手で自らの顎髭を触るのは彼の昔からの癖だ。
「次の特訓は何するか決まった?」
「ん? んー……」
話しかけても生返事だ。
「ユウキたち、だいぶ強くなっただろ」
「……ああ、確かに」
今度はまともな答えが返って来た。
「……このままじゃまずいな」
「え?」
ダグラスの一言に、インティスの背筋が何故かぞくっとした。
「……いや、このままだと特訓の中身にも限界があると思ってな」
「そういうことか……」
気の抜けた溜息をついて、インティスは片付けの続きに取りかかった。
◇
その日の真夜中、褪せた金髪の男がダグラスの部屋の扉を叩いた。
彼は一番最初にこの部屋を訪れたアルトメリア家の男だった。優しそうな目元と、気弱そうな仕草は相変わらずだ。
扉が開くと、男は慌てたように部屋へ滑り込んだ。
「ダグラス、君から呼ぶなんて珍しいじゃないか。王子を守ってくれると言ったのに、何かあったのかい?」
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