魔王の番

にーにゃ

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魔王side

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ガチャ


「魔王様あ
報告きたあ?」


ノックもせずに入ってきたアベンをチラッと見てから、手に取っていた資料を机に置いた。


「ああ、先ほどきたぞ
やはりルリという人族はいないと報告がきた」


椅子に座り、はあーと息をついた。


「んーそっかあ」


アベンは俺が机に置いた報告書を勝手に読みながら、眉間にしわを寄せた。


「引き続き城の中を探らせるが、もしかするとすでに殺されているか、城から追い出したか、その可能性もあると考えておいた方がいいかもしれない」


こうなるなら、あの時ルリという者も連れてくればよかったか・・・


「そうだねえ
あいつらならしそうだもんねえ
あ、ねえ、もしかしたらあの神子ちゃんが、ルリちゃんの居場所を知ってるかもよお?」


「あいつか・・・」


自然と眉間にしわが寄った。


「うん、ヒナちゃん達に執着していたみたいだし」


「そうか
行くぞ」


行きたくないが、仕方がない

アベンを連れて人族の神子がいる部屋に向かった。


「おい!!
出せよ!!」


扉を叩いているのかドンドンッと凄い音をたてながら叫んでいた。


「はあー、さいあく」


それは俺も同じだ
本当に殺してえ

魔法で扉を開け、驚いて固まっている神子を部屋の端に追いやり、中に入った。


「おい!!
お前!
俺を閉じ込めるなんて最低だぞ!!
今なら許してやるから、謝れ!!」


「うるせぇ」


「っていうか何様だよお」


俺より先にアベンが神子を殺しそうだから、さっさと本題に入った。


「おい、お前」


「俺の名前は燐だ!!
名前で呼べよな!!」


「チッ
いいから答えろ
瑠璃という者は城の何処にいる」


神子に魔力で首を絞めながらそう言った。


「ううっ、く”る”し”い」


「早く答えろ」


「し”ら”な”い、し”、ら”な”、」


泣きながら答える神子に、これ以上聞いても無駄だと判断した俺は早々に部屋を出た。


「はあー、ダメだったかあ」


「ああ
もし城から出たのなら、生きている確率はあるだろう」


「はあー、ヒナちゃんになんて報告しよお」


アベンは歩きながら頭を抱えた。


「有りのままでいいだろ」


「うん、そうなんだけどお
あー、ヒナちゃん絶対に悲しむよお」


アベンがうんうん唸っているのを横目に空間収納からブレスレットを取り出した。


「おい、アベン
これをヒナタに着けろ」


「なあに?」


俺の方を見たアベンにブレスレットを投げて渡した。


「んー?
これって魔力制御?」


「ああ、またヒナタの魔力が暴走したら次は気絶だけでは済まないかもしれねえからな」


「うん、そうだねえ
それじゃあ、ヒナちゃんに報告とこれ渡してくるう」


「ああ、そうしろ」


少し落ち込み気味に去っていったアベンを見送って、俺も執務室に向かった。

ルリ、か




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