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呼び名
しおりを挟む「ルリの安全は保証する」
そう言うラスに黙って頷くしかなかった。
もしかしたら、俺は・・・
恐ろしい言葉が浮かび上がりそうで、その言葉をかき消すように頭を振る。
「ルリ、もう一つ、言わなければならない事がある」
ラスの顔を見ると、言いたくないような言いづらそうな微妙な顔で俺を見つめてそう言った。
「何?」
「、俺の名を呼ぶことはスマラグドス王の遣いの一件が終わるまで・・・」
ラスも言いたくないのか最後まで言わなかったけど、言いたいことは分かった
・・・ラスと呼ぶなって事
「・・・わかった」
自然と俯く。
距離が縮まったと思ったけど、今では距離が物凄く開いた気がする。
ラスが魔王なのは分かっていた
ここが地球、日本と違う、異世界なのも分かっている
俺が無力なのも、、分かっている
・・・分かっている
「、ルリ」
「ああ、、
分かってる、これからは魔王様って呼ぶな
それで、貴賓室?っていつから移動するんだ?」
ラスを見上げて、ニッと笑って言う
頬が引きつる感じがするが、無理やりにでも笑っていないと、どうにかなりそうで
ラスは俺の顔を見て一瞬眉を寄せたが、いつもの無表情に戻り、少しの沈黙の後そう答えた。
「・・・
今日中にはルリとヒナタが過ごす部屋が整うだろう」
「わかった
それじゃあ、今日からアメシストに勉強を教えてもらうのか?」
「そうだ
午後からルリとヒナタに与えた部屋で行う」
「そうなんだ
ヒナタは知っているのか?」
「トリスが伝えるから問題ないだろう」
「、分かった・・・」
沈黙が流れる
穏やかな雰囲気ならよかった
昨日までは沈黙でも温かさがあった
でも今は、気まずい
「ルリ
この一件が終われば、何処か出かけよう」
突然のラスの言葉に、驚き目を見開いてラスを見る。
「えっ?」
「城の中ばかりで、何処にも出かけていないだろう
ヒナタも連れ、すぐ近くだが泉がある所に行こう
どうだ?」
そう言い、穏やかに微笑むラス
ラスのその顔と言葉に、勢いよく頷いた。
「行くっ
行きてぇっ」
別に自然が好きでも何でもないが
そもそもが都会育ちだ
それでも、ラスの提案に断る理由もない
なにより、異世界の景色に物凄く興味をそそられる
・・・あの時は、景色なんて見る余裕もなかったからな
「そうか
その時は軽食も持っていこう」
「おう
すげぇ、楽しみ」
「ああ、そうだな」
ラスの提案に、あっさりと気分が上昇する俺
それでもいい
ラスと出かけられるなら
昼食を食べる為に食堂に行くまでの間、ラスは寝室の隣の部屋で仕事をし、俺は側にあるソファーで少し読めるようになった子供向けの本を読んで時間を過ごした。
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