魔王の番

にーにゃ

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募る不安

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昼食は結局食堂に行かず、太陽と二人でこれから過ごす予定の部屋で取った。



ラス達はこれから来るスマ何とか王の遣いの準備に忙しいらしい
申し訳なさそうに俺を貴賓室に案内しながらそう言っていた。




「なあ、瑠璃」




昼食を食べ終えて部屋を探索しながら話しかけてきた太陽




「なんだ?」




俺はまだそれ程体力が戻っていない為、椅子に座ったまま返事をした。




「スマラグドス王の遣いってさ
怪しいと思わない?」




「・・・ああ、そうだな」




アベンも言っていた、何かを探りに来た可能性があるって




「俺らと関係ないよな?」




振り返って俺を見る太陽の表情とその言葉に、微かに不安に思っている事が分かった




「・・・分からねぇ
だけど、この部屋から出るなって事は、そういう事じゃねぇの?」




そうだ
この世界の事をまだ、知らないと言っても
遣いの奴らが帰るまで部屋から出るなは、やり過ぎだろう




「、だよな
でも、瑠璃と一緒の部屋でよかった」




「ああ、そうだな」




本当にそう思う
この広い部屋に一人だと、余計な事を考えそうで・・怖い




「何も、なければいいな」




太陽の切実な願いに、黙って頷くしかなかった。


重い沈黙の中、扉を叩く音が鳴った。




コンコンコン




ビクッと俺の体が跳ねる。
それを見た太陽はすぐに俺の近くに寄り、扉に向かって返事をした。




「はい」




「失礼いたします」




中に入ってきたのはアメシストで、俺らを見た後、テーブルの上の食器を見て、




「食器を下げてもよろしいですか?」




「あ、はい
お願いします」




太陽が咄嗟に答えた。




「わかりました
では、お願いします」




部屋の外に待機していたのか、使用人の人たちが食器を素早く下げて部屋から出て行った。
あっという間の出来事だった。
それでも使用人の人たちが入ってきた時は、体が跳ね震えが止まらなかったが




「ふむ
それでは、始めましょうか
紙とペンは持ってきましたか?」




アメシストは俺らの様子など関係なく、テーブルにドサッと本を置き、そう言った。




「あ、はい
瑠璃は座ってて
持ってくる」




俺が椅子から立とうとしていると、太陽が俺の肩に手を置いてそう言った。




「悪い」




「いいよ」




太陽が紙とペンを取りに行っている間、体の震えがまだ止まったわけじゃないがじっとアメシストを観察する
本当に綺麗な紫の髪と、瞳だ
ラスやアベンとはまた違ったイケメンで、声も一見美人顔とは想像もつかない程低い




「はぁ
何か付いてますか?」




あー、ジロジロ見すぎた




「いや、すみません」




無難に謝る




「・・そうですか」




何か言いたそうにしていたが何も言わず、俺から顔を反らして授業の準備を再開するアメシスト










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