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二章
戦力確認 前半
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雲一つない青空に、カッポカッポと音が響く。
とある休日。オレ達はいつものように三人で馬車に揺られていた。まあ、浮遊しているオレは揺れようがないんだが。
「双竜のお二方の家まで、もう少しですね」
「そうだね」
「ふふ。ちょっと楽しみだわ。お友達の家に遊びに行くのも久しぶりだもの」
「サラちゃん? 遊びに行くわけじゃないよ?」
オレの言葉にサラちゃんが口を尖らす。
「ぶー。わかってるわよ。でも、楽しみなものはしょうがないじゃない」
「主人の楽しい気分を害するなど、貴方は本当に従者ですか? 忠誠心の程度がわかりますね」
「ほほう? でも、遊びに行くわけじゃないのはホントだよ? なら、主人の認識を訂正するのも忠臣の務めじゃない?」
フローラさんの返答にニヤリと返す。が、彼女はすかさず返してくる。
「今日の目的は我々、魔人と戦うメンバーの戦力確認です。
そうなると、当然仲間内でのコミュニケーションも必要となります。過剰な興奮はご法度ですが、適量なら構いません。仏頂面していくよりも円滑に事が進むでしょう。後は、いかにそこに持っていくか。
この為、まずはお嬢様の意見に同意し、そこから少しずつ宥めていくのが正しいでしょう。貴方のようにいきなり気分を害するのは悪手でしょうね。
……何か反論はありますか?」
「……ありません」
ちくしょう……。そういえば、相手の意見に一度同意して、って方法は営業の時に教わったな。……いや、なんでメイドがそんな技術を活用してんだ。
「さっすがフローラね! そこまで出来るメイドはなかなかいないわ!」
「お褒めにあずかり光栄です。ほれ、貴方も私を褒めてみなさい」
「……流石はフローラさんです」
「ふむ。貴方に褒められても微塵も嬉しくありませんね。驚くほどに何も感じません」
「フローラさんはオレを罵倒する為なら、一分の隙も見逃さないよね……」
そうこうしているうちに、ゼルクさん達の家についた。が、辺りには金属音が響いている。音の出どころを探して裏の広場を覗くと案の定、王子達が訓練していた。
ゼルクさんは自分の体ほどもある大剣を。王子は幅広の剣を持っている。
「どうしたシル坊! クレア! もう息が上がったか! いい加減オレに一発いれねーと終わんねーぞ!!」
どうやらゼルクさんVS王子、クレアちゃんで模擬戦をしているようだ。
しかし、一発も入れられない? クレアちゃんの守護騎士の強さは先日も見た。それに、王子だってかなり強いはず。その二人同時に相手して? やっぱあの人化け物だな。
「はぁ、はぁ……。クレア!!」
「はい! ウンディーネ! お願い!!」
――ザバァッ――
「お?」
周囲から水が現れ、ゼルクさんが渦潮に囲まれる。その隙に王子が深く沈みこみ、真横から切りつける。
そうか。中でどんな体制をとっていようと、足元なら関係ない。渦潮の中にいるゼルクさんには、どこから斬られるかわからない。防ぎようがないだろう。
だがーー
――キィン!!――
「っ!?」
金属音!? でも、なんで足元から?
想定外の音に驚くが、斬りこんだ王子はもっと驚いたようだ。低い体制のまま、固まってしまう。
その瞬間、渦潮からゼルクさんが飛び出す。武器は一切持っておらず、丸腰だ。
「甘ぇっ!」
「なっ!?」
――ドガッ!!――
「嘘っ!?」
そのまま王子が殴り飛ばされる。どうやら渦潮の中、中央に大剣を差し、それを蹴って王子に飛びかかったらしい。
成程。渦潮に閉じ込めたことで、王子達も相手の姿が見えないのだ。中段ががら空きになる上段は反撃を喰らうリスクが高い。上段が使えないなら、王子の選択肢は中段突きか下段払い。だが、ゼルクさんは大剣だ。中段払いをされれば、吹き飛ばされる可能性がある。なら、下段払いしかない。
ゼルクさんはそこまで読み、地面に大剣を突き刺して跳躍した。あとは、下を見ておいて突き刺した大剣を足場にーー
いや、待て。それどんだけ跳躍したんだ? 2m近いあの体で? 化け物すぎんだろ……。
「ったく。相手の目を眩ますのはいい。だが、自分たちまで相手を見失ってどうすんだ。格上相手にそれは命取りだぞ」
「は、はい。すみません」
「兄貴、サラ嬢達が来たようだよ」
「お、じゃあ今日はここまでだな」
「「はい、ありがとうございました!」」
二人の言葉で訓練が終わる。ゲームの事を考えれば最終的にみんなゼルクさん並みに強くなるんだよね? ムキムキのクレアちゃんは想像したくないなぁ……。貴重な最弱仲間なのだ。一人で卒業してほしくない。
「お疲れ様です。ゼルク様は相変わらずの強さですね」
「おうフローラ。ありがとうよ。ま、まだまだ負けるわけにはいかねーさ。おめーもどうだ? シルヴァより強いんじゃねーか? お前?」
「どうでしょうね。流石にそれはないんじゃないでしょうか? それに伸びしろは比べ物になりませんよ」
「ダハハハハ!! それもそうか!!」
「クレア、お疲れ様」
「はぁ、はぁ。はぃ……ありがとうございます」
「……倒れそうね? 少し休んでから話をしましょうか。シルヴァ様も構いませんか?」
「ぐ……あぁ……すまない。そうさせてくれ……」
そうして休憩を取ってから、話に入る。今日はこちらの戦力の確認だ。
「さて。では、玉木の話を元に、3年後に予想される私たちの戦力を確認しようか」
「えぇ。玉木? 昨日見せてくれた一覧を出して?」
言われて紙を見せる。そこには、まだ未確認の攻略キャラ4人を含む、オレの知る8人の登場キャラの武器とスキルが記載されてある。
1.ゼルク
武器:大剣
スキル:タフネス
2.ゼリカ
武器:ハルバード
スキル:タフネス
3.クレア
武器:神鏡
スキル:???
補足:守護騎士は4種類
4.シルヴァ・グレイクス
武器:神剣
スキル;超広範囲攻撃
補足:メンバー中最高火力
5.カイウス・ヴォルク
武器:槍
スキル:なし
補足:1対1ならばメンバー中最強
6.ロイド・スコット
武器:弓
スキル:乗馬
補足:乗馬しながらの弓での攻撃が可能
7.スレイヤ・マークス
武器:ナイフ
スキル:索敵、盗み
補足:最も素早く、乱戦向き
8.メルク・ハーディ
武器:杖術
スキル:医術
補足:メンバー中最弱
「これが玉木の知る、最終決戦時のメンバーだそうです」
このメンバーはゼルクさん、ゼリカさん以外全員一年生。同学年のみだ。こうして見ると先輩キャラや後輩キャラはいないんだな。いや、確か後に出たゲームでゼルクさんが攻略キャラになったことがあった筈。もしも別学年のキャラがいるならそちらか? まぁ、そちらの方は知らないから今は保留だな。
このメンバーで最終戦を突破出来たことに変わりはない。
……ゲームのシナリオ通りなら、な。
「やはりカイウスもいるのか。彼はゼリカさんの弟子。腕も確かだ」
「ロイド様も、剣の授業で成績良かったですよね。なのに弓と乗馬なんですね。意外です」
「意外というならスレイヤ様やメルク様ね。あのお二人が戦いに加わる姿は想像つかないわ」
各々、メンバーについて所見を述べている。へぇ。オレはゲームのユニットとしてしか知らないからどんな性格の子なのかも知らないんだよな。ちょっと楽しみだな。
とある休日。オレ達はいつものように三人で馬車に揺られていた。まあ、浮遊しているオレは揺れようがないんだが。
「双竜のお二方の家まで、もう少しですね」
「そうだね」
「ふふ。ちょっと楽しみだわ。お友達の家に遊びに行くのも久しぶりだもの」
「サラちゃん? 遊びに行くわけじゃないよ?」
オレの言葉にサラちゃんが口を尖らす。
「ぶー。わかってるわよ。でも、楽しみなものはしょうがないじゃない」
「主人の楽しい気分を害するなど、貴方は本当に従者ですか? 忠誠心の程度がわかりますね」
「ほほう? でも、遊びに行くわけじゃないのはホントだよ? なら、主人の認識を訂正するのも忠臣の務めじゃない?」
フローラさんの返答にニヤリと返す。が、彼女はすかさず返してくる。
「今日の目的は我々、魔人と戦うメンバーの戦力確認です。
そうなると、当然仲間内でのコミュニケーションも必要となります。過剰な興奮はご法度ですが、適量なら構いません。仏頂面していくよりも円滑に事が進むでしょう。後は、いかにそこに持っていくか。
この為、まずはお嬢様の意見に同意し、そこから少しずつ宥めていくのが正しいでしょう。貴方のようにいきなり気分を害するのは悪手でしょうね。
……何か反論はありますか?」
「……ありません」
ちくしょう……。そういえば、相手の意見に一度同意して、って方法は営業の時に教わったな。……いや、なんでメイドがそんな技術を活用してんだ。
「さっすがフローラね! そこまで出来るメイドはなかなかいないわ!」
「お褒めにあずかり光栄です。ほれ、貴方も私を褒めてみなさい」
「……流石はフローラさんです」
「ふむ。貴方に褒められても微塵も嬉しくありませんね。驚くほどに何も感じません」
「フローラさんはオレを罵倒する為なら、一分の隙も見逃さないよね……」
そうこうしているうちに、ゼルクさん達の家についた。が、辺りには金属音が響いている。音の出どころを探して裏の広場を覗くと案の定、王子達が訓練していた。
ゼルクさんは自分の体ほどもある大剣を。王子は幅広の剣を持っている。
「どうしたシル坊! クレア! もう息が上がったか! いい加減オレに一発いれねーと終わんねーぞ!!」
どうやらゼルクさんVS王子、クレアちゃんで模擬戦をしているようだ。
しかし、一発も入れられない? クレアちゃんの守護騎士の強さは先日も見た。それに、王子だってかなり強いはず。その二人同時に相手して? やっぱあの人化け物だな。
「はぁ、はぁ……。クレア!!」
「はい! ウンディーネ! お願い!!」
――ザバァッ――
「お?」
周囲から水が現れ、ゼルクさんが渦潮に囲まれる。その隙に王子が深く沈みこみ、真横から切りつける。
そうか。中でどんな体制をとっていようと、足元なら関係ない。渦潮の中にいるゼルクさんには、どこから斬られるかわからない。防ぎようがないだろう。
だがーー
――キィン!!――
「っ!?」
金属音!? でも、なんで足元から?
想定外の音に驚くが、斬りこんだ王子はもっと驚いたようだ。低い体制のまま、固まってしまう。
その瞬間、渦潮からゼルクさんが飛び出す。武器は一切持っておらず、丸腰だ。
「甘ぇっ!」
「なっ!?」
――ドガッ!!――
「嘘っ!?」
そのまま王子が殴り飛ばされる。どうやら渦潮の中、中央に大剣を差し、それを蹴って王子に飛びかかったらしい。
成程。渦潮に閉じ込めたことで、王子達も相手の姿が見えないのだ。中段ががら空きになる上段は反撃を喰らうリスクが高い。上段が使えないなら、王子の選択肢は中段突きか下段払い。だが、ゼルクさんは大剣だ。中段払いをされれば、吹き飛ばされる可能性がある。なら、下段払いしかない。
ゼルクさんはそこまで読み、地面に大剣を突き刺して跳躍した。あとは、下を見ておいて突き刺した大剣を足場にーー
いや、待て。それどんだけ跳躍したんだ? 2m近いあの体で? 化け物すぎんだろ……。
「ったく。相手の目を眩ますのはいい。だが、自分たちまで相手を見失ってどうすんだ。格上相手にそれは命取りだぞ」
「は、はい。すみません」
「兄貴、サラ嬢達が来たようだよ」
「お、じゃあ今日はここまでだな」
「「はい、ありがとうございました!」」
二人の言葉で訓練が終わる。ゲームの事を考えれば最終的にみんなゼルクさん並みに強くなるんだよね? ムキムキのクレアちゃんは想像したくないなぁ……。貴重な最弱仲間なのだ。一人で卒業してほしくない。
「お疲れ様です。ゼルク様は相変わらずの強さですね」
「おうフローラ。ありがとうよ。ま、まだまだ負けるわけにはいかねーさ。おめーもどうだ? シルヴァより強いんじゃねーか? お前?」
「どうでしょうね。流石にそれはないんじゃないでしょうか? それに伸びしろは比べ物になりませんよ」
「ダハハハハ!! それもそうか!!」
「クレア、お疲れ様」
「はぁ、はぁ。はぃ……ありがとうございます」
「……倒れそうね? 少し休んでから話をしましょうか。シルヴァ様も構いませんか?」
「ぐ……あぁ……すまない。そうさせてくれ……」
そうして休憩を取ってから、話に入る。今日はこちらの戦力の確認だ。
「さて。では、玉木の話を元に、3年後に予想される私たちの戦力を確認しようか」
「えぇ。玉木? 昨日見せてくれた一覧を出して?」
言われて紙を見せる。そこには、まだ未確認の攻略キャラ4人を含む、オレの知る8人の登場キャラの武器とスキルが記載されてある。
1.ゼルク
武器:大剣
スキル:タフネス
2.ゼリカ
武器:ハルバード
スキル:タフネス
3.クレア
武器:神鏡
スキル:???
補足:守護騎士は4種類
4.シルヴァ・グレイクス
武器:神剣
スキル;超広範囲攻撃
補足:メンバー中最高火力
5.カイウス・ヴォルク
武器:槍
スキル:なし
補足:1対1ならばメンバー中最強
6.ロイド・スコット
武器:弓
スキル:乗馬
補足:乗馬しながらの弓での攻撃が可能
7.スレイヤ・マークス
武器:ナイフ
スキル:索敵、盗み
補足:最も素早く、乱戦向き
8.メルク・ハーディ
武器:杖術
スキル:医術
補足:メンバー中最弱
「これが玉木の知る、最終決戦時のメンバーだそうです」
このメンバーはゼルクさん、ゼリカさん以外全員一年生。同学年のみだ。こうして見ると先輩キャラや後輩キャラはいないんだな。いや、確か後に出たゲームでゼルクさんが攻略キャラになったことがあった筈。もしも別学年のキャラがいるならそちらか? まぁ、そちらの方は知らないから今は保留だな。
このメンバーで最終戦を突破出来たことに変わりはない。
……ゲームのシナリオ通りなら、な。
「やはりカイウスもいるのか。彼はゼリカさんの弟子。腕も確かだ」
「ロイド様も、剣の授業で成績良かったですよね。なのに弓と乗馬なんですね。意外です」
「意外というならスレイヤ様やメルク様ね。あのお二人が戦いに加わる姿は想像つかないわ」
各々、メンバーについて所見を述べている。へぇ。オレはゲームのユニットとしてしか知らないからどんな性格の子なのかも知らないんだよな。ちょっと楽しみだな。
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