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三章+
対抗戦 前半
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玉木達が幻覚魔人を発見した頃。
体育祭はつつがなく進行していた。
「さて、改めてルールの確認です。各選手の頭についた風船。
これを割られた者は失格となります。そして、勝利条件はリーダーの風船を割る事。
Aクラスはクレアさん。
Bクラスはロイド君がリーダーです」
実況からのルール説明を聞きながら、各選手の顔つきは緊張感のあるものに変わっている。
「まさかロイドが馬を用いてくるとはな……」
「そうですね。ですが、私たちは当初の作戦通りに進めるだけです。クレア? 問題ないわね?」
「はい! 任せてください!」
「ロイド。試合前に伝えてきたあの技。こちらの切り札になりえる。使うタイミングは任せるぞ」
「あぁ。けど、普通に撃った所で叩き落とされるのが関の山だよ」
「えぇ。ですから僕とカイウスさんで相手に隙を作ります。隙が出来次第、お願いします」
各チーム、最後の打ち合わせをしている。そんな選手たちを見て、解説席のゼルクがマイクを握る。
「おし、お前ら。準備は出来たようだな。開始のゴングはオレが出す。3、2、1、GOで開始だ。お前らの戦い、期待しているぞ」
「では、ゼルク様! 開始の合図をお願いします」
実況の少年が開始を促す。
「っし! 良いな? 観客のお前ら!! お前らも声を揃えろ! いくぞ、3、2、1」
「「……GO!!」」
ゼルクに合わせ、生徒達も声を揃える。
そして開始の合図を聞いて、各選手が動き出す。
「二人共、僕は右から行く!」
「あぁ! ロイド、任せるぞ! 行くぞメルク!」
「はい!」
「早速Bクラス! 動きを見せる!! どうやらロイド君と他二人で別々に動くようだ!」
「当然だね。折角の馬の機動力。活かさない手はない」
Bクラスが動き出す。だがーー
「クレア!」
「はい! 来て! ノーム!!」
クレアが守護騎士を召喚する。
「Aクラスも動きを見せる! 守護騎士の召喚をしたようだ!!」
「おぉ! あれが守護騎士か!!」
「でも結構小さいんだな」
「何が出来るんだ?」
生徒達も興味深々といった様子だ。そんな周囲を気にすることなく、クレアはノームに指示を出す。
「ノーム! お願い!!」
「はいです」
――ズズズズズ――
「「なっ!?」」
「なんと!? 会場に幾つもの土壁が現れた!? まるで迷宮のようだ!! そしてBクラス。ロイド君が完全に孤立してしまったぁ!!」
「ロイドは弓を持っているからな。射線を切る事はAクラスの急務だ」
「さて、そうなると分断されたBクラスはどう出るかね。しかし、解説席が高い位置にあってよかったよ。応援席の1段目じゃあ、壁に邪魔されて見えないだろうね」
そんなゼリカの言葉通り、観客席ではより見える場所へ行こうと大渋滞が起こっている。
「おい! 早く行けよ! 見えないんだよ!!」
「詰まってるんだよ! わざわざ観客席を用意した理由はこれかよ!!」
そんな観客席の様子を尻目に、Bクラスは冷静だ。
「メルク。下手に動くなよ」
「えぇ。多分、この壁の死角から狙ってきますよね」
「あぁ。それにノームは足音でこちらの居場所を把握出来たはず」
「そうですね。そうなると……向こうが痺れを切らすまで、我慢比べですね」
「Bクラス! 各員その場に留まっている! どうやらすぐには動かないようだ!!」
「そうだな。クレアはーーというか守護騎士は足音で相手の位置を補足出来る。Bクラスもそれはわかっているからな」
「成程! 下手に情報を与えたくないということですか!!」
「そうだね。そしてそうなると、次のAクラスの動きが重要だね」
Aクラスはクレアを中心に、彼女から指示を受けている。Bクラスの面々のいる場所をある程度は捕捉出来ているようだ。
「しかし……こんな事が出来るのなら、壁でBクラスを囲む事も出来たのでは?」
「お前の言う通り、出来たかもな。だが、Bクラスの面々も雑魚じゃない。下手に避けられたら、次の手が打てなくなるからな」
「クレアの守護騎士も無限に力を持っている訳じゃない。これだけの壁を作った以上、暫く他の動きは出来ないだろうね」
「成程! そうなると……うん。やはり、各チーム。どちらも今は我慢比べをするようです」
「Bクラスは下手に動けない。Aクラスは動かないほうが美味しい。クレアも休めて、相手にもプレッシャーを与えられて、一石二鳥だ」
「わかりました。観客席の皆さん! お伝えした通り、すぐに試合は動きません。落ち着いてゆっくり場所を確保してください!!」
そんな実況の言葉に、観客席も少し落ち着きを見せる。
そして暫くの静寂ののち、ついにAクラスが動く。
「おや? Aクラス。何か動きを見せるようです」
「マイクを通すアタシらの声は、選手にも聞こえる。アンタも試合を壊さないように言葉は選びなよ?」
「勿論です。さて、Aクラス、どのような動きを見せるのか。それとももう少し焦らすのか」
「フッ。師匠め。随分と気の利いたことを」
「でも、少し残念ですね。出てくるタイミングを知れたらかなり楽だったんですが」
「仕方あるまい。どの道、実戦でそんなことを教えてくれるやつはいないんだ」
「そうですね。覚悟を決めましょうか」
背中合わせにそんな話をしていると、一部の壁が動き、二人の横からシルヴァが姿を現した。
「おおっと!! Aクラス、殿下がカイウス君達に突っ込む!!」
「横からの奇襲か。悪くはないがーー」
「カイウス!!」
「シルヴァか!! メルク! お前は周囲を警戒しろ! サラ嬢が潜んでいるかもしれん! オレはこのままシルヴァを抑える!!」
「はい!」
そう言ってカイウスもシルヴァ目掛けて突っ込む。そして二人がぶつかる直前、シルヴァが声を上げる。
「クレア!!」
「「なっ!?」」
「おーっとぉ!? 殿下の足元がせり上がったぁ!!」
シルヴァの足元から壁が現れ、シルヴァを空に打ち上げる。Bクラスの二人はそれを目で追ってしまう。
「……っ!? しまった! よそ見をーー」
――パン!――
「カイウスさん!?」
せり上がった壁の背後から飛び出したサラの一突き。空を見ていたカイウスは反応が遅れてしまい、風船を割られてしまう。
「ふぅ。ようやく1本もらいましたよ。カイウス様」
「く……見事だ……。オレもまだまだ未熟だな……」
「なんと!? 最初の脱落者はカイウス君だぁ!!」
「お前さんの言った通り、カイウスはこの対抗戦のメンバーでは、1対1なら最強の男だ。だからこそ、まずはカイウスに狙いを絞ったんだろう」
「カイウスと張り合えるとしたらシルヴァくらいだ。だけどAクラスはそれを逆手に取ったんだろうね」
「カイウスも警戒していなかったわけじゃないんだろうが……ま、Aクラスの作戦勝ちだな」
「カイウスさん! っ!」
「メルク! お前の相手は私だ!!」
空からメルクに襲い掛かるシルヴァ。だがメルクの方も、なんとかいなして風船を守る。
「メルク君! 上空からの攻撃をなんとか凌いだ!!」
「やるねぇ。あぁいう場合、下にいる方が圧倒的に不利だ。上は頭を狙われにくい。その上相手の頭は狙いやすいからね」
「しかし……これは……」
「あぁ。そうだな。ただでさえシルヴァと1対1では分が悪い。それに加えてサラ嬢まで警戒しなければいけない。こりゃあメルクに勝ち目はねぇな」
実況と解説は共にBクラスの不利を悟る。
だが、そんな言葉を聞くメルクの表情は、未だに勝利を諦めてはいなかった。
体育祭はつつがなく進行していた。
「さて、改めてルールの確認です。各選手の頭についた風船。
これを割られた者は失格となります。そして、勝利条件はリーダーの風船を割る事。
Aクラスはクレアさん。
Bクラスはロイド君がリーダーです」
実況からのルール説明を聞きながら、各選手の顔つきは緊張感のあるものに変わっている。
「まさかロイドが馬を用いてくるとはな……」
「そうですね。ですが、私たちは当初の作戦通りに進めるだけです。クレア? 問題ないわね?」
「はい! 任せてください!」
「ロイド。試合前に伝えてきたあの技。こちらの切り札になりえる。使うタイミングは任せるぞ」
「あぁ。けど、普通に撃った所で叩き落とされるのが関の山だよ」
「えぇ。ですから僕とカイウスさんで相手に隙を作ります。隙が出来次第、お願いします」
各チーム、最後の打ち合わせをしている。そんな選手たちを見て、解説席のゼルクがマイクを握る。
「おし、お前ら。準備は出来たようだな。開始のゴングはオレが出す。3、2、1、GOで開始だ。お前らの戦い、期待しているぞ」
「では、ゼルク様! 開始の合図をお願いします」
実況の少年が開始を促す。
「っし! 良いな? 観客のお前ら!! お前らも声を揃えろ! いくぞ、3、2、1」
「「……GO!!」」
ゼルクに合わせ、生徒達も声を揃える。
そして開始の合図を聞いて、各選手が動き出す。
「二人共、僕は右から行く!」
「あぁ! ロイド、任せるぞ! 行くぞメルク!」
「はい!」
「早速Bクラス! 動きを見せる!! どうやらロイド君と他二人で別々に動くようだ!」
「当然だね。折角の馬の機動力。活かさない手はない」
Bクラスが動き出す。だがーー
「クレア!」
「はい! 来て! ノーム!!」
クレアが守護騎士を召喚する。
「Aクラスも動きを見せる! 守護騎士の召喚をしたようだ!!」
「おぉ! あれが守護騎士か!!」
「でも結構小さいんだな」
「何が出来るんだ?」
生徒達も興味深々といった様子だ。そんな周囲を気にすることなく、クレアはノームに指示を出す。
「ノーム! お願い!!」
「はいです」
――ズズズズズ――
「「なっ!?」」
「なんと!? 会場に幾つもの土壁が現れた!? まるで迷宮のようだ!! そしてBクラス。ロイド君が完全に孤立してしまったぁ!!」
「ロイドは弓を持っているからな。射線を切る事はAクラスの急務だ」
「さて、そうなると分断されたBクラスはどう出るかね。しかし、解説席が高い位置にあってよかったよ。応援席の1段目じゃあ、壁に邪魔されて見えないだろうね」
そんなゼリカの言葉通り、観客席ではより見える場所へ行こうと大渋滞が起こっている。
「おい! 早く行けよ! 見えないんだよ!!」
「詰まってるんだよ! わざわざ観客席を用意した理由はこれかよ!!」
そんな観客席の様子を尻目に、Bクラスは冷静だ。
「メルク。下手に動くなよ」
「えぇ。多分、この壁の死角から狙ってきますよね」
「あぁ。それにノームは足音でこちらの居場所を把握出来たはず」
「そうですね。そうなると……向こうが痺れを切らすまで、我慢比べですね」
「Bクラス! 各員その場に留まっている! どうやらすぐには動かないようだ!!」
「そうだな。クレアはーーというか守護騎士は足音で相手の位置を補足出来る。Bクラスもそれはわかっているからな」
「成程! 下手に情報を与えたくないということですか!!」
「そうだね。そしてそうなると、次のAクラスの動きが重要だね」
Aクラスはクレアを中心に、彼女から指示を受けている。Bクラスの面々のいる場所をある程度は捕捉出来ているようだ。
「しかし……こんな事が出来るのなら、壁でBクラスを囲む事も出来たのでは?」
「お前の言う通り、出来たかもな。だが、Bクラスの面々も雑魚じゃない。下手に避けられたら、次の手が打てなくなるからな」
「クレアの守護騎士も無限に力を持っている訳じゃない。これだけの壁を作った以上、暫く他の動きは出来ないだろうね」
「成程! そうなると……うん。やはり、各チーム。どちらも今は我慢比べをするようです」
「Bクラスは下手に動けない。Aクラスは動かないほうが美味しい。クレアも休めて、相手にもプレッシャーを与えられて、一石二鳥だ」
「わかりました。観客席の皆さん! お伝えした通り、すぐに試合は動きません。落ち着いてゆっくり場所を確保してください!!」
そんな実況の言葉に、観客席も少し落ち着きを見せる。
そして暫くの静寂ののち、ついにAクラスが動く。
「おや? Aクラス。何か動きを見せるようです」
「マイクを通すアタシらの声は、選手にも聞こえる。アンタも試合を壊さないように言葉は選びなよ?」
「勿論です。さて、Aクラス、どのような動きを見せるのか。それとももう少し焦らすのか」
「フッ。師匠め。随分と気の利いたことを」
「でも、少し残念ですね。出てくるタイミングを知れたらかなり楽だったんですが」
「仕方あるまい。どの道、実戦でそんなことを教えてくれるやつはいないんだ」
「そうですね。覚悟を決めましょうか」
背中合わせにそんな話をしていると、一部の壁が動き、二人の横からシルヴァが姿を現した。
「おおっと!! Aクラス、殿下がカイウス君達に突っ込む!!」
「横からの奇襲か。悪くはないがーー」
「カイウス!!」
「シルヴァか!! メルク! お前は周囲を警戒しろ! サラ嬢が潜んでいるかもしれん! オレはこのままシルヴァを抑える!!」
「はい!」
そう言ってカイウスもシルヴァ目掛けて突っ込む。そして二人がぶつかる直前、シルヴァが声を上げる。
「クレア!!」
「「なっ!?」」
「おーっとぉ!? 殿下の足元がせり上がったぁ!!」
シルヴァの足元から壁が現れ、シルヴァを空に打ち上げる。Bクラスの二人はそれを目で追ってしまう。
「……っ!? しまった! よそ見をーー」
――パン!――
「カイウスさん!?」
せり上がった壁の背後から飛び出したサラの一突き。空を見ていたカイウスは反応が遅れてしまい、風船を割られてしまう。
「ふぅ。ようやく1本もらいましたよ。カイウス様」
「く……見事だ……。オレもまだまだ未熟だな……」
「なんと!? 最初の脱落者はカイウス君だぁ!!」
「お前さんの言った通り、カイウスはこの対抗戦のメンバーでは、1対1なら最強の男だ。だからこそ、まずはカイウスに狙いを絞ったんだろう」
「カイウスと張り合えるとしたらシルヴァくらいだ。だけどAクラスはそれを逆手に取ったんだろうね」
「カイウスも警戒していなかったわけじゃないんだろうが……ま、Aクラスの作戦勝ちだな」
「カイウスさん! っ!」
「メルク! お前の相手は私だ!!」
空からメルクに襲い掛かるシルヴァ。だがメルクの方も、なんとかいなして風船を守る。
「メルク君! 上空からの攻撃をなんとか凌いだ!!」
「やるねぇ。あぁいう場合、下にいる方が圧倒的に不利だ。上は頭を狙われにくい。その上相手の頭は狙いやすいからね」
「しかし……これは……」
「あぁ。そうだな。ただでさえシルヴァと1対1では分が悪い。それに加えてサラ嬢まで警戒しなければいけない。こりゃあメルクに勝ち目はねぇな」
実況と解説は共にBクラスの不利を悟る。
だが、そんな言葉を聞くメルクの表情は、未だに勝利を諦めてはいなかった。
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