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三章+
幕間 男子会2
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日も沈んで半刻程経ったころ。街の小さな酒場に火が灯り、剛気な声が響く。
「お前ら! 今日はオレの奢りだ! 好きなだけ食え! 乾杯!」
「「乾杯!」」
今日はロイド君の歓迎会ということで、前回と同じ店を貸し切っている。まぁ、体育祭の時のメルク君の励まし会でもあるが、そこには誰も触れない。本人が言わない以上、こちらも黙っていた方が良いだろう。
「しかし、対抗戦のロイドは見事だったな。アレはオレやゼリカでも見た事がない技だった」
「そうですね。まさかあんな撃ち方をされるとは思いませんでした。油断はしていなかったのですが、あそこまで追い込んで負けるとは……」
「ふふ……。君達から一本取れたのは嬉しいな。まぁ、実はアレーー玉木君のお陰なんだけどね」
「玉木さんの? どういうことですか?」
「僕の矢に細工した学生がいた事は話したろう? あの時に玉木君に言われたんだよ。『意図して曲げられないか』って。その後に色々と試していたら、曲がる法則がなんとなく分かってね」
「……それが何となく分かるのはお前くらいのものだぞ? ただまぁ、すぐに倒されたオレとしては、戦犯にならずに済んでホッとしたがな」
『カイウス君。君だけは今回、良いとこ無しだったもんね?』
「……わかるぞ? 玉木。お前今めちゃくちゃニヤついているだろう?」
カイウス君め、人聞きの悪い事を。オレがそんな表情をする訳ないだろう。
『ニヤついてなんていないよ。満面の笑みはしてるけど』
「なおタチが悪いわ!!」
「玉木。そもそも、ロイドにだけアドバイスするのは不公平じゃないか?」
ん? シルヴァ君は何やら不満げだな。アドバイスになったのはただの偶然なんだけどな。けど、
『おやおや? シルヴァ君は負けた理由を人の所為にするのかい?』
「くっ! お前……。さては先日の事を根に持っているな!?」
やれやれ。シルヴァ君は何を言っているんだ。
確かにこのあいだ。オレはゼルクさんに投げられまくった。だというのに、誰も助けてくれなかった。
だがね? このオレがそんな小さな事に拘る訳がないだろう。
「ピッピィ~♪」
「「ワザとらしい否定をするんじゃない!!」」
「ダハハハハ! ホントに仲良くなったもんだな」
「ホントですね。それにしても玉木さんって、シルヴァ様が最初に話してた通り、仲良くなると話しやすいですよね」
「そうだね。初めて見た時は少し怖かったんだけどね」
「ダハハ! 少し怖いくらいなら良いじゃねぇか。オレとシルヴァなんざ、最初はサラ嬢の命を狙う魔人って認識だったからな。警戒どころか敵対心まであったんだぜ?
それが今や命の恩人で仲間なんだからな。世の中不思議なもんだ」
「僕もそうですね。マリアも僕も、こうして無事でいられるのは、間違いなく玉木さんのお陰ですから」
「なんだかんだで僕もそうだね。僕も対抗戦の時だけじゃない。そもそもエレナと仲直り出来た事も、色々と話を聞いていると、彼の影響が強いみたいだからね」
「そういえば、ロイドは最近エレナ嬢に親切だな」
オレとカイウス君とのコントを終え、シルヴァ君が話しかける。
「勿論だよ。僕は彼女を散々傷付けたからね。僕に出来る贖罪ならなんでもするさ」
そうか。それを聞いたらきっと彼女も喜ぶだろーー
「例えば、彼女が誰かに恋をしたとしたら、僕は喜んでその恋を応援するよ」
……は? ロイド君、何言ってんの?
思わず固まってしまうが、戸惑っているのは他の皆んなも同じようだ。
「ロ、ロイドさん? エレナさんには好きな人がいないんですか?」
「そうだね。彼女にはそんな素振りは無い。
仕方ない。僕のせいでずっと苦しんでいたからね。恋愛なんて二の次だったんだろう。
だから迷惑をかけたお詫びに、彼女に想い人が出来た時はーー婚約破棄をした上で、彼女の実家の援助をするつもりだよ。幸か不幸か、僕にはそれだけの資金を得られる能力があるからね」
そう言って寂しげに笑う。
いやいや、何言ってんだ。エレナちゃんがロイド君を好きなのは一目瞭然じゃないか。君、元女タラシだろう? 女性の機微には敏感な筈じゃないの? 何を鈍感系主人公みたいな事を……
「師匠? ロイドのコレってーー」
「多分、エレナ嬢への罪悪感が強すぎるんだろうな」
「罪悪感? ということはつまり……あんな酷いことをした自分に惚れる筈が無いと……? そんなバカなことがーー」
「カイウス。アイツの曇りなき眼を見てみろ。アレはシルヴァと違って、完全に気づいてねぇ。
恐らく、普通なら脈アリにしか見えない行動も、今のロイドには受け入れられないんじゃ無いか?」
「エレナさん……最近ロイドさんに優しくしてもらう度に幸せそうでしたよね?」
「そうだな。つまり……エレナ嬢も自分の気持ちが伝わっていない事に、一切気づいていない可能性が高いな」
うわぁ……。エレナちゃん、二重に可愛そうな事になってんな……
『これ……オレ達が伝えるべきですかね?』
「いや……。多分、ロイドの中でエレナ嬢への贖罪が終わるまで、オレ達の言には耳を傾けないんじゃないか?」
「エレナ嬢に伝えるのは?」
「シルヴァ……。ずっと苦しんいでたエレナ嬢は今、ようやく幸せそうな顔をしているんだ。お前はその顔を再び曇らせることが出来るか?」
「……そうですね」
なる程。これは詰んだな。オレたちに出来る事はもう何もない。
「皆? 僕をノケモノにしてコソコソと話をしないでくれないかい?」
「いや、そういう訳ではないんだが……。
まぁ、あれだ。ロイドはエレナ嬢と仲良くな?」
「勿論です。僕はもう、2度と彼女を傷付けませんよ」
あ、うん。そうだね。
「……なんか、エレナさんにシンパシーを感じますね……」
メルク君が哀愁を漂わせて呟く。そうだよね。君の婚約者も大概だもんね。体育祭での話を聞いた時はオレも言葉が無かったもの。今のエレナちゃんに仲間意識を感じるのも当然だよね。
「あー……。なんだ、その……。
メルク。今日は思いっきり呑んでいいぞ? そう思って今日は多めに支払ってるからな」
「ちょっ!? イヤですよ! もうあんな事はーー」
「何の話だい?」
「ロイド。お前もいずれ知る事になるから言うが、メルクは酔うと人格が変わるんだ」
「カイウスさん!? やめて下さい!僕は今日はもう呑みませんよ!」
「前回は止めるのに時間がかかったからな。だが、今回はカイウスも無事だしロイドもいる。前回以上の速度で抑えてみせるから問題ないぞ?」
「シルヴァ様が問題無くても僕がイヤですよ!」
『オレもいつでも水を飲ませられるよう、こうして側に水差しを持ってるからね』
「持ってるから何なんですか!? 意地でも呑みませんからね!?」
「……そこまで言われると見てみたいね……」
「ロイドさん!? やめて下さい! 酒瓶片手に近づかないでください!」
その後、絶対に酔いたくないメルク君と、酔わせてみたいロイド君とで一悶着あった。だが、メルク君がこれ以上の飲酒を回避出来たことで、今回の男子会はつつがなく終われた。
しかしその代わりに前回の詳細をロイド君に話すこととなった。メルク君のトラウマが少し深くなった気もするが、気のせいという事にしておこう。
「お前ら! 今日はオレの奢りだ! 好きなだけ食え! 乾杯!」
「「乾杯!」」
今日はロイド君の歓迎会ということで、前回と同じ店を貸し切っている。まぁ、体育祭の時のメルク君の励まし会でもあるが、そこには誰も触れない。本人が言わない以上、こちらも黙っていた方が良いだろう。
「しかし、対抗戦のロイドは見事だったな。アレはオレやゼリカでも見た事がない技だった」
「そうですね。まさかあんな撃ち方をされるとは思いませんでした。油断はしていなかったのですが、あそこまで追い込んで負けるとは……」
「ふふ……。君達から一本取れたのは嬉しいな。まぁ、実はアレーー玉木君のお陰なんだけどね」
「玉木さんの? どういうことですか?」
「僕の矢に細工した学生がいた事は話したろう? あの時に玉木君に言われたんだよ。『意図して曲げられないか』って。その後に色々と試していたら、曲がる法則がなんとなく分かってね」
「……それが何となく分かるのはお前くらいのものだぞ? ただまぁ、すぐに倒されたオレとしては、戦犯にならずに済んでホッとしたがな」
『カイウス君。君だけは今回、良いとこ無しだったもんね?』
「……わかるぞ? 玉木。お前今めちゃくちゃニヤついているだろう?」
カイウス君め、人聞きの悪い事を。オレがそんな表情をする訳ないだろう。
『ニヤついてなんていないよ。満面の笑みはしてるけど』
「なおタチが悪いわ!!」
「玉木。そもそも、ロイドにだけアドバイスするのは不公平じゃないか?」
ん? シルヴァ君は何やら不満げだな。アドバイスになったのはただの偶然なんだけどな。けど、
『おやおや? シルヴァ君は負けた理由を人の所為にするのかい?』
「くっ! お前……。さては先日の事を根に持っているな!?」
やれやれ。シルヴァ君は何を言っているんだ。
確かにこのあいだ。オレはゼルクさんに投げられまくった。だというのに、誰も助けてくれなかった。
だがね? このオレがそんな小さな事に拘る訳がないだろう。
「ピッピィ~♪」
「「ワザとらしい否定をするんじゃない!!」」
「ダハハハハ! ホントに仲良くなったもんだな」
「ホントですね。それにしても玉木さんって、シルヴァ様が最初に話してた通り、仲良くなると話しやすいですよね」
「そうだね。初めて見た時は少し怖かったんだけどね」
「ダハハ! 少し怖いくらいなら良いじゃねぇか。オレとシルヴァなんざ、最初はサラ嬢の命を狙う魔人って認識だったからな。警戒どころか敵対心まであったんだぜ?
それが今や命の恩人で仲間なんだからな。世の中不思議なもんだ」
「僕もそうですね。マリアも僕も、こうして無事でいられるのは、間違いなく玉木さんのお陰ですから」
「なんだかんだで僕もそうだね。僕も対抗戦の時だけじゃない。そもそもエレナと仲直り出来た事も、色々と話を聞いていると、彼の影響が強いみたいだからね」
「そういえば、ロイドは最近エレナ嬢に親切だな」
オレとカイウス君とのコントを終え、シルヴァ君が話しかける。
「勿論だよ。僕は彼女を散々傷付けたからね。僕に出来る贖罪ならなんでもするさ」
そうか。それを聞いたらきっと彼女も喜ぶだろーー
「例えば、彼女が誰かに恋をしたとしたら、僕は喜んでその恋を応援するよ」
……は? ロイド君、何言ってんの?
思わず固まってしまうが、戸惑っているのは他の皆んなも同じようだ。
「ロ、ロイドさん? エレナさんには好きな人がいないんですか?」
「そうだね。彼女にはそんな素振りは無い。
仕方ない。僕のせいでずっと苦しんでいたからね。恋愛なんて二の次だったんだろう。
だから迷惑をかけたお詫びに、彼女に想い人が出来た時はーー婚約破棄をした上で、彼女の実家の援助をするつもりだよ。幸か不幸か、僕にはそれだけの資金を得られる能力があるからね」
そう言って寂しげに笑う。
いやいや、何言ってんだ。エレナちゃんがロイド君を好きなのは一目瞭然じゃないか。君、元女タラシだろう? 女性の機微には敏感な筈じゃないの? 何を鈍感系主人公みたいな事を……
「師匠? ロイドのコレってーー」
「多分、エレナ嬢への罪悪感が強すぎるんだろうな」
「罪悪感? ということはつまり……あんな酷いことをした自分に惚れる筈が無いと……? そんなバカなことがーー」
「カイウス。アイツの曇りなき眼を見てみろ。アレはシルヴァと違って、完全に気づいてねぇ。
恐らく、普通なら脈アリにしか見えない行動も、今のロイドには受け入れられないんじゃ無いか?」
「エレナさん……最近ロイドさんに優しくしてもらう度に幸せそうでしたよね?」
「そうだな。つまり……エレナ嬢も自分の気持ちが伝わっていない事に、一切気づいていない可能性が高いな」
うわぁ……。エレナちゃん、二重に可愛そうな事になってんな……
『これ……オレ達が伝えるべきですかね?』
「いや……。多分、ロイドの中でエレナ嬢への贖罪が終わるまで、オレ達の言には耳を傾けないんじゃないか?」
「エレナ嬢に伝えるのは?」
「シルヴァ……。ずっと苦しんいでたエレナ嬢は今、ようやく幸せそうな顔をしているんだ。お前はその顔を再び曇らせることが出来るか?」
「……そうですね」
なる程。これは詰んだな。オレたちに出来る事はもう何もない。
「皆? 僕をノケモノにしてコソコソと話をしないでくれないかい?」
「いや、そういう訳ではないんだが……。
まぁ、あれだ。ロイドはエレナ嬢と仲良くな?」
「勿論です。僕はもう、2度と彼女を傷付けませんよ」
あ、うん。そうだね。
「……なんか、エレナさんにシンパシーを感じますね……」
メルク君が哀愁を漂わせて呟く。そうだよね。君の婚約者も大概だもんね。体育祭での話を聞いた時はオレも言葉が無かったもの。今のエレナちゃんに仲間意識を感じるのも当然だよね。
「あー……。なんだ、その……。
メルク。今日は思いっきり呑んでいいぞ? そう思って今日は多めに支払ってるからな」
「ちょっ!? イヤですよ! もうあんな事はーー」
「何の話だい?」
「ロイド。お前もいずれ知る事になるから言うが、メルクは酔うと人格が変わるんだ」
「カイウスさん!? やめて下さい!僕は今日はもう呑みませんよ!」
「前回は止めるのに時間がかかったからな。だが、今回はカイウスも無事だしロイドもいる。前回以上の速度で抑えてみせるから問題ないぞ?」
「シルヴァ様が問題無くても僕がイヤですよ!」
『オレもいつでも水を飲ませられるよう、こうして側に水差しを持ってるからね』
「持ってるから何なんですか!? 意地でも呑みませんからね!?」
「……そこまで言われると見てみたいね……」
「ロイドさん!? やめて下さい! 酒瓶片手に近づかないでください!」
その後、絶対に酔いたくないメルク君と、酔わせてみたいロイド君とで一悶着あった。だが、メルク君がこれ以上の飲酒を回避出来たことで、今回の男子会はつつがなく終われた。
しかしその代わりに前回の詳細をロイド君に話すこととなった。メルク君のトラウマが少し深くなった気もするが、気のせいという事にしておこう。
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