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三章+
幕間 父と使い魔
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「……以上が体育祭でのあらましです」
「ふむ……。そうか……」
サラちゃんがお父さんに体育祭での出来事を説明している。
神鏡の力のPRに成功した事、対抗戦の結果。そして、魔人との遭遇についてだ。
サラちゃんのお父さん……いや、もうめんどくさいからパパさんでいいや。パパさんにはドゥークの冤罪以降、魔人関連の話は逐一報告している。
シルヴァ君のお陰で王家の力は借りられる。だが、そもそも魔人には国中の力を集結させて立ち向かわなければならない。そして、貴族の中でも特に大きな力を持つ公爵家。その当主である彼の力は今後、絶対に必要になる筈だ。
「報告ありがとう。しかし、洗脳魔人や幻覚魔人だけでも厄介だというのに……。つくづく魔人の力とは恐ろしいものだな」
「そうですね。もし、彼らがその気になっていれば、体育祭で数多くの生徒達が虐殺されたでしょう」
「あぁ。玉木君の知識があるとは言え、油断出来んな。現状はもう、彼の知っている展開とはまるで違うものだろうからな」
眉間の皺を寄せるパパさん。
そうなんだよな。もうオレの知っている展開とは別物の筈。
ゲームでも、1年目の対抗戦の時に偵察に来ていたのかもしれない。
けれど、皆の強さが今とゲームとでは全然違う。その上、オレの存在についても認知されてしまった。そうなると、ゲームに比べてヤツらの警戒度は格段に上がっている筈。
能力持ちの魔人とは、多少の例外はあっても基本的に1人ずつ戦っていた。
けれど、それはゲームでの話。ゲームでは油断していたとしたら? その場合、今後は一度に数人を相手取る事もあり得る。
そうなれば、3年後の戦いの難易度は大きく跳ね上がってしまう。
最終的に皆がゲームに比べてどこまで強くなるかは分からない。けれど、ゲームの皆が努力しなかったとも思えない。そして才能が同じである以上、それほど大きな差は付かないのだろう。
……ホントに頭が痛くなるな……
だが、頭を抱えるオレを尻目にサラちゃんが口を開く。
「えぇ。確かに玉木の知っているものとは大きく異なるかもしれません。
ですがそもそも、玉木がいなければシルフォード家自体が存続していませんでした」
「……そうだな。我々が今こうしていられるのは間違いなく玉木君のお陰だ」
「なら、玉木が干渉した結果をどれだけプラスに出来るかは、本来生存していなかった私達次第。つまり、国を守る為には私達の働きが最も重要だと言っても過言ではありません。
なればこそ、出来ることを全力でやるだけです」
強い目で父に覚悟を伝える。いや、多分オレとフローラさんにも言っている。
本当にこの娘は頼もしい。
でも、その通りだ。どれだけゲームと変わろうと、結局やるべき事をやるしかないんだ。
「……そうだな。すまない。弱気になった」
「弱気にならない人間などおりません。特にお父様は私と違って、弱音を吐ける相手も少ないでしょう。今の私では力不足でしょうが、それでも頼れる時には頼ってください」
「全く……。娘にここまで言われるとは不甲斐ないものだ……。
だが、ありがとうサラ。お前の父である事、誇りに思うよ」
「お互い様です、お父様」
「ところでサラ。お前、あのネックレスは付けているか?」
ネックレス? あ、そういえばサラちゃんはいつも首につけていたな。
「はい。勿論です」
そう言って首元からネックレスを見せる。勾玉の付いたシンプルなデザインだ。
最初はドレスに勾玉ネックレス? とも思ったものだが、シンプルなデザインだからか、存外違和感がない。
「うむ。それは常に身につけておけよ」
「はい」
なんだろう? そんなに重要なものなのかな?
頭に?マークを浮かべていると、隣に立つフローラさんが2人に声をかけてくれる。
「旦那様、お嬢様。玉木が不思議そうな顔をしております」
「あ、そっか。玉木は知らないわよね。
お父様? このネックレスの説明を玉木にしても良いですか?」
「うん? やはり玉木君もここにいるのか。なら、私から説明しよう」
「え?」
「いや、玉木君とはキチンと会話した事が無かったからな。今更ではあるが、改めて挨拶もしておきたい」
「そうですか。では、私とフローラは退室した方が良いでしょうか?」
「ん? そんな事は…………。いや、そうだな。それがいいか。一対一で話す機会など、そうそう無いからな」
「分かりました。では、私達はこれで」
そう言って2人は退室し、部屋にはオレとパパさんだけになる。え? 何この状況?
「さて、玉木君。悪いが鏡の前に来てくれないか? 一応、顔を見て会話したい」
「ピッ!」
言われるがまま、鏡に姿を写す。
戸惑いもあるが、この人の言うように一対一で話す機会などそうそう無い。せっかくの機会だ。腹を割って話そう。
「玉木君。まず、君には礼を言いそびれていたね。
娘を助けてくれて、本当にありがとう」
背筋を伸ばし、オレに頭を下げてくる。
……公爵家当主である彼が頭を下げるという事がどれだけのものか、想像に難くない。
が、この際取り繕うような真似はせず、思った事を素直に書くべきだろう。
『いえいえ。オレも娘さんには色々とお世話になっています。最近は他の貴族を見かける事も多いです。だからこそ、召喚主が彼女で良かったと、心から思いますよ』
「そうか。あの娘も君を信頼しているようだ。これからも私達に力を貸して欲しい」
「ピッ!!」
首を大きく縦に振り、力強く笛を吹く。
サラちゃんはオレの主だ。ただ、そもそもオレは彼女の事が好きだ。その上、オレの事を兄とまで言ってくれた。
だからこそ、オレに出来る事ならなんだってやってやる。
そんなオレの姿を見て、嬉しそうなパパさんが言葉を続ける。
「フフ……。頼もしいな。さて、先程のネックレスについてだ。アレはシルフォード家の家宝なのだ」
「ピィ?」
「500年前、この国を建国したグレイクス国王が魔人を滅ぼしたのは知っているか?」
「ピッ!」
「アレはその後に、国王からシルフォード家の当主に渡されたものとされている。なんでも、大きな力を持つ武器なのだそうだ」
大きな力を持つ武器? ゲームでのサラちゃんとの戦いではそんなものはなかったと思うが……ストーリーで何か明記があったんだろうか?
考え込むオレを見て、パパさんが残念そうに口を開く。
「……ふむ、君も知らないか……。アレは5年前にサラの誕生日に渡したのだが、500年前にどのように使われたのかが分からなくてな。今やただのネックレスと化している」
『何故その話をオレに?』
「実はな……。ドゥークは私ではなく、サラを嵌めただろう? あの時はよく分からなかったが……ひょっとして、あのネックレスが関係するかもしれないと思ってな」
なる程。シルヴァ君やゼリカさんも言ってたな。あの事件、シルフォード家よりもサラちゃんを狙ったかのようだと。それに、透明魔人もサラちゃんに魔人召喚をさせることは計画の内だと言っていた。
だけど……ゲームは全ルートやったけど、そんなモノは戦闘シーンでは見かけてない。
そもそもゲームでのサラちゃんは「共通ルートのボス」というだけで、それ以降戦う事はない。
……分からないな……
『すみません。やはり覚えがありません。ただ、先程の話は頭に入れておきます。サラちゃんはこの話を?』
「いや、その……。アレが家宝だとは伝えているのだがな……。アレを渡したのは私だ。つまり……」
何の気無しに聞いた質問だったが、かなり歯切れの悪い回答が返ってきた。
まあ、そうだよな。自分が渡したネックレスのせいで死ぬ所だったなんて言いづらいわな。
『わかりました。ですが、オレの知識に無い以上、サラちゃん達とも情報を共有し、考察する必要があります。
ですのでこの話については、オレの方から伝えておきます』
「仕方ないか……。確かに君の言う通りだ」
バツの悪そうな顔で俯くパパさん。まぁ気持ちは分かる。が、無用な心配だろう。
『心配しなくても大丈夫ですよ。貴方の愛は娘さんにもきちんと伝わっていますから』
「そうか……。すまない。気を遣わせたな」
パパさんの緊張が少しだけ緩んだ。まぁ、彼女は気にしないだろうが、どうしても渡した本人としてはな。特に彼の場合はサラちゃんを大事に思っているから余計だろう。
さて、そろそろ退室しようかな。
……と考えたところで、パパさんが思い出したような顔で口を開く。
「ところで玉木君。君はフローラとはどこまでいったんだ?」
ん? 急に何のことだろう?
「ピィ?」
「いや、君とフローラが仲睦まじいと聞いてね。勿論私も祝福する。だけど、君達は大人でもサラはまだ子供だ。今はまだ、あの娘の前であまり過激な事はーー」
「ピッ! ピィィィィィィ!!!」
屋敷中に笛の音が鳴り響く。
「うわっ!? なんだ急に!?」
パパさんからすれば唐突に鳴らしたように聞こえるだろう。だがそもそもーー
『こちらのセリフです! どうしてそんな事になるんですか! オレたちにそんな感情はありません!!』
「えぇ……? だが、君についてはサラから『フローラが唯一感情を見せる相手』だと聞いているんだが……」
いや、間違ってないかもだけど! 直接罵倒されるのはオレくらいだけど!
「それに先日はフローラとずっと2人きりだったとか……」
警備の為にね!? 貴方の娘さんを守る為ですよ!?
「その上ガスク討伐の数日後、君から『抱きしめてあげる』とまで言ったそうじゃないか」
いやまぁ確かにあの時は冗談で言ったけども! サラちゃん泣いてたしフローラさんもバツが悪そうだったからね!? ていうかサラちゃんどんな報告してんの!? お茶目にも程があるよ!
もしもパパさんに誤解されたまま正式に祝福されたらどうなる? 彼は公爵家当主だ。当然、その言葉は国中に知れ渡る。そうなったらもう、オレもフローラさんも否定しきれなくなる。
外堀を埋めて……どころの話じゃないぞ!?
『違います!! 一つずつ説明しますから、キチンと聞いてくださいね!?』
その後、必死の説明で何とか納得させ、フローラさんと2人でサラちゃんを叱る事になったのはまた、別の機会に……
「ふむ……。そうか……」
サラちゃんがお父さんに体育祭での出来事を説明している。
神鏡の力のPRに成功した事、対抗戦の結果。そして、魔人との遭遇についてだ。
サラちゃんのお父さん……いや、もうめんどくさいからパパさんでいいや。パパさんにはドゥークの冤罪以降、魔人関連の話は逐一報告している。
シルヴァ君のお陰で王家の力は借りられる。だが、そもそも魔人には国中の力を集結させて立ち向かわなければならない。そして、貴族の中でも特に大きな力を持つ公爵家。その当主である彼の力は今後、絶対に必要になる筈だ。
「報告ありがとう。しかし、洗脳魔人や幻覚魔人だけでも厄介だというのに……。つくづく魔人の力とは恐ろしいものだな」
「そうですね。もし、彼らがその気になっていれば、体育祭で数多くの生徒達が虐殺されたでしょう」
「あぁ。玉木君の知識があるとは言え、油断出来んな。現状はもう、彼の知っている展開とはまるで違うものだろうからな」
眉間の皺を寄せるパパさん。
そうなんだよな。もうオレの知っている展開とは別物の筈。
ゲームでも、1年目の対抗戦の時に偵察に来ていたのかもしれない。
けれど、皆の強さが今とゲームとでは全然違う。その上、オレの存在についても認知されてしまった。そうなると、ゲームに比べてヤツらの警戒度は格段に上がっている筈。
能力持ちの魔人とは、多少の例外はあっても基本的に1人ずつ戦っていた。
けれど、それはゲームでの話。ゲームでは油断していたとしたら? その場合、今後は一度に数人を相手取る事もあり得る。
そうなれば、3年後の戦いの難易度は大きく跳ね上がってしまう。
最終的に皆がゲームに比べてどこまで強くなるかは分からない。けれど、ゲームの皆が努力しなかったとも思えない。そして才能が同じである以上、それほど大きな差は付かないのだろう。
……ホントに頭が痛くなるな……
だが、頭を抱えるオレを尻目にサラちゃんが口を開く。
「えぇ。確かに玉木の知っているものとは大きく異なるかもしれません。
ですがそもそも、玉木がいなければシルフォード家自体が存続していませんでした」
「……そうだな。我々が今こうしていられるのは間違いなく玉木君のお陰だ」
「なら、玉木が干渉した結果をどれだけプラスに出来るかは、本来生存していなかった私達次第。つまり、国を守る為には私達の働きが最も重要だと言っても過言ではありません。
なればこそ、出来ることを全力でやるだけです」
強い目で父に覚悟を伝える。いや、多分オレとフローラさんにも言っている。
本当にこの娘は頼もしい。
でも、その通りだ。どれだけゲームと変わろうと、結局やるべき事をやるしかないんだ。
「……そうだな。すまない。弱気になった」
「弱気にならない人間などおりません。特にお父様は私と違って、弱音を吐ける相手も少ないでしょう。今の私では力不足でしょうが、それでも頼れる時には頼ってください」
「全く……。娘にここまで言われるとは不甲斐ないものだ……。
だが、ありがとうサラ。お前の父である事、誇りに思うよ」
「お互い様です、お父様」
「ところでサラ。お前、あのネックレスは付けているか?」
ネックレス? あ、そういえばサラちゃんはいつも首につけていたな。
「はい。勿論です」
そう言って首元からネックレスを見せる。勾玉の付いたシンプルなデザインだ。
最初はドレスに勾玉ネックレス? とも思ったものだが、シンプルなデザインだからか、存外違和感がない。
「うむ。それは常に身につけておけよ」
「はい」
なんだろう? そんなに重要なものなのかな?
頭に?マークを浮かべていると、隣に立つフローラさんが2人に声をかけてくれる。
「旦那様、お嬢様。玉木が不思議そうな顔をしております」
「あ、そっか。玉木は知らないわよね。
お父様? このネックレスの説明を玉木にしても良いですか?」
「うん? やはり玉木君もここにいるのか。なら、私から説明しよう」
「え?」
「いや、玉木君とはキチンと会話した事が無かったからな。今更ではあるが、改めて挨拶もしておきたい」
「そうですか。では、私とフローラは退室した方が良いでしょうか?」
「ん? そんな事は…………。いや、そうだな。それがいいか。一対一で話す機会など、そうそう無いからな」
「分かりました。では、私達はこれで」
そう言って2人は退室し、部屋にはオレとパパさんだけになる。え? 何この状況?
「さて、玉木君。悪いが鏡の前に来てくれないか? 一応、顔を見て会話したい」
「ピッ!」
言われるがまま、鏡に姿を写す。
戸惑いもあるが、この人の言うように一対一で話す機会などそうそう無い。せっかくの機会だ。腹を割って話そう。
「玉木君。まず、君には礼を言いそびれていたね。
娘を助けてくれて、本当にありがとう」
背筋を伸ばし、オレに頭を下げてくる。
……公爵家当主である彼が頭を下げるという事がどれだけのものか、想像に難くない。
が、この際取り繕うような真似はせず、思った事を素直に書くべきだろう。
『いえいえ。オレも娘さんには色々とお世話になっています。最近は他の貴族を見かける事も多いです。だからこそ、召喚主が彼女で良かったと、心から思いますよ』
「そうか。あの娘も君を信頼しているようだ。これからも私達に力を貸して欲しい」
「ピッ!!」
首を大きく縦に振り、力強く笛を吹く。
サラちゃんはオレの主だ。ただ、そもそもオレは彼女の事が好きだ。その上、オレの事を兄とまで言ってくれた。
だからこそ、オレに出来る事ならなんだってやってやる。
そんなオレの姿を見て、嬉しそうなパパさんが言葉を続ける。
「フフ……。頼もしいな。さて、先程のネックレスについてだ。アレはシルフォード家の家宝なのだ」
「ピィ?」
「500年前、この国を建国したグレイクス国王が魔人を滅ぼしたのは知っているか?」
「ピッ!」
「アレはその後に、国王からシルフォード家の当主に渡されたものとされている。なんでも、大きな力を持つ武器なのだそうだ」
大きな力を持つ武器? ゲームでのサラちゃんとの戦いではそんなものはなかったと思うが……ストーリーで何か明記があったんだろうか?
考え込むオレを見て、パパさんが残念そうに口を開く。
「……ふむ、君も知らないか……。アレは5年前にサラの誕生日に渡したのだが、500年前にどのように使われたのかが分からなくてな。今やただのネックレスと化している」
『何故その話をオレに?』
「実はな……。ドゥークは私ではなく、サラを嵌めただろう? あの時はよく分からなかったが……ひょっとして、あのネックレスが関係するかもしれないと思ってな」
なる程。シルヴァ君やゼリカさんも言ってたな。あの事件、シルフォード家よりもサラちゃんを狙ったかのようだと。それに、透明魔人もサラちゃんに魔人召喚をさせることは計画の内だと言っていた。
だけど……ゲームは全ルートやったけど、そんなモノは戦闘シーンでは見かけてない。
そもそもゲームでのサラちゃんは「共通ルートのボス」というだけで、それ以降戦う事はない。
……分からないな……
『すみません。やはり覚えがありません。ただ、先程の話は頭に入れておきます。サラちゃんはこの話を?』
「いや、その……。アレが家宝だとは伝えているのだがな……。アレを渡したのは私だ。つまり……」
何の気無しに聞いた質問だったが、かなり歯切れの悪い回答が返ってきた。
まあ、そうだよな。自分が渡したネックレスのせいで死ぬ所だったなんて言いづらいわな。
『わかりました。ですが、オレの知識に無い以上、サラちゃん達とも情報を共有し、考察する必要があります。
ですのでこの話については、オレの方から伝えておきます』
「仕方ないか……。確かに君の言う通りだ」
バツの悪そうな顔で俯くパパさん。まぁ気持ちは分かる。が、無用な心配だろう。
『心配しなくても大丈夫ですよ。貴方の愛は娘さんにもきちんと伝わっていますから』
「そうか……。すまない。気を遣わせたな」
パパさんの緊張が少しだけ緩んだ。まぁ、彼女は気にしないだろうが、どうしても渡した本人としてはな。特に彼の場合はサラちゃんを大事に思っているから余計だろう。
さて、そろそろ退室しようかな。
……と考えたところで、パパさんが思い出したような顔で口を開く。
「ところで玉木君。君はフローラとはどこまでいったんだ?」
ん? 急に何のことだろう?
「ピィ?」
「いや、君とフローラが仲睦まじいと聞いてね。勿論私も祝福する。だけど、君達は大人でもサラはまだ子供だ。今はまだ、あの娘の前であまり過激な事はーー」
「ピッ! ピィィィィィィ!!!」
屋敷中に笛の音が鳴り響く。
「うわっ!? なんだ急に!?」
パパさんからすれば唐突に鳴らしたように聞こえるだろう。だがそもそもーー
『こちらのセリフです! どうしてそんな事になるんですか! オレたちにそんな感情はありません!!』
「えぇ……? だが、君についてはサラから『フローラが唯一感情を見せる相手』だと聞いているんだが……」
いや、間違ってないかもだけど! 直接罵倒されるのはオレくらいだけど!
「それに先日はフローラとずっと2人きりだったとか……」
警備の為にね!? 貴方の娘さんを守る為ですよ!?
「その上ガスク討伐の数日後、君から『抱きしめてあげる』とまで言ったそうじゃないか」
いやまぁ確かにあの時は冗談で言ったけども! サラちゃん泣いてたしフローラさんもバツが悪そうだったからね!? ていうかサラちゃんどんな報告してんの!? お茶目にも程があるよ!
もしもパパさんに誤解されたまま正式に祝福されたらどうなる? 彼は公爵家当主だ。当然、その言葉は国中に知れ渡る。そうなったらもう、オレもフローラさんも否定しきれなくなる。
外堀を埋めて……どころの話じゃないぞ!?
『違います!! 一つずつ説明しますから、キチンと聞いてくださいね!?』
その後、必死の説明で何とか納得させ、フローラさんと2人でサラちゃんを叱る事になったのはまた、別の機会に……
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