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しおりを挟む母の元婚約者は、母がいじめたとされた勘違い令嬢を孕ませていた。
公爵家のお祖父様が結婚を勧めたとは聞いたけど、結婚するしかない状況だったということである。
大勢の前でその令嬢との仲を見せつけていたから愛人にもできなかったということだ。
男爵令嬢から公爵夫人になった人の子供。
それがドーソンとホリーの間の学年にいた。
昨年ドーソンが留学した年に入学したガーランド公爵令息ゲルツ。
3学年の中で公爵令息が一人だったために同級生も上級生も使いたい放題。
高位貴族が下位貴族を虐げる見本みたいな男だそうだ。
そんな中で生徒会の風紀が活動できるわけがなかった。
侯爵家と伯爵家でも上位に位置する家は、ゲルツとの接触を徹底的に避けている。
そして一年後にホリーが入学し、ゲルツの母をいじめた娘だから嫌がらせをしてもよいと勧めたということだろう。
ゲルツに媚びる生徒はホリーを虐め、虐めなくても同調したように見せた生徒も多くいて。
狙い打ちのようにホリーだけがターゲットになった。
逆に後ろにゲルツがいるから、ホリーを助けられない貴族も多くいて。
しかし、教師たちはゲルツの言いなりになってはいけないよねぇ。
ひょっとすると学園の生徒から親、親からドーソンの公爵家に学園の問題が伝わったのかもしれない。
『要するに、ゲルツを何とかしろ』ってことかな?
学園長や教師が何もできていないことが問題なんじゃない?
そうホリーが思っていたところ、ドーソンが聞いた。
「どうして彼を停学や退学にしないのですか?」
「ゲルツ・ガーランドが自分では動かないからです。いつも人を使います。
使われた者も結局は自分の意志で行動していますから、停学になるのは今回のように別の者。」
「なるほど。ホリーがいなくなれば済むといった問題でもないということですね。
留学先に連れて行くのも一つの手かと思っていたのですが。」
考えてくれていたのね。
嬉しいけど、お母様の汚名を晴らさないと弟が入学した時に可哀想だわ。
「明日から学園に通ってみて、対応を考えてみます。
期待はし過ぎないで下さいね。限界を感じたらホリーを連れて逃げますから。
あなたたちも出来ることを考えてください。
公爵令息でも学園の生徒です。教師の方が立場は上ですよ。生徒のうちはね。」
「今まで婚約破棄騒動は何度もありましたがね。
あからさまな下位貴族への嫌がらせの対応は困ってしまいまして。
彼は手駒がいくらでもいると思ってるようですが、停学にした者は戻ってきません。」
「恨まれてそうですね。」
「可能性はありますがね、爵位を放棄した貴族もいたとか。」
「停学者の家にゲルツが何かした?」
「憶測ではありますが。学園内のことだけでは済まないかもしれません。」
「わかりました。
それと、ホリーはしばらくうちから通わせます。いいですね?」
「そうですね。寮にも味方は少ないでしょうから。その方がいいでしょう。」
勝手に公爵家から通うことに決まってしまった。ちょっとホッとするけどね。
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