貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん

文字の大きさ
5 / 18

5.

しおりを挟む
 
 
3回に渡って水を掛けられた私は、水圧でその場に倒れてしまった。

場所は中庭。教室からも何人も顔を出していて、もちろん、近くにいた人たちも爆笑。

……この姿を笑えるって頭おかしいんじゃない?

水浸しの上、倒れこんだところは泥だらけ。面倒だなぁ。。。



立ち上がろうとした時、名前を呼ばれた。

「ホリー!」

声の聞こえた方を見ると、見覚えのある顔。従兄だ。母の兄の子。公爵令息。

「ドーソンお従兄様、どうしてここに?」

「留学先が休暇に入ったからね。誰がこんなことを?」

「さあ?今、私を笑っていた皆様のうちの誰かでしょうね。」

周りを見渡すとみんな顔を背ける。

「教師はいるか?」

再び周りを見渡すと見覚えのある、というか担任がいたので指をさした。

「魔術発動の履歴を調べて下さい。感知機能がありますよね?水で3人。 
 授業以外の使用、しかも人に向けてなので処罰対象です。」

青い顔で動かない担任に、ドーソンが怒鳴った。

「早くしろ!」

慌てて去っていく担任と、巻き込まれたくない周りの生徒が姿を消した。


「大丈夫?」

ドーソンの後ろから来た3人のうちの1人がハンカチで顔についた泥を拭ってくれた。

「うわ~可哀想。ちょっと待ってて。」

違う男性が温風であっという間に乾かしてくれた。

「泥は取れないから服は洗ってね。」

「ありがとうございます。でも、魔術……」

「ああ、俺はここの生徒じゃないからね。魔術登録もないからいいの。」

いいの?いいのかな?今のって火と風よね?便利そう。

「お従兄様、こちらの方々は?」

「留学先の友人。こっちの長期休暇は少し先だからそれまで短期留学するんだ。」

今、魔術を使ってくれた人は護衛らしい。



短期で帰ってきた理由は学園でのホリーへの嫌がらせについて知ったからだろう。
愚かな令嬢令息の目を覚まさせるため。
将来、この国に役立たない者たちを排除する気でもある。
…あまりに多すぎて、一部になるだろうけれど。



着替えてから学園長室に来るように言われた。

なら、あの書き記したノートも持って行こうかな?

この機会に学園長に直接訴えてもいいよね?



着替えて訪れた学園長室には、学園長と学年管理主任、担任とドーソンたち4人がいた。

「ホリー、君に水で攻撃した3人は余罪を確認して停学期間を決めるそうだ。それでいい?」

「はい。」

「他には今までなかった?」

「ちょこちょこありましたよ。日時を書いたノートを持ってきました。
 魔術かな?と思ったのには印をつけているので履歴と照合すればわかるはずです。」

ノートをパラパラと見たドーソンは怒りながら言った。(怒った演技だけど)

「毎日じゃないか!どうして教師に報告しなかったんだ?」

「しましたよ?だけど、相手にしてくれませんでした。子は親の因果を引き受けるものだって。」

ドーソンは3人を睨みつけて言った。

「ホリーに引き受ける因果などありませんが?愚かなことを言ったのは誰です?」

目を彷徨わせたのは学年管理主任と担任。

「学園長、あなたはホリーが嫌がらせをされていたことをご存知でしたか?」

「…すまないが、誰からの報告も聞いていない。今まで魔術の不正履歴の報告もなかった。」

「私が通っていた頃はいじめや問題があれば生徒会からも学園長に報告がありましたよね?」

「生徒会は昨年からうまく機能していないようだ。」 


ドーソンは1年生のときはこの学園にいた。2年生から留学して3年生の現在も留学中。


原因は、母の元婚約者の息子にあるようだ。つまり、親子で問題児。
 

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

王太子殿下と婚約しないために。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ベルーナは、地位と容姿には恵まれたが病弱で泣き虫な令嬢。 王太子殿下の婚約者候補になってはいるが、相応しくないと思われている。 なんとか辞退したいのに、王太子殿下が許してくれない。 王太子殿下の婚約者になんてなりたくないベルーナが候補から外れるために嘘をつくお話です。

禁断の関係かもしれないが、それが?

しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。 公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。 そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。 カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。 しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。 兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。

聖女に選ばれた令嬢は我が儘だと言われて苦笑する

しゃーりん
恋愛
聖女がいる国で子爵令嬢として暮らすアイビー。 聖女が亡くなると治癒魔法を使える女性の中から女神が次の聖女を選ぶと言われている。 その聖女に選ばれてしまったアイビーは、慣例で王太子殿下の婚約者にされそうになった。 だが、相思相愛の婚約者がいる王太子殿下の正妃になるのは避けたい。王太子妃教育も受けたくない。 アイビーは思った。王都に居ればいいのであれば王族と結婚する必要はないのでは?と。 65年ぶりの新聖女なのに対応がグダグダで放置され気味だし。 ならばと思い、言いたいことを言うと新聖女は我が儘だと言われるお話です。  

出会ってはいけなかった恋

しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。 毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。 お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。 だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。 彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。 幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。

処理中です...