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しおりを挟むディアンヌがフランクと婚約したのは、10歳の頃だった。遠縁で早く決まった。
交流を続けるうちに、フランクは優しいがディアンヌに恋愛の意味での好意がないことには早くから気づいていた。
まぁ、まだお互い子供だからと様子を見ていたけれど、学園に入学して気づいた。
フランクの恋愛対象は男性なのだ、と。
フランク自身は、そんな自覚はまだなかったようだった。
だけど、男らしい体格の良い人を見ると憧れるし、男に守られる女性を羨ましく感じることはあったらしい。
ディアンヌの指摘で、そうだったのかと自覚してしまったのだ。
「ディアンヌ、ごめん。自覚してしまえば君と結婚できる気がしない。」
「それって子作りするような行為が無理ってことよね?子供は養子でもいいじゃない。」
「え?こんな俺と結婚してくれる気があるのか?」
「だって、あの親から逃げられるんだったらフランクと兄妹みたいに暮らしたいわ。」
ディアンヌの両親は変人たちだ。
まじないや呪いを確かめたり持ち帰ったりする。
ディアンヌが結婚すれば、遠方への旅に出るそうだ。
爵位は既に兄にあるが、兄は両親が旅立てば従弟に爵位を譲って隣国でやりたい仕事に就くという。
そのために兄は独身のままなのだ。
そのことを両親は知らないが、もし両親が戻ってくることがあれば領地に住まわせる約束を取り付けているという準備万端な状態なのである。
なので、ディアンヌは結婚しなければならないのだ。
両親も兄もいなくなる。
帰れる家はすぐに無くなることになるので、離婚の心配のない相手であるフランクは理想的。
「兄妹みたいに、か。いいな。
男女の関係にはなれないけれどディアンヌとなら楽しく暮らせそうだし。」
ディアンヌとフランクは、お互い納得の上でそんな結婚の約束をしていた。
しかし、フランクに恋人ができたことによって少し変更が生じた。
フランクの恋人テッドは新しく雇った護衛騎士で、フランクが一目惚れをした。
そしてその視線を感じたテッドも、フランクを受け入れたのだ。
話によると、お互いに母親で嫌な思いをしたことで女性と関わりたくないようだった。
ディアンヌは純粋に2人の関係を祝福した。
だが、ディアンヌとフランクの結婚の話が具体的に進むにつれて、テッドが辛そうだった。
愛する人が別の人と祝福される結婚式を想像すると胸が苦しくなるという。
「結婚式、やめて入籍だけにする?」
「ウエディングドレス、憧れないのか?」
「全然。面倒だわ。」
「俺は式を無しにしてもいいけど、お互いの親がなぁ。納得するか?」
「……するわけないわね。結婚式を挙げないのは訳ありのようなものだもの。
訳あり……そうよ。訳ありの結婚にすればいいんだわ!」
「どういうことだ?」
「ねぇ、あなたの父親って恋人いそう?」
「はあ?いないだろ。浮気性の母親に嫌気がさして離婚してからは女っ気はないな。」
「お義父様ってまだ40歳になっていないわよね。性的欲求ってまだあるかしら。」
「……何考えてるんだ?」
「ふふ。私がお義父様の子供を産むってどうかしら。」
「へ……?え……?俺の父親と関係を持って俺たちの子供にするってことか?」
「というか、訳ありに思わせたいから、あなたのお義父様と私が結婚するの!」
「は……?じゃあ俺は?」
「父親に婚約者を奪われた傷心の息子ってとこかな。今後の結婚を断る理由にもなるわ。」
社交界は黙っていれば好き勝手に噂するのだから。
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