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しおりを挟むディアンヌとフランクは、王太子殿下からの要請で登城した。
まずはディアンヌと2人で話をしたいということで、フランクとは別々の部屋に案内された。
ディアンヌが入った部屋には既にウィルベルト王太子殿下が待っていて驚いた。
「ディアンヌ、久しぶりだな。挨拶はいいからこちらに座ってくれ。」
「はい。失礼いたします。」
「……そんなに畏まらないでくれ。あの頃のように話してほしい。」
「ですが……わかったわ。そんな顔をしないで?」
10年が経っていても、ディアンヌはウィルベルトの懇願する顔に弱かった。
その顔に絆されて数回の仕事がひと月半と延び延びになったのだから。
「ルドルフは、私とディアンヌの子供で間違いないね?」
「ええ。妊娠に気づいたのはフランクと再婚してからだったの。」
「……伯爵と私、どちらの子なのかがわからなかった?」
あ、そっか。あの後すぐにフランクと結婚したのだから、当然フランクとも体の関係があると思っているわよね。
そんな中の妊娠だと、どちらの子かわからない。
いえ、違うわ。殿下との閨事は避妊薬を飲んでいたことになっているのだから妊娠の可能性は低い。
だから、結婚した夫の子供だと思っていたと答えるのが正解だわ。
「フランクの子供だと思っていたわ。でも、ルドルフが産まれて、あなたの子だと気づいて。」
「私に報告しようと思わなかった?」
「あなたは、妃殿下との結婚が間近だったから。隠した方が揉め事にならずにすむと思って。」
「それで、デルード家の子供として育てることを伯爵が許したということか?」
「ええ。あ、でもフランクに無理を言ったのは私よ?
本当にルドルフのことをあなたに隠していいのか、聞かれたわ。
だけど私がフランクの子供で突き通すことに決めたのよ。悪いのは私なの。」
ディアンヌは話ながら、ひょっとして王族の子供を隠して育てたことでフランクにも罰が与えられるかもしれないことに気づいて、慌てて自分が悪いことを強調した。
「心配しなくても、伯爵を罪に問う気はないよ。」
その言葉にホッとした。
「しかし、私の子供だとわかった以上、王族として育てたい。
よってルドルフはデルード伯爵家の跡継ぎにはなれないと思ってくれ。」
「でもっ!オリアナ王女殿下がいらっしゃるわ。
妃殿下は隣国の王女様でしたし、オリアナ王女殿下が後継者に相応しいわ。
そんな中でルドルフを王族にすることは、結婚前のことでも妃殿下たちにも隣国にも申し訳ないわ。
ルドルフは庶子になるし、他国に婿入りさせる駒としても弱いでしょ?
王女殿下の邪魔にならないように、既に臣下になった扱いでどうかしら。」
王太子になれなかった王族兄弟は、他国あるいは自国に嫁ぐか、婿入りするか、国の領地の一部と爵位を授かるか、母方の爵位に空きがあれば譲り受けるか、王太子の側近になるか。
そんな感じになる。
ルドルフはオリアナ王女殿下よりも先に産まれていても庶子であるし、正妃から産まれたオリアナ王女殿下の方が後継者に相応しいのだ。
そうなると、ルドルフはこのままデルード家を継いでもいいのではないの?
私の子供だからデルード家を継ぐのに現状で一番相応しい子なのだけど。
「キャサリンもオリアナも、オリアナが女王になることを望んでいない。
着々と隣国王子との婚約の話を進めようとしていて、私には誰かに子供を産んでもらえと言っていた。
ルドルフが私の子供だろうと知った時は大喜びだったよ。」
……フランクが耳にした情報は事実だったのね。
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