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しおりを挟むメリーアンはクルミック伯爵家の長女で2歳上に兄オービスがいる。
現婚約者であるタルボットは産まれた時からの婚約者。
というのも、メリーアンがまだ母のお腹にいる頃にタルボットの父である現レッテン子爵が母の危機を救ったことがあったらしい。
『うちには産まれたばかりの男の子がいるんですよ~』
『ならば、腹の子が女の子であれば婚約させましょうか~』
『いいですね~』
といった具合に、軽いノリで交わされた約束がメリーアンが女の子だったがために実現してしまった。
レッテン子爵領は王都から見てクルミック伯爵領の奥に位置する。
隣と言えば隣なのだが、田舎と言えば田舎だ。
しかし、遠くに嫁がせるよりもいいかとこの時の両親は思っていた。
タルボットとメリーアンは生まれは半年しか離れていないが、学年では一つ違いになる。
兄オービス、タルボット、メリーアンの順。
タルボットには弟が産まれたが歳がだいぶ離れているのであまり遊んだことはない。
兄が学園に入学するまでは、兄もメリーアンも王都と領地を行き来して暮らしていた。
タルボットのレッテン子爵家は基本、領地で暮らす貴族のため王都に家はない。
兄が学園に入学するために王都に住むことになったので、メリーアンも王都にいることが多くなった。
その頃はまだ、タルボットは領地にいたので手紙のやり取りはしていたし、問題はなかった。
タルボットが変わったのは、翌年、学園に入学して少し経った頃からになる。
王都に家のないタルボットは学園寮に入っているのだが、申請すれば週末の外出は可能である。
なので、メリーアンと王都の街をデートしよう。そう約束していた。入学前までは。
なのに、いつまで経っても誘ってくれることはなかった。
「お兄様、タルボットを学園で見かけることはある?」
「あー……あるにはあるが、どうした?」
「休みの日に遊びに行こうって言ってたのに、全然誘ってくれないの。元気なのよね?」
「ああ、元気そうだ。アイツが友人たちと楽しんでいる姿はよく見るよ。」
「そう。休みの日も友人と一緒だから誘ってくれないのかしら。」
「そうかもしれないな。まぁ、勉強も忙しいしまだ余裕がないんじゃないか?」
兄はそう言って誤魔化していたけれど、おそらくこの頃からすでに両親と兄の中ではメリーアンとタルボットの婚約解消の話が進み始めていたのだと思う。
タルボットの入学祝いを渡して以来会えないまま、次に会ったのは長期休暇でタルボットが領地に帰る直前のことだった。
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