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しおりを挟むメリーアンとピオニーは、お互いに新しいクラスに慣れるために、昼休憩を別で過ごす約束をしていた。
昼休憩が終わる頃、メリーアンが教室に戻ってくるとザカリスが慌てて聞いてきた。
「ピオニーに会わなかったか?どこにも見かけなくて。」
「いいえ?同じクラスのエリス様といるんじゃないかしら。」
「いや、エリス嬢と一緒じゃないからどこにいるのかと思って。」
ピオニーのクラスには同じ伯爵令嬢のエリスがいて、お茶会などで仲良くなった友人だった。メリーアンとクラスが離れても彼女がいることにホッとしていたから、てっきり彼女と一緒なのだと思っていたのだけれど。
メリーアンとザカリスの会話を聞いていたクラスメイトが、隣のクラスの友人に聞いた話だけど、と教えてくれた。
「今日から留学してきた隣国の第三王子殿下がピオニー様を気に入って、学園を案内しろって連れ回しているそうよ。」
隣国の第三王子殿下って、ブランカ第二王女殿下の婚約者じゃなかった???
「え、ピオニーを気に入ったってどういうこと?下の学年に婚約者の王女殿下が入学したわよね?」
少し問題のある王子って聞いたけど、ひょっとして女性問題ってこと?
「王族専用の休憩室ってあるよな。その王子も使えるのか?」
学園内には王族が使用できる部屋がある。一人で過ごしたい時や内密な話をする時、人目から離れたい時、あるいは執務に使用していた王族もいるという。
王族だということで隣国の王子も使用許可があるとすれば、どこにも姿が見えないピオニーはそこに連れ込まれているのかもしれない。
ザカリスは走り出し、メリーアンもその後を追った。
何事も起こってなければいいと願いながら……
メリーアンがその部屋に着いた時には、もうザカリスがピオニーを助け出したところだったようだ。
服装の乱れはない。ひとまず、何事もなかったようで一安心した。
しかし、問題は部屋の中から聞こえる怒声だった。
「ブランカ王女殿下に助けていただいたわ。」
この怒声はブランカ王女殿下のものらしい。が、意図してピオニーを助けたわけではないだろう。
助けたというよりも女性を連れ込んだ婚約者にブランカ王女殿下は怒っているというのが正しい気がした。
やがて教師が数人駆けつけて来て、ひとまずその場はおさまった。
ブランカ王女殿下とその婚約者である隣国の第三王子殿下エラドはそのまま帰ることになったようだ。
しかし、このままで終わるはずがない。
そうメリーアンは思っていたが、その余波が自分にも降りかかることになるとは思いもしなかった。
兄がユーシス経由で聞いたブランカ王女殿下の言い分はこうである。
浮気者の婚約者エラド殿下はいっそのこと伯爵令嬢ピオニーと結婚すればいい。
そして自分はピオニーの婚約者だった侯爵令息ザカリスと結婚する。
ザカリスは爵位を継がない?
であれば、兄から跡継ぎの座を譲ってもらえばいい。
あるいはザカリスの兄ユーシスと自分が結婚するので、ユーシスの婚約者であるメリーアンはザカリスと結婚すればいい。
……いろいろと玉突き事故が発生していた。
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