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しおりを挟むセルフィ様の語った過去は、驚くと共に納得もした。
接する機会の少なかった異性に憧れを抱き、独占したくなるというのもわからなくはない。
ガレント様が優しすぎたことも原因の一つ。
婚約していたことで、学園に通えた時でも他の令息に目を向けることがなかったから。
ようやく結婚できたのに、夫が自分を見る目は女性としてではなく妹のようで。
体調を気遣い、どこまでも優しい。
ガレント様は3年で婚姻を解消するつもりでいたのではないかと思う。
白い結婚。
セルフィ様には言わなかったが、そのつもりだった。
セルフィ様は、子供を産むことは命がけになるとわかっていたけれど、結婚したからには産まなければ公爵家にいられないし、人より短い人生なのであれば子供を産んで生きた証を残したいと思った。
脅すように抱かせた夫に触れられて、自分がガレント様に望んでいたのは男としての性的な接触ではなくて兄のような優しい温もりだったことに、ようやく気づいた。
妊娠していなくても、二度とガレント様を求めることはなかっただろう。
妊娠したセルフィ様の側にずっとガレント様がいられるわけではない。
自分の代わりにいつでもセルフィを抱き上げて運べるようにするためには男をつけるしかなかった。
侍従兼護衛にリンクが選ばれた。
恋をしたのはリンクが先なのだと思う。
リンクの視線を感じて、セルフィ様も意識をした。
それがやがて、恋であるということを認識してしまった。
お互いに告げることはできないし、したくない。
だけど、ガレント様が認めていると2人も感じているのだろう。
暗黙の了解の関係が出来上がった。
こんな幸せな形があってもいいのではないかと思う。
それから数か月が経ち、ルイーズは女の子を出産した。
物凄く、大喜びされた。
男子継承優先のこの国で、女の子が産まれてここまで喜ばれるとは。
嫁ぎ先の高位貴族にも困らないし、公爵家の跡継ぎとなっても婿入りする貴族に困らないからというのはわかるけどね。
妹ができたと喜ぶローラを見てセルフィ様も嬉しそうだった。
3歳を過ぎたローラの腕に妹を乗せてやり、支えるようにして2人を抱きかかえたセルフィ様。
セルフィ様が起き上がれた最後の日となり、その10日後に亡くなった。
セルフィ様がいなくなったことに、しばらくはローラも戸惑っていた。
覚悟していた私たちとは違い、まだ理解ができない。
だけど、妹セイラに夢中になり、その姿を見て公爵家・侯爵家全員が癒されていた。
セルフィ様が亡くなったことにより、ルイーズは第2夫人から正妻になった。
ルイーズは子供を産んだし、健康で社交にも問題がない。
つまり、ガレントにはもう第2夫人は必要ない。
もしも他の女性と関係を持っても愛人でしかないし、子供ができても庶子となる。
この国では庶子の扱いはあまりいいものではないため男側は我が子であっても養子として引き取るが、それは跡継ぎがいない場合の話。
ほとんどの庶子は、男側の籍に入れられることはない。つまり認められない。
なので、ガレント様を誘惑しても意味がないのだ。
実は、ルイーズが第2夫人になってからすぐに公爵家の侍女採用試験があった。
正妻と第2夫人がいることで、一部の令嬢は勘違いしてしまったのである。
『妊娠すればルイーズの代わりに第2夫人になれる』と。
下心を隠して無害な顔で公爵家にやってきた新しい侍女たち。
その頃にはルイーズは妊娠してお腹も目立ち始めていた。
その侍女たちにとってルイーズの妊娠は誤算ではあったが自分も妊娠すれば可能性はあると思い込み、ガレント様を誘惑しようとして即、首。
たとえ誘惑に成功して妊娠しても庶子でしかないこと、ルイーズが妊娠していなくても第2夫人が変更されることはないと説明を受け、愕然として実家に戻されたという。
第2夫人がいる貴族家がほとんどないため、今では実情が正しく伝わっていないことが原因だった。
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