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しおりを挟むベルーガ公爵の認知裁判には多くの貴族が傍聴しに来ていた。
『男子継承優先』から『女子継承優先』に代わる。
女王陛下のお言葉を、否定する者、受け入れる者、様々であることは当然である。
しかし、頭の悪い男ほど、否定的になるものだった。
「女王陛下、建国からの長い歴史を愚弄なさるのですか?」
女王陛下に申したのは、ベルーガ公爵だった。
「あら。ベルーガ公爵家の始祖は王女ですよ。そして過去には『長子継承優先』の時代もありました。なにも男ばかりで栄えてきたわけではありません。
公爵位にありながら自分のことばかりのあなたが国の歴史を語るとは。」
女王陛下の嘲笑に、ベルーガ公爵は怒りに震えていた。
彼は公爵である。
人前で侮辱を受けるようなことは過去になかった。
セルシオ・ベルーガはベルーガ公爵家の特徴的な目を持って産まれてきたこともあり、大切に大切に育てられた。
他に兄弟もいなかったことから比較されることもなく争うこともなく、少々頭が悪くても叱られることもなかった。
周りを優秀な者で固めれば、跡を継いでもセルシオはサインをするだけでいい。
そのように、セルシオの両親が甘やかしてしまったからだ。
実際、両親亡き後、セルシオは実務などほとんどしていないのだから。
唯一、彼の思い通りにならなかったのが婚約者。
5歳年上で結婚間近のルチェリアを手に入れることは許されず、政略で真面目な令嬢と婚約させられた。
邪魔だった両親と元婚約者がセルシオの前から消え、それ以降、誰もセルシオに意見することなどなかったというのに、たとえ女王といえども女に嘲笑されるなどセルシオのプライドは傷ついた。
怒りに震えるベルーガ公爵に、女王陛下は驚くようなことを言った。
「ベルーガ公爵、あなたには今回の認知することになった男児以外に、三人の女児の父親である疑いがあります。あなたの身勝手な言動により、女児たちは乳児院に置き去りにされました。他にもいるかもしれませんね。」
男児ではなく女児であったために、認知はしてもらえないと産み捨てられたのだ。
産んだ母親もひどいことをするが、やはり『半分の確率でも産む勇気があるのなら試してみればいい』というベルーガ公爵の発言に煽られたと言えるだろう。
「……は?三人の女児?それこそ、私の子だという証明はない!」
「確かにそうですね。大丈夫です。もう引き取られてそれぞれ幸せに暮らしていますから。」
なら、どうしてわざわざ言う必要があったのか。
それはベルーガ公爵の無責任な言動を知らしめるためでもあり、怒らせるためでもあった。
そして、女王陛下のこの後の発言で、ベルーガ公爵は更に怒ることになる。
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