認知裁判とその後

しゃーりん

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19.

 
 
エドワードとサミアがクレックス伯爵家でどう話したのかはわからない。

だが、彼らが帰って数時間後、クレックス伯爵から至急、話がしたいという連絡があった。

もう夜に差し掛かる。
アメリアの両親は、明日にしてくれと訪問を断った。 
 
 
「焦っているようだけど、もう手遅れなのにね。」 

 
どうやら母ルチェリアは、クレックス伯爵夫妻の真実、愛人とその子供を側に置くために元妻と子を捨てたことを知って彼らが許せないのだろう。

一晩中、息子エドワードの婚約破棄を撤回してもらおうと頭を悩ませることがわかっていて、訪問を断ったのは明らかだった。

アメリアとエドワードが婚約した際には、婚約を破棄することになった場合の慰謝料についても明記してある。
結婚まで一年を切っている現時点での慰謝料額は高いため、母は笑顔だった。
 
その姿を見てアメリアは、母はいつか婚約が解消になると予想していたのではないかと思った。



翌日やってきたクレックス伯爵は、サミアのお腹の子は堕胎させるから婚約を継続してほしいと言った。

隣にいるエドワードは何も言わない。
クレックス伯爵に喋るなと言われているようだった。


「堕胎などと軽々しく口にするのはどうかと思いますが。まぁ、彼女の子についてはうちと何の関係もないことだ。双方の家で勝手に話し合えばいい。」
 

アメリアの父ニコラスは淡々とクレックス伯爵に言った。

実際、貴族令嬢が結婚できる18歳になる前に妊娠すれば、とれる手段は二つしかない。
堕胎か、密かに出産して養子に出すか。両親の子として籍に入れる場合もあると聞くが。
自分の子として育てる場合は、大概が平民に落とされる。
 

「婚約時の契約に、『懇意にする異性ができた場合、破棄に該当する』とある。今回のエドワード君の落ち度はこれに当たる。妊娠するほど深い関係になっていたのだからな。何と言われようと婚約は破棄だ。」

「し、しかし、そうなればアメリア嬢にも傷がつくことになる。それは困るだろう?」

「いや、全く。女性優位の時代だぞ?結婚前から愛人のいる男など切り捨てて当たり前だ。この子たちの時代は婚約者や妻に誠実でないとそうなるものだとわかっているはずなのに、愚かとしか言いようがない。」


自分たちの時代と違うのだと父は伯爵に言った。
それは結婚前から今の夫人を愛人にしていたクレックス伯爵に対しての言葉だろうが、まさか知られているとは思っていない伯爵は言葉の裏に気づきもしないだろう。 


「アメリア嬢はエドワードのことを気に入っていただろう?もう二度と浮気させないから今回だけ許してもらえないか?」


許しを請うのがエドワード本人ではなく父親だということに、アメリアは苦笑する。
 

「エドワードの顔だけは気に入っていました。だけどやはり常識というか、理解力、判断力?、そういうものが備わっていることも必要なのだと実感しました。
私は、エドワードとサミアさんはお似合いだと思いますよ。」


頭の程度が。

そして一人、言葉の意味を理解できないエドワードは、自分とサミアがお似合いだと言われて嬉しそうに笑い、それを見たクレックス伯爵はガックリと肩を落とした。


こうして、アメリアとエドワードの婚約は無事に破棄された。


 

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