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しおりを挟む朝食と昼食は部屋で取り、夕食は侯爵夫妻とディカルドと一緒に食べた。
侯爵夫妻は意味深な目で問いかけていたが、フォルティアは曖昧な笑みを浮かべて相手にしなかった。
どうせ、『初夜はうまくいった?』と聞きたいのだろうが、息子夫婦に問いかけるには下世話なことだと一応弁えているようだった。
ディカルドも何も言わない。言えるはずもない。
自分がフォルティアを抱かないせいで両親には孫を抱かせてあげることができないからだ。
おそらく彼は、数年後に自分に子種がないとでも嘘をついて養子の話をするつもりでいるのだろう。
だがそれまでにフォルティアは白い結婚を証明して離婚を申請しているはず。
白い結婚の証明による離婚は婚姻無効と同じ意味になる。
以前は婚姻無効で白紙に戻っていたというが、白紙といっても婚姻歴の書類を処分していたという。
だが手続き上、経緯として来歴を残していないと違法な婚姻無効が増えて収拾がつかなくなった事例があり、離婚は離婚として全て来歴として残すことになった。
証明があれば次の結婚のときに再婚扱いとはされなくなるため、フォルティアは自分が純潔であるという証明を取るつもりでいるのだ。
義母となった侯爵夫人は、侯爵邸の女主人としての仕事は特にしていなかった。
ここ何年も開くことはなくなったが、お茶会ですら使用人任せだったという。
本来であれば、義父の母から教わるはずが、嫁いだ時には亡くなっていたらしい。
代わりに家令を置いて女主人の役割を請け負っていたらしく、義母は引き続きその役目を家令にさせて学ぶことはなかったのだ。
姑がいない侯爵家は義母にとって自由に感じたことだろう。
次期侯爵夫人になるフォルティアはこの家令から侯爵家の内政について学ぶことになった。
2年で去るつもりだけど、またどこかに嫁ぐかもしれないので学んでいても損はない。
そんな思いで誤魔化したが、要は義母に絡まれないための時間潰しでもあった。
別居したい。
結婚わずか3日で、フォルティアは侯爵夫妻にうんざりする思いだった。
義父はろくに仕事をしない。
自分が仕留めたと思われるはく製を見てニタニタと笑う。
度を越した酒を浴びるように飲む。
義母は観劇、お茶会が大好き。
しばらく呼ぶことができなかったお気に入りの店を呼んで多額の買い物。
……援助金は一体何に消えているのだろうか。
夫ディカルドは結婚したことでようやく侯爵家の仕事を始めたようだが、何もわかっていないようだった。
ディカルドは長年リーリエに振り回されていたようで、腰を落ち着けて学ぶ時間がなかったという。
しかも、リーリエが亡くなってから2年近く、部屋に閉じこもっていたらしい。
……侯爵家の跡継ぎだというのにここまでひどいとは思いもしなかった。
お父様、領地だけでなくここの屋敷内にも人材が必要です。
そう書いた手紙を、フォルティアは送ったはずだった。
しかし、それが届いていなかったということに気づいたのは、少し後のことだった。
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