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しおりを挟むジャレッドは王都のクレセント公爵邸の豪華さに圧倒されていた。
使用人が何か言っているが、耳に入ってこなかった。
その時、正面にある階段の上から、声が聞こえた。
その声だけ、はっきり聞こえたのだ。
「まあっ!あなたがジャレッドね。」
9歳のジャレッドより少し上の令嬢が階段を下りてくる。
「……天使?」
ジャレッドより淡い金髪が光を浴びて輝いて見えた。
天使か、あるいは女神なのか。
ジャレッドは見惚れた。
あまりの美しさに。
「ようこそ、わたくしはマリアローズよ。あなたの従姉。だけど、今日からは姉になるわね。」
「初めまして、ジャレッドです。よろしくお願いします、……マリアローズ様。」
なんとか挨拶を返すことができた。
思わず、天使と言ってしまいそうになったが堪えられた。
「嫌だわ、マリアローズ様だなんて。姉様、いえ、男の子だから姉上と呼ぶ方がいいのかしら。」
マリアローズはジャレッドにではなく、周りにいた大人に聞いていた。
「そうですね。姉上とお呼びいただくとよろしいかと存じます。」
執事らしき男が答えていた。
「ジャレッド、わたくしのことはこれから姉上と呼んでね。」
「はい、あ、姉上。」
緊張して舌が回らず、ジャレッドは顔が赤くなるのを感じた。
「ふふ。可愛いわ。仲良くしてね。」
マリアローズに頭を撫でられ、ジャレッドは頭がフワフワした。
ジャレッドはマリアローズに手を引かれ、これから過ごす部屋へと案内された。
後ろには数人、大人がついて来ていた。
「ここがあなたの部屋よ。」
広くて明るくて、勉強机に本棚、ソファなどがあった。
ベッドやクローゼットは隣の部屋にあるらしい。
浴室やトイレもだ。
領地の屋敷では全てが一つの部屋にあったし、こんなに広い部屋ではなかった。
浴室とトイレは共同だったし。
「ここが、僕の部屋?」
「そうよ。あなたはクレセント公爵家の者として恥ずかしくない暮らしをしなければならないわ。そのためには、知識だけでなく、着る物や装飾品一つにおいても気をつけなければならないの。」
領地から来たばかりのジャレッドが着ている物を見ながら、マリアローズはそう言った。
「今着ているような服は、そうね、剣の稽古の際に着ればいいんじゃないかしら。」
「わかりました。」
一応、着古していない服だけを持ってきたが、それがここでは相応しいものではないとマリアローズは言っているのだと理解した。
すぐに成長して着られなくなるため、使用人と同じような服である。
「マーカス、ジャレッドの埃を落として相応しい服を着せてあげてね。」
「かしこまりました。」
ジャレッドはマーカスと呼ばれた男に浴室に連れて行かれた。
マリアローズはそれを笑顔で見送り、手まで振ってくれていた。
ああ、可愛い……
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