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しおりを挟むジャレッドは王都のクレセント公爵邸に来ることになるまで、領地で暮らしていた。
父ラモンはクレセント公爵の弟で、母は伯爵令嬢だった。
家族三人、幸せに暮らしていたが、ひと月前に父が事故で亡くなった。
その時、葬儀に来た伯父であるクレセント公爵にジャレッドは初めて会った。
『……ラモンに似ているな』
そう声をかけられた。
母と二人になったジャレッドは、母の実家に行くことになっていた。
それまで詳しく聞いたことはなかったが、父と母の結婚はクレセント公爵からは反対されていたらしい。
父亡き後、我々はこのクレセント公爵家にとって邪魔者でしかないから、と。
母は実家に帰る算段をつけ、荷物を纏めていた。
ジャレッドも自分の荷物を纏めていた。
しかし、明日出発という日に、母は失踪した。
領地の屋敷内は大騒ぎになり、捜索が行われたが母は見つからなかった。
騎士が一人、姿を消したらしく、母と駆け落ちをしたのではないかという結論になった。
父は亡くなり、母は失踪か駆け落ち。
ほんの数週間の間に両親がいなくなったジャレッドは自分がどうしたらいいかわからなかった。
父の死は、悲しくていっぱい泣いた。
母の失踪は、捨てられたのだと気づき、呆然として涙も出なかった。
そんな時、屋敷の誰かが王都のクレセント公爵に母の失踪を知らせ、その返事が届いたという。
手紙には、ジャレッドを引き取るから王都に連れてくるように書いてあったという。
『ジャレッド様、伯父であるクレセント公爵様が養子にしてくださるそうです。泣き言を言わずに公爵様に従い、感謝し、立派な公爵令息になるのですよ』
そう言われて領地の屋敷を出ることになった。
入浴を済ませ、汚れを落としたジャレッドは、肌触りのいい服を着せられた。
するとどうだろう。
自然と、姿勢よく立つ自分がいた。
「ジャレッド様、私はジャレッド様の侍従兼教育係のマーカスと申します。マーカスとお呼びください。」
「マーカスさん、わかりました。」
「私には敬語は必要ありません。使用人ですので。」
「わかった。よろしく、マーカス。」
マーカスは”それでいい”といったように頷いた。
といっても、明らかに教育指導中の教師といった感じで、使用人の風格ではなかった。
ジャレッドをクレセント公爵令息に仕立て上げることを楽しみに思っている気がした。
「ジャレッド様、クレセント公爵様がお待ちでございますのでご案内いたします。」
「わかった。」
クレセント公爵。
ひと月前の父の葬儀で初めて会った父の兄。
そして、マリアローズの父親でもある。
天使のようなマリアローズとはとても親子とは思えなかった。
マリアローズは母親似なのか?
これから向かうクレセント公爵のところには公爵夫人もいるのだろうか。
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