4 / 7
4.
しおりを挟む部屋に戻ったジャレッドは、マーカスに聞いた。
「公爵夫人にご挨拶はしなくていいの?」
「あぁ、奥様はご病気なのです。体調が良い日にお目にかかることになると思いますよ。」
「病気ってどこが悪いの?」
「元々、病弱な方らしく、マリアローズお嬢様をご出産後、ますます寝込まれることが増えまして。我々が軽い風邪なのに、奥様は何日も高熱を出されるといった感じで、免疫力が弱いと言われております。」
免疫力と言われてもよくわからないが、人よりも体が弱い女性らしいということはわかった。
「そうなんだね。ねぇ、僕は公爵様のことを何とお呼びするのが正しいのかな。公爵様?伯父上?父上?」
マリアローズを姉上と呼ぶなら、伯父様や父様は違うだろう。
「亡くなられた御父上のことは何とお呼びになっていましたか?」
「父様、と。」
「では、公爵様のことを父上、とお呼びすることに抵抗はありませんか?」
「ないかな。」
「では、『父上とお呼びしてもよろしいですか?』とお聞きしてはどうでしょうか。それも会話の一つになります。」
つまり、父上と呼ぶのが正しいということらしい。
二年後に追い出すかもしれない養子に今からそう呼ばれるのは公爵は不快かもしれないと思ったが、むしろ、父上と呼び続けられるように、自分が努力すればいいだけのことだ。
「姉上は何歳なのかな?」
「マリアローズお嬢様は12歳になられたばかりでございます。ジャレッド様とは3歳差ということになりますね。」
3歳上なのか。
マリアローズから見れば、ジャレッドはまだ小さい子供に見えたのだろう。
頭を撫でられたり、手を引かれたりしたが、むしろ子供扱いされたからこそ、触れてもらえたのだと思うと子供でいたいと思ってしまう。
だって、天使に触れてもらえるのだから。
「ジャレッド様、今晩の夕食はお部屋でお召し上がりいただくことになっております。私がマナーをチェックし、許可できるまで公爵様とマリアローズお嬢様との晩餐はできません。」
「え……」
マリアローズに会えない?
ショックだ。
いつまで会えないのだろうか。
「マリアローズお嬢様とは朝食はご一緒できますが。」
何だ。驚かさないでほしい。
「今後、全ての言動をチェックさせていただき、その都度、指導させていただきます。二年という時間は決して長くはありません。
マナーは自然と身につくことが大事ですが、知識は場合によっては、詰め込むことになるかもしれません。領地でどの程度学習していたか、楽しみですね。」
マーカスの目が意地悪そうに笑っているように見える。
勉強は嫌いではなかったが、のんびりやっていた。
公爵令息の基準には全く届かないだろう。
王都に着いた初日から、ジャレッドは勉強机に向かうことになった。
55
あなたにおすすめの小説
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
うまくやった、つもりだった
ひがん さく
恋愛
四大貴族、バルディストン公爵家の分家に生まれたオスカーは、ここまでうまくやってきた。
本家の一人娘シルヴィアが王太子の婚約者に選ばれ、オスカーは本家の後継ぎとして養子になった。
シルヴィアを姉と慕い、養父に気に入られ、王太子の側近になり、王太子が子爵令嬢と愛を深めるのを人目につかぬよう手助けをし、シルヴィアとの婚約破棄の準備も整えた。
誠実と王家への忠義を重んじるこの国では、シルヴィアの冷徹さは瑕疵であり、不誠実だと示せば十分だった。
かつてシルヴィアはオスカーが養子になることに反対した。
その姉が後妻か商家の平民に落ちる時が来た。
王太子の権威や素晴らしさを示すという一族の教えすら忘れた姉をオスカーは断罪する。
だが、シルヴィアは絶望もせずに呟いた。
「これだから、分家の者を家に入れるのは嫌だったのよ……」
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
断罪された薔薇の話
倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。
ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。
とても切ない物語です。
この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
とある伯爵の憂鬱
如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる