初恋は沼、あるいは闇

しゃーりん

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幸せな時間は朝食の時だけではなかった。


「ジャレッド、一緒にお茶の時間にしましょう!」 
 

天使マリアローズが午後のお茶を誘いに来てくれたのだ。

ジャレッドはマーカスを見た。


「ちょうど、休憩をしようと思っていたところでしたので、どうぞマリアローズお嬢様のお誘いをお受けください。」


マーカスの許可を得て、ジャレッドはマリアローズの元へと向かった。


「テラスに用意してもらっているの。行きましょう!」


マリアローズはジャレッドの手を握り、そのまま歩き始めた。

今日も手を繋いでくれたとすごく幸せな気持ちになった。
 


お茶の時間でも、マーカスの目は光っているから気は抜けない。
しかし、マリアローズというお手本があるため、ジャレッドは彼女の所作を見ながらも会話を楽しんでいた。


「ジャレッドは、ラモン叔父様によく似ているわね。」

「父様を知っているんですか!?」

「もちろんよ。叔父様は毎月のようにここに来ていたでしょう?その時にお話しすることもあったわ。」 


毎月、父は領地の報告をクレセント公爵にするために王都に来ていた。
母とジャレッドはいつも留守番だった。
そのことを不思議に思ったことはなかったが、父の死後、母との結婚を公爵に反対されていたと母から聞いて、一緒に行けなかったのだとわかった。

父が王都の話や、マリアローズの話をしなかったのは、ジャレッドに興味を抱かせないためだったのだろう。
 

「わたくしよりも濃い金の髪、わたくしよりも深い青い目、ジャレッドの色は叔父様と同じでとても綺麗だわ。」

「そんな、姉上の色の方が僕は素敵だと思います。」

「ふふ。ありがとう。……髪型、真ん中より少し左で分けてみたらどうかしら。叔父様と同じように。」


分け目を作る。
ジャレッドは考えたこともなかった。

マーカスは聞いていただろうかと彼の方を見ると頷いていた。

マリアローズの言う通りに、ということだろう。
ジャレッドは少し髪を横にやってみた。
 
すると、マリアローズがジャレッドの髪に触れ、分け目を作ろうとしてくれていた。


「髪を洗った後にちゃんと分けるといいわ。もう少し伸ばしたらもっといいと思うの。」


なるほど。
横に流すなら、髪を伸ばすことができる。
今までは全部前に下ろしていたから、目にかかる前に切られていた。


「額が少し見えた方が似合うわ。子供っぽさが抜けるもの。」

「そうなのですね。やってみます。」


髪型に興味を持ったことなどなかった。
邪魔にならなければいいと思っていただけで。

子供っぽさが抜ける。
マリアローズとの年齢差が縮まるわけでもないのに、その言葉が差を埋めてくれるように思えた。
 

 
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