初恋は沼、あるいは闇

しゃーりん

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学園を卒業してから、ジャレッドはクレセント公爵家の跡継ぎとして公爵家に関わる執務と事業に本格的に取り組むことになった。 

公爵は端的に指示し、側近がそれに助言するような形でジャレッドを教育していく。
これまでの教育で下地ができており、ジャレッドは物覚えがいいことから戸惑いはなかった。
 
公爵も、ジャレッドを跡継ぎにすることに不満はないようだった。



リリーベルは15歳になり、学園に入学した。
 
彼女はマリアローズが15歳の頃のようにそこそこ体も成長していた。
背はもうそれほど伸びないだろうが、胸はまだ大きくなるだろう。
マリアローズがそうだったから。

今のままでも悪くはないと思いつつ、なんとなくマリアローズを基準にしてしまう。

マリアローズの名をリリーベルの前で口にすることはなくなった。

マリアローズを淑女に教育した家庭教師を解雇しても、リリーベルに問題などどこにもない。
自分に合う教師から教わる方が伸びるだろう。
ジャレッドもマーカスに厳しくもわかりやすく教わったことは自分のためになったと思っている。

それでも、リリーベルは婚約当初によく言われたことを忘れていないのだろう。

『マリアローズ王太子妃殿下ならこうおっしゃるでしょうか』というようなことを口にするのだ。

もうマリアローズを意識しなくていいとジャレッドは言えずにいた。

 

リリーベルが16歳になっても17歳になっても、ジャレッドは彼女との距離を詰めなかった。

彼女をまだ子供だと思っていたかったから。

マリアローズとは学年は3学年差だったが、年齢は2歳半差だ。
ジャレッドが13歳の誕生日でキスをした時、マリアローズは15歳だった。
ジャレッドが14歳になってマリアローズの体に触れた時、彼女は16歳だった。
 
リリーベルは、ジャレッドがマリアローズと戯れていた歳になっている。

婚前交渉は褒められたことではないが、婚約者同士なら体に触れることを許す者もいる。
一線を越える者も。

男が性欲の発散で他の女に手を出されるのが嫌だから。
その女が妊娠し、自分が捨てられてしまうかもしれないから。

下位貴族同士の婚約ではそんなことがままある。


ジャレッドが婚前交渉を望めば、リリーベルも応えるかもしれないが、逆にそれが怖かった。
彼女にのめりこんでしまいそうで。
 
だから、距離が詰められない。

だから、他の女で性欲の発散を続けている。
 

そして、ジャレッドがリリーベルと婚約してから7年が経ち、18歳になったリリーベルは学園を卒業した。
 
結婚式はもうすぐそこである。

リリーベルにはキスすらしたことがないままだった。

 

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