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しおりを挟む伯爵夫人が語り終えると、テオルドが言った。
「なるほど。僕はあなたの妹の子供だったのですか。
長い間、僕に恨みをぶつけ、今度は矛先をブルーエ家に代えた。そういうことですね。
ですが、父上はリムを嫡子にする気はなかった。違いますか?」
「……え?」
伯爵夫人がテオルドの言葉に驚いて夫の方を見た。
「……ああ。そんな愚かな真似はできない。
いつか妻を説得する気でいたし、サリューシア嬢にも子供を産んでもらうつもりだった。」
「だからサリューシアが白い結婚を言い出した時に焦っていたのですね。」
テオルドはどこかでこの部屋の会話を聞いていたようだった。
「レイド家には妻抜きで後で話そうと思っていたんだ。
ブルーエ家を継ぐのはサリューシア嬢が産む子供で、リムはいずれ平民にするということを。
もう二度としないと誓った浮気をティムの母親としてしまった。
ましてやその証となる子供を連れて来たんだからな。
正直、許してくれると甘い考えを持っていた。子供が一人も二人も同じだろうと思って。
そこまでずっと怒っているとは思っていなかったんだ。」
夫人はおそらく伯爵を愛していた。
だから裏切りが許せなかった。
しかも、相手が妹で子供までできたとなると辛かっただろうと思う。
それなのに、浮気をしないと誓った夫が今度は平民と浮気をした。
子供がいたことを夫人は知らなかったようだけど。
「私は後悔しました。
妹にあなたの妻の座を渡して、離婚するべきだった。
そう思い始めたのがテオルドが2歳くらいになってからです。
毎日テオルドを見ては妹が嘲笑う顔を思い出すの。
あの子はあなたとの行為まで語ってくれましたから。私より妹の体の方が良かったそうですね。
ずっと、生き地獄のような毎日だったわ。
社交界など気にすることなく、あの時自由になっていればと何度も思いました。
妹を妻にしたブルーエ家が笑われるのを外から眺めて私も笑えば良かった。
ごめんなさい、テオルド。あなたを愛せなかった。
甥だけど夫の子だったから。あなたの父親が別の人なら良かったのに。」
テオルドは伯爵夫人の子供だと思われているから、離婚しにくくなってしまったのだ。
自由になった妹を羨み、自分が自由を逃した恨みをテオルドにぶつけるようになった。
恨みはテオルドではなく伯爵にぶつけるべきだったと思うけど、言葉にしづらい感情が幼い子供に向いてしまったということだろう。
「すまなかった。……お前はこれからどうしたい?」
伯爵の問いに、伯爵夫人は鼻で笑って答えた。
「どうしたいって……テオルドに対する殺人未遂で刑を受けるべきでしょう。」
「テオルド、訴えるつもりか?
不自由な生活を過ごしてきた恨みがあるのはわかるが、穏便にできないか?」
伯爵がそう訴えるのは、ブルーエ家のためか、夫人のためか。
「申し訳ありませんが、僕がここに戻る以上、一緒に暮らすことは考えられません。
よって、2人には離婚していただきたいと思います。
自分が楽になりたいからと言って、自首などしないでください。
ブルーエ家の醜聞になりますので。
口を噤んで暮らすのであれば、どこに行こうが構いません。」
要するに刑罰を与えるつもりはないので、自由に暮らせということだ。
実家に帰って援助を受けながら領地で暮らしても、修道院でも、平民のような暮らしでも。
確かに、伯爵夫人が自首したとなると醜聞になる。
誰にとっても一番いい方法が、単なる離婚で済ませるということだった。
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