好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

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6.

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リゼルとエドモンドの結婚式は半年後だった。
元々シモーヌと結婚するはずだった日で、そのまま花嫁だけを代えることになる。

効率的にはいいのだろうが、リゼルとエドモンドの心情を無視した日であることは間違いない。

そのぐらい無神経でないと公爵というのは務まらないのだろうか。
それともレーゲン公爵がそうなだけなのだろうか。

いずれにせよ、公爵の決めたことにリゼルが言えることは、ない。 



レーゲン公爵邸を訪れて、夫人に挨拶をしたときは正直言って想像以上だった。

挨拶をしても、無視。
扇子をパチン、パチンと手のひらに当てながら開け閉めをして、リゼルの全身を汚いものでも見るかのように顔をしかめていた。

レーゲン公爵から夫人もこの結婚に反対していると聞いていたから驚きはしなかったけれど、形だけでも息子を庇った感謝の言葉があるかと思っていたが、それもなかった。


エドモンドと同じく、余計なことをしてくれたと言いたいのだろう。
 
似た者親子だ。

でも、確かにリゼルは余計なことをした。
あの事件がなくとも、レーゲン公爵はエドモンドとシモーヌの婚約を卒業後に解消したはずだから。
その場合、エヴァンという婚約者がいたリゼルが新たな婚約者になることはなかっただろう。

都合よく責任という名目で新たな婚約者にされたリゼルは巻き込まれ事故みたいなものなのだ。

エドモンドも公爵夫人もそれをわかっていてこの態度なのだろうか。 
 
公爵家という高い地位にいても人間性まで優れているわけではなく、むしろ見下すのが当たり前のように思っているようなので、質が悪いと思ってしまう。

公爵に従うしかないエドモンドと公爵夫人は、リゼルにその苛立ちを向けるのだ。




帰ろうとした時、玄関まで案内してくれていた侍女が遠回りの道を選び立ち止まって視線を庭に向けた。

四阿にエドモンドとシモーヌがいた。

もう婚約者ではないというのに、リゼルが今日来ることを知っているはずだというのに、なぜかシモーヌが公爵家に来ているのだ。

しかも、2人の距離は恋人同士そのもの。

やがて、唇が重なった。……浮気現場そのものだった。


「エドモンド様の心はこの先ずっとシモーヌ様のものです。」


侍女が誇らしげにそう言った。まるで自分がエドモンドかのように。いや、自分をシモーヌに置き換えてエドモンドに愛されているのだと浸っているように。

シモーヌはリゼルがここに来たことに気づいていたように見えた。
この侍女とシモーヌが事前に打ち合わせしてこの場所にリゼルを連れて来たのだとわかった。

この侍女だけではない。
お茶を出した侍女も、夫人の侍女も、使用人のほとんどが夫人とエドモンド、そしてシモーヌの味方なのだ。


ここでの暮らしは地獄かもしれない。そう思った。
 






 
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