好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

文字の大きさ
43 / 72

43.

 
 
一方、愛人になることをリゼルに拒まれたエドモンドは失意の状態だった。
 
まさか、リゼルの好意を受け取ろうと振り返れば、もう彼女はそこにいないなど考えもしなかったからだ。

だが、よく考えれば当たり前だ。あれから8年近くが経っている。
3人の子供がいるリゼルは恋より愛だと言った。
家族を捨ててでもエドモンドを望む女ではないとわかっていながら、再びやらかした。

どうしてこうも思い込んでしまったのか。悪い癖だ。最早、羞恥だ。

あぁ、リゼルに言われたことが身に染みる。

好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

まさに、今の自分のことだ。

恋は必ず実るというものではないのだ。これが失恋するということか。……つらい。
 



そして、またしてもビクターがやってきた。


「どうだったー?」

「…………わかっていて聞いているだろう?」

「ははっ。ごめんごめん。だけど忠告しただろう?家族よりもお前を選ぶわけないじゃん。」


そうだった。何度も言われた。リゼルが愛人になる可能性は非常に低い、と。

あの時は謎の自信があったんだ。おそらく、恋に気づいたばかりだったから。

なんと、滑稽なことなのか。
 


「んで?向こうは何て言ってきた?」


あ、そうだった。父にもまだ伝えていない。


「15歳になったら公爵家の籍に入れてもいいと。だが18歳まで伯爵家で暮らすとか何とか。
あぁ、違う。18歳まで伯爵家で暮らすことと、婚約者は本人か伯爵家が選ぶということに同意するのであれば15歳になれば公爵家の籍になることを認めると言っていた。」

「なるほどね。学園に入学する時に公爵家の者として名乗らせるんだね。それまで認めないというのは子供の間は伯爵家で愛情いっぱいに育てたいんだろうな~。いいなぁ。レイフォード君。」

「愛情いっぱい……うちには縁のないものだな。」

「だからじゃない?ここに任せたらレイフォード君もお前みたいに自分の感情がよくわからない子になってしまいそうだし、婚約者も性格の相性云々ではなく家柄や利益優先の完全なる政略結婚で、そんな2人から産まれた子供も愛情を感じない寂しい子供に成長してしまう。その負の循環を断とうと思ってるんじゃない?」

「負の循環……」

「だって、ここってうちの公爵家よりも殺伐とした空気よ?愛情?家庭?何それって感じ。
うちも政略結婚だけど兄弟3人いるし賑やかだったな。母は女の子が欲しかったのにと4人目を産ませてくれなかった父にいつも愚痴ってたけど、孫に女の子が産まれて可愛がってるよ。」


確かに、父ともアナレージュとも、笑い合う関係性ではない。

父も自分も兄弟がおらず、この間、伯爵家で見たようなレイフォードたち兄弟3人が仲良く遊ぶ姿には密かに驚かされたほどだ。

同じ政略結婚でも、片方だけでなくお互いに努力が必要なんだな。

信頼関係、か。リゼルが言っていたな。

どうして私はエヴァンのようになれなかったのだろうな。

あぁ、それこそが育つ環境の違いということか。

 
 

 

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?