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しおりを挟む学園にいる令嬢たちが自分の誘いに乗らないのはなぜかということをルースはわかっていないらしく、段々と機嫌の悪くなる日が増えていったらしい。
ルースは婚約者であるアミーナを侯爵家に呼び出し、体の関係を迫ったという。
『最後までしないから』『気持ちよくするだけだから』
アミーナが『イヤっ』と叫んだ声がアミーナの侍女に届き、少し開けていた扉を開いて侍女が部屋の中へと入るとルースがアミーナの体をまさぐっているところだった。
「おやめくださいっ!」
侍女の叫び声に、ルースは一度『出て行け』と侍女に告げたらしいが、他にも使用人が集まり始めたことからアミーナの上から体を退けた。
さすがにルースの所業を聞いたアミーナの父ファーブス侯爵は、コリタック侯爵にルースへの苦言を呈し、それに加えて性病検査を定期的に受けるべきではないかとルースの不品行さを皮肉った。
未婚の、しかもまだ15歳のアミーナに関係を迫ることは、婚約者とはいえ許されていない。
最後までするつもりはなかったなどという言い訳は通らない。
だが、ファーブス侯爵はこの程度では婚約解消を言い出さなかった。まだ弱いということだ。
しかし、次はないと釘はさしたようだった。
この一件で、アミーナはルースに近づかれると吐き気を感じるようになり、体調不良を頻繁に起こすようになった。
そしてとうとう、パーティーでルースに腰を引き寄せられた不快感から気絶してしまったというアミーナを見舞うため、アナレージュは実家であるファーブス家を訪れた。
「アミーナ、大丈夫?」
「叔母様……お父様は婚約解消を認めてくれないの。もう耐えられない。」
アミーナはボロボロと涙を流していた。
コリタック侯爵家でルースに襲われそうになった時、初めてキスをされたらしい。
その時が初めてだったというのは意外だとアナレージュは思ったが、女を知る前はそんな度胸がなかったのだろうし、女を知ってからは発散先があったからなのだろう。
だが、学園に通いだしてからは、以前ほど頻繁に女性を買いに行けなくなったのだ。
それでアミーナに手を出したくなったのだろう。
しかし、アミーナとのことが不発に終わったことが原因で、ルースが侍女に手を出し始めたという情報を手にした。
「アミーナ、もう少しの我慢よ。ルースは身近な侍女に手を出し始めたわ。
学園を卒業したばかりの子爵令嬢と、その前の年に侍女になった男爵令嬢、それと下働きの平民よ。
貴族令嬢はルースよりも3、4歳年上だけど、彼女たちは妊娠を狙う。間違いないわ。」
「……あと少し?」
「ええ。お兄様にもこの後、告げに行くわ。妊娠してなくても貴族令嬢に手を出している事実は大きい。
妊娠すれば、跡継ぎの問題も起こるから他人事ではないわ。
先に愛人が子供を産むなんてファーブス侯爵家が蔑ろにされていると見做される行為なんだから。」
アミーナの表情が明るくなった。
唇が荒れている。
ルースのキスを思い出しては、何度も擦っているのだろう。
「大丈夫。必ずお兄様を説得するから。もうレイフォードのことも話してしまうわ。
だから必ず婚約は解消できる。お兄様は時期を見るかもしれないけれど、そんなに先にはならないわ。」
アナレージュはアミーナに希望を持たせるため、レイフォードのことも兄に話すことに決めた。
向こうに払う慰謝料が惜しいのであればレーゲン公爵家が出しても構わない。
そのくらいの気持ちだった。
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