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しおりを挟むエマの起こした事件はしばらく社交界で騒ぎになった。
しかし、ルースに同情する者は少なく、むしろエマの減刑を願う嘆願が寄せられたほどだった。
『エマが厳罰に処されるのであればエマの子供を殺したコリタック夫人も厳罰に処するべきだ』
確かに、傷を負わせただけのエマと、胎児とは言え同意なく殺したのは殺人ともいえる夫人。
行方不明になった平民女性にも堕胎薬を飲ませたらしく、自分も殺されることを恐れて夜逃げしたのだと思われた。
そして、ルースの男としての機能は失われたが、街の平民の妊婦に男爵令嬢ケリー、そして侯爵家のメイドも妊娠が発覚し、跡継ぎになる子供もいるからいいんじゃないか?とあまり重要視されなかった。
故に、エマは労働修道院へ、エマの子爵家はお咎めなしとなった。
コリタック夫人は顔に傷を負ったのとエマの減刑と引き換えに罰金刑で済んだが、屋敷に引き籠っている。
ちなみにエマがコリタック侯爵を狙わなかった理由は、侯爵が妊娠を喜んでくれたからだと言う。
たとえ庶子であろうとも、孫にはかわりない。
しかも、同時期に2人、孫が産まれることを双子みたいで楽しみだ、男でも女でも待ち遠しい。
そう言ってくれたのが本気だとわかったから、堕胎薬は夫人の独断なのだと思ったらしい。
事実、そうであったというが。
何人庶子がいてもアミーナが産む子供が跡継ぎだから問題ないと呑気に思っていた侯爵と、庶子の存在を知られれば婚約解消になるかもしれないと危機感を覚えていた夫人。
正妻が嫡子を産んだ後であれば、庶子が何人いても大きな問題にはならなかったかもしれない。
順番を間違った。
要は、ルースの性欲を止められないのであれば避妊を徹底すべきだったということだ。
ルースの男根は、根元から数センチしかないという。もう女性を誘うこともないだろう。
ルースは、浮気できなくなった今ならアミーナも受け入れてくれるのではないか、生まれてくる子供たちを一緒に育ててくれるのではないかと期待して話がしたいと手紙をアミーナに送ってきたというが、会いたくない、もう無関係だと拒絶した手紙を送り返したアミーナにショックを受けたのだろうか。
学園にも来ていないという。
事件前にアミーナとルースの婚約は解消されていた。
その事実は社交界にしっかりと知れ渡っていた。
ちなみに生まれた3人の子供のうち、男爵令嬢が生んだ子供はルースの子供ではなかった。ルースの前に関係を持っていた騎士の子供だと判明した。
平民2人が生んだ子供はルースの子供として引き取られた。どちらも女の子だった。
リゼルは、ルースは最初からいろいろと間違ったのだなと思った。
アミーナにいたずらをして気を引こうとしたのは男の子にはよくある衝動だと聞く。
しかも、負う必要もない責任を押し付けて婚約してもらえたというのに、ルースは態度を改めなかった。
過去のいたずらを謝り、アミーナのことが好きだと告げ、仲良くなりたい。そう言っていれば。
アミーナはルースのいいところを探し、仲良くなる努力をしたかもしれない。
信頼関係を築くことができていれば、いずれは好意が芽生えたかもしれない。
体型など、食べ物に注意すればいくらでも変わる。
婚約時、ルースはまだ11歳だったのだから。
アミーナが助言をし、それをルースが受け入れていれば、今よりはるかに清潔感のある男だったはず。
ルースは好きな人に振り向いてもらえる機会を、婚約者という最大の優位性を生かすことなく、命令という形で縛り続けた結果、嫌われ続けたのだ。
しかしそれも仕方がない。
ルースは自分がアミーナに好かれていると思っていた勘違い男だから。
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