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しおりを挟む伯爵令嬢クラリスは、侯爵令息ディランと婚約している。
クラリスの父とディランの母が姉弟であるため、従兄妹となる。
ディランは次男で、伯爵家に婿入りするのである。
婚約はディランの亡くなった祖父の遺言で決まった。
しかしディランがクラリスを嫌っており、そんな態度を取られ続けると元々少ない好意もなくなる…
クラリスは結婚が憂鬱だった。
「クラリス、今度の王家の舞踏会、お前行くなよ?俺はハンナをエスコートして行くからな。」
「…何故ですか?婚約者をエスコートするのは当然のことです。
周りから白い目で見られるのはあなたですよ?」
「何言ってんだよ。お前は結婚前から『お飾りの妻』だってアピールするためだよ。
愛してるのはハンナだ。世間的には愛人になるが、俺とハンナの子がお前の伯爵家を継ぐんだ。」
「意味がわかりません。伯爵家の跡継ぎは私です。」
「はっ!馬鹿だな。お前とは白い結婚だよ。
じいさんの遺言のせいで、お前が婚約者だなんて迷惑かけられたんだ。当然だろ?」
「私も迷惑なのですが?」
「知るかよ。じいさんを恨め。」
そう言ってディランは去っていった。
クラリスが溜息をついた時、声をかけられた。
「ひどい男だな。婚約解消できないのか?」
「…ルーク様。…ディランの家の前侯爵様の遺言だそうです。
しかもディランは従兄なので…」
「当人同士が嫌がってるのに、何とかならないのか?
従兄妹なら尚更解消できるだろ?」
「3年、白い結婚のままだと婚姻無効の手続きができます。それまで我慢するしか…」
「いや、無理だろ。居座りそうだ。あるいは無効にしないために襲われるぞ?」
「…ですよね。もうどうすればいいのか…」
クラリスはまた溜息をついた。
「ちょっと調べてみるよ。何か手段はないか。
婚姻無効を考えたってことは遺言書には婚姻無効や離婚については書いてなかったってことだよな?」
「ちゃんと見せてもらっていません。
他の内容も書かれているため侯爵家以外の者には見せられないと言われて。」
「は?なんだそれ?お前の父親が認めたから婚約者に指名されたんだよな?
遺言の効力は強いが、お前の父の了承があってこそのものだ。
父親は遺言書を確認してるってことだよな?」
「…いえ。見ていません。
父の姉である侯爵夫人が伝えてきました。
ディランと私の婚約が前侯爵様の遺言で決まったので署名しろと。
父は何故か言いなりなのです。…昔に何かあったようで…」
「なんだそれ。
通常、従兄妹同士の婚姻はあまり推奨されない。
特に男が婿入りする場合はな。乗っ取りみたいに思われる。
だからこその遺言なんだろう。
だが、あの男の態度だと…周りは乗っ取りそのものだと思うぞ?アイツは馬鹿か?」
「…馬鹿なのでしょう。
乗っ取りそのものですが、こちらから婚約解消しないとこのまま結婚ですから。
私に問題があると思わせたいのかも。
そして、父は諦めています。」
「クラリス嬢、君はどうしたいんだ?」
「私は、ディランとは結婚したくない。
でも、どうすればいいかわからない。
私は伯爵家の跡継ぎとして申請が通っています。
ディランから逃げたら資格を失い、伯爵家の跡継ぎはディランです。
結婚してもディランの愛人の子が跡継ぎになるでしょう。
結局は伯爵家はディランのものになる。
おそらく、それが侯爵家の狙い、乗っ取りです。」
「方法はあるぞ?
君が結婚後に愛人を作って子供を産む。その子を跡継ぎにする。
愛人の存在が貴族社会にバレなきゃアイツの子に見える。
だがあの馬鹿だと、君が愛人の子をを産んだとバラすだろう。
結果、君と子供は白い目で見られ、何故かアイツは同情される。って感じだな。」
「男側が愛人に子供を産ませても問題にならないのに、女側が愛人の子を産むと白い目で見られる。
跡継ぎが女側なら問題ないと思いませんか?確実に自分の血筋なのに。理解できないわ。」
「確かにそうだな。だがそれが貴族社会の現状だ。変えるのは難しいな。
まぁ、ちょっと待ってな。いい方法を調べてやるよ。
君は伯爵に婚約解消を再度言ってみな。ダメなら理由を聞け。」
そう言ってルークは去って行った。
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