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しおりを挟む4人の男たちがリリィに関することを聞いて回っている。
しかし、違法なことをしているわけではないため、止めることはできないし、追い出すこともできない。
やがて彼らはいつの間にか遊んだ女の伝手で、リリィが辺境伯の屋敷にいたことをや足を怪我してエイダンに連れられてきたことまで情報を手に入れていた。
彼らに見張られていることを、エイダンはわかっていた。
知りたいのはリリィの現在地だろう。エイダンが手配した場所に彼女がいると思っている。
そこに行って、リリィがリアンヌであることを彼らは確認したいに違いない。
別人だとわかれば、彼らはまた違う街へと捜索に行くはずだ。
誰かリリィの身代わりを。年齢、髪色、背格好が似ている女性を探さなければならない。
そう思っていたが、ある日、彼らは街を出て行った。
「どういうことだ?諦めたか、別人だったと判断したか?」
エイダンは腑に落ちなかった。
しかし、彼らがリリィをまだ別人だと思っていないということが彼らをつけるように指示した仲間からの連絡でわかった。
『奴らは王都までの町にある宿屋と尋ねて、足を骨折していた若い女性が泊まった覚えがあるかを聞いて回っている』と。
つまり、エイダンがリリィをどこで拾ったのか、遡って調べているのだろう。
エイダンは失態を悟った。
リリィと一緒に泊まった宿の多くは、自分が王都への往復でよく利用する宿である。
もちろん、エイダンの顔と名前を知っているところは多い。
それに加えて、リリィを抱き上げて運んでいたのだ。忘れるはずがないだろう。
もし、ロベリー公爵が、リアンヌが足を骨折しているということを実行犯から聞き出せていたとすれば、リリィと繋がったと思っても不思議ではない。
そして、エイダンとリリィがどこから一緒だったかを辿れば、リアンヌが放置された森の近くの町ということまでそのうち辿り着くに違いない。
さらに、それがいつ頃だったかが判明すれば、リリィの顔を確認しなくともリアンヌでほぼ確定となるだろう。
だが、おそらくロベリー公爵も実行犯に会えていないはずだ。
エイダンはリアンヌを襲った犯人や指示した者が誰かということを調査しなかった。
指示したのはおそらくロベリー公爵の母親か婚約者のロレッタ嬢、あるいは2人の共謀だろう。
実行犯については、どちらかの家の騎士か、裏家業の者に頼んだということはわかる。
それを詳しく調べようと動くと、逆にこちらの素性を知られる恐れがあったのだ。
そうなればリアンヌが辺境伯領にいると知らせるようなもの。
だからエイダンは調査の指示はしなかった。
それに、調査したところでリアンヌがロベリー公爵夫人として戻れるわけではない。
本人も戻りたいと思っていないのだから、指示者や実行犯が判明したところで意味がないのだ。
しかし、ロベリー公爵はどうだろうか。
彼がずっと捜索を続けていることを考えても、ロベリアが死んだという確証がないからだ。
最初から東に向けて捜索していなかったことからも、実行犯がリアンヌをどこで殺したか、あるいは、どこに置き去りにしたか、ということを全く掴めていなかったためだろう。
実行犯は死んでいるか、生きていてもこの国にはもういないかもしれない。
リアンヌが襲われた時の御者や護衛も、適当な証言をした後はもう逃げただろう。
それはロベリー公爵もわかっている。
指示者であろう母やロレッタが実行犯をいつまでも近くに置いておくはずがないと。
だから、ロベリー公爵は未だに指示者を問い詰めないのだ。
リアンヌの生死がわかるか、ほとぼりが冷めた頃に何らかの制裁をするつもりなのではないかと思う。
ロレッタ嬢が犯行に関わっているならば、ロベリー公爵と結婚しても彼女は幸せにはなれないだろう。
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