王妃様には表舞台から消えていただきます

しゃーりん

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数日前にあった学園の卒業パーティー。

そこで王太子殿下グランツは、男爵令嬢コレットの腰を抱きながらチェルシーに言った。


「チェルシー、僕は君との婚約を破棄する。コレットが僕の子供を身籠ったんだ。僕はコレットと結婚するよ。」

「……そうですか。それはおめでとうございます。婚約破棄、了承いたします。」


周りはザワついていた。
それはそうだ。まだ学生であった頃にコレットと関係を持ち、妊娠させたということになるのだから。

まぁ、チェルシーという婚約者がいるのにコレットを恋人として側においていたのだから、どちらに気持ちがあったかということは誰でもわかっていたことだった。


「だけど、今まで王太子妃になるための教育を頑張ってくれていたから、側妃にして……」

「いえ、結構ですわ。」

「チェルシー様、強がらなくていいですよ?
婚約者に愛されなくて、悲しくて、惨めで、恥ずかしい思いをしているってわかっています。
でも、グランツ様は優しいから、側にいてもいいって言ってくれてるんですよ。嬉しいでしょ?」 


たかが男爵令嬢が、公爵令嬢に向かって上から目線など失礼にもほどがある。

そういった声が周りから聞こえる。確かに通常ではあってはならないことなのだから。


「婚約者に愛されないことは、悲しくて、惨めで、恥ずかしい、そうですよ?グランツ殿下。」

「は……?僕はコレットに愛されてる……あ、婚約者はチェルシーだった。」

「ええ。私に愛されなかった殿下は、悲しくて、惨めで、恥ずかしい思いをしているようですね。」
 

婚約者に愛されないのは女側だけが惨めだと決めつけるのはおかしいわよね?

周りからはクスクス笑いが聞こえる。
浮気しておいて、それでも自分は愛されているなんて自惚れていたのかって言ってるのが聞こえるわ。 


「婚約者だったのに、チェルシーは僕を愛していなかったのか?」

「私たちの婚約は王家からの強い要望で結ばれたものですよ?
恋愛関係にあったわけでもないのに、婚約者になったというだけで愛するわけないでしょう?
現に、殿下も私を愛していないではないですか。」


自分のことを棚に上げて何を言っているんだか。勘違いも甚だしい。


「ひどいっ!どうしてグランツ様にそんなひどいこと言うの?」


コレットは馬鹿なのか。自分の言葉が原因なのに。


「愛していなかったと直接告げることがひどいことということですか?グランツ殿下が私を愛していなかったということはコレット様が先ほど伝えてくださいましたものね。
まぁ、直接だろうが間接だろうが本人がいるところで言っているので変わりはないと思いますが。」 


それでは婚約破棄の手続きをするのでお先に失礼しますね。そう言ってチェルシーは卒業パーティーを後にしたのだ。

 
そうしないと、放心しているグランツではなく攻撃的なコレットがいつまでもうるさいから。
 


 
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