20 / 20
20.
親子判定の試作品。
それを見て顔色を悪くした側妃ネフェリーナに気づいたチェルシーを見て、意味深に笑った国王ルドルフ。
チェルシーはその笑みを、おそらく正しく理解した。
ローランドの父親は、国王ルドルフではないのだ。
ローランドが秘された王子だった理由の一つに側妃ネフェリーナの不貞が密かにあったとは……
ローランドとルドルフは似ていないな、と思っていた。顔だけでなく体格も。
そう言えば、子供のころにネフェリーナ様の騎士と遊ぶローランドは親子みたいだと思ったことがある。
がっしりとした体格になった今はますます2人が似ていると気づいた。
それを知っていて、ルドルフはローランドを次期国王にするつもりでいる。
ルドルフは国王を辞めたい、王族を辞めたいだけではなかったのだ。
ルドルフは自由もままならない王族の身分を嫌っていた。
捨てられるものであれば、捨てたかったのだろう。
しかし、自分以外に継げる者がいなかった。
国を壊したい。でもそれはしてはいけない。
賢王になりたくないルドルフは、執務はまともにするが、女性関係で笑われる道を選んだ。
その結果が、元男爵令嬢の正妃ルネーゼリアと元侯爵令嬢の側妃ネフェリーナだった。
ルネーゼリアを王妃にしては、もっと国が笑われると危惧した前国王陛下は在位を伸ばした。
そのことすら、ルドルフは自分が国王になる期間を短くするための計画だったのだ。
側妃ネフェリーナの不貞を知っていたのか、あるいは不貞を仕向けたのかはわからない。
だがローランドがルドルフの子供ではないと知っていた。
ローランドの存在が、ルドルフに王家の血筋を変えるというイタズラを思いつかせたのだろうか。
ルドルフは自分の血筋を残さない遊びを計画したのかもしれない。
ローランドを隠すようにして育てさせ、表に出るためには異母兄グランツよりも優秀であることを示さなければならないと思わせる。
逆にグランツは、王妃ルネーゼリアを見て育ったせいで、努力が苦手で自己中だ。
幼いころに身に着けたことは、大人になってもなかなか変えられない。
次期国王として受け入れられるのはローランドになり、グランツは母親の身分もあって貶される。
そう。ほぼ、今の状況のことだ。
ルドルフの思い通り、ここまで来た。
後は、数年後にローランドを若き国王に据えるだけだ。
建国以来続いてきた王家の血筋を絶たせることを計画していたとは思いもよらないことだった。
だが本当にずっと続いてきたのだろうか?
ルドルフみたいに、どこかで血筋を変えた王が、あるいは妃がいないとも限らない。
王族に生まれたルドルフの憂さ晴らし的な遊び。
ただそれだけで、王家は新たな血筋で繋がっていくことになる。
となると、コレットの腹の子は本当にグランツの子ではない?
ルドルフのことだ。とっくにグランツを断種して血筋を残さない処置をしているのではないか。
投げ文は、グランツの子として継承権を得ることのないようにするためということか。
チェルシーは微笑みながら目を開けた。
ルドルフの意味深な笑みは、イタズラがバレた笑みのようだった。
国王ルドルフとしては、気づいたチェルシーがこのことを告発しても構わないのだろう。
そうなれば、跡継ぎのためにルドルフは新たな令嬢に子を産ませなければならない。
正妃の座もその令嬢に。
遠縁に継がせる案もあるだろうが、重臣たちはルドルフの子を望むに違いない。
チェルシーの告発によって、ルドルフの自由は遠ざかる。
しかし彼は、チェルシーがそこまで高潔ではないことも知っている。
側妃ネフェリーナはチェルシーの母の友人で、愛するローランドの母なのだ。
不貞を公にしても、誰も救われない。
そしていつか、王家の血を継いでいないローランドを国王にしたという大罪を、ネフェリーナ様は懺悔しようとするかもしれない。それを口止めする役割もチェルシーに押しつけるのだ。共犯者として。
……わかりましたよ。黙っていればいいのですよね。自由になりたいのでしょう?
王妃様には表舞台から消えていただきました。
国王ルドルフもできるだけ早く表舞台から消えていただきましょうね。ご希望通りに。
……そして、できれば、ルネーゼリア様も連れて去ってくださいね。
<終わり>
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。
婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?
綴
恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢
この婚約破棄はどうなる?
ザッ思いつき作品
恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。