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しおりを挟むベルの言う通り、子を成していないのに不貞した妻とは離婚が可能だ。
格上から嫁いでいたとしても。
家の乗っ取りを防ぐために、妻は子供を産むまでは他の男と関係を持ってはならないのだ。
なのでもし、妻アイリスが不貞をしているのであれば、ベルが出した三つ目の提案が可能になる。
「ベルは妻について何か知っているのか?」
「いえ、お会いしたこともありませんし。」
「まるで妻が不貞したことがあるように聞こえたが?」
「その可能性がないわけではない、と思ったまでです。」
「そう言えば君は妻の不在を知っていて屋敷に来たのではないか?情報源はどこだ?」
「なんのことでしょうか?」
とぼけるつもりか。
だがもし、情報の出処がアイリスに近いところからだとすれば、不貞の話も信憑性がある。
学園はもちろん、社交界にすら姿を見せていないベルとの接点はわからないが。
「ディーゼル様は奥様と離婚される気はないようですので、私とカイルのことは忘れてください。」
「え?」
「ヘミング侯爵夫妻には、別の男の子供だったと伝えてください。それで全てなかったことになります。」
こちらが提案した二択は拒否され、ベルが提案した三つ目はディーゼルに離婚の意思がないのであれば意味がない。
考え込んでいる間に、妻と離婚してベルと結婚する気がないと思われたようだ。
ベルは立ち上がり、またサッサと出て行こうとしている。
「待ってくれ!結論を急がないでほしい。」
「ですが、私はカイルを手放す気もありませんし、愛人という立場になる気もありません。
あなたや侯爵がどうしてこようと、カイルはあなたの子だと私が認めなければ認知も不可能ですから。」
父の提案した二択は、ベルを怒らせたようだ。
こちらが認知する、しないではなく、ベルがディーゼルの子ではないと言うことで無関係になってしまう。
「すまなかった。確かにこちらの思い通りにしようとしてしまった。少し時間をくれないか?」
「何の時間ですか?」
「妻を調べる時間だ。」
ベルは眉をひそめてディーゼルを見た。
「奥様の素行に問題があれば離婚する可能性もある、と?本気ですか?
公爵家との縁を切り、どことも繋がりのない名ばかりの子爵と結婚してまでカイルを手に入れると?」
「自分を妻にしろと言ったのは口から出まかせか?だが提案の取り消しは認めないぞ。」
ベルは、たとえアイリスが不貞していたとしても侯爵である父が離婚を認めないだろうと思っていたから自分を妻にしろという三つ目の提案をしたのだろう。
不貞の事実があってもなくても、ベルの提案を断れば、カイルはディーゼルの子だと認めないつもりで。
だったら、必ず探し出す。妻アイリスと離婚できる情報を。
ベルとカイルを手に入れるために。
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