王命結婚しても、役目を果たせば愛する人の元に戻ります

しゃーりん

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ブラーム公爵の執務室を出たマーシャリーは廊下で待っていた侍女テッサに部屋へと案内された。

テッサは公爵邸に着いてすぐ、マーシャリー付きの侍女だと紹介された30半ばの女性だった。 


「こちらが奥様のお部屋になります。」


奥様、と呼ばれるのは嫌だなぁと思いながら部屋に入ると、広くて明るくて落ち着いた雰囲気の部屋を一目で気に入った。


「まあっ!素敵だわ。」


サットン男爵家の自分の部屋は、いかにも令嬢の部屋というような可愛らしい内装のままだった。
今思えば、子供っぽすぎた。
 
デイヴィスとの結婚に向けて、テープラー男爵家のマーシャリーの部屋は改装中だったが、最終案はまだ出していなかった。
あの部屋も貴族夫人の部屋にしては落ち着きのないものになっていたかもしれない。

年齢と中身が伴っていないと自分でも思った。


「奥様、こちらが今後の日程となります。」

「日程……?」


手渡された紙を見ると、朝からびっしりとスケジュールが詰まっている。
そしてそのほとんどが教育に関するものだった。


「な、なんなの、これ。」

「旦那様の指示でございます。奥様は公爵夫人として相応しい言動を身につける必要があるとのことでした。」

「……文句言ってくる。」

「はい……?」


マーシャリーは部屋を飛び出して、再びフィリップの執務室へと向かった。


「奥様っ!走ってはなりません!!」


テッサがそう言いながら追いかけて来るが、マーシャリーは無視して駆けていった。


「公爵様っ!!これってどういうことです?」


執務室の扉を勢いよく開けたマーシャリーに、フィリップはさすがに驚いた目を向けた。


「……お前、ノックもしないで不作法すぎるぞ。」

「そんなことよりっ!このスケジュールのことです!!なんでこんなに教育ばかりっ!!」

「必要だろう?」

「離婚前提なんだから意味ないじゃないですかっ!」 


嫌がらせに決まっているわ。


「はぁ……。離婚前提だろうが王命だろうが、お前はブラーム公爵夫人として私の隣に立つ。男爵令嬢だった時と違い、人前に出る機会は多いんだぞ?恥をかき笑い者になりたいのか?」

「自分が笑われたくないだけじゃないんですか?」


マーシャリーが笑われるとフィリップも笑われることになる。
でも、不機嫌公爵がもっと不機嫌公爵になるだけで気にしないかも。
 

「まったく、お前はキーキーうるさいな。カイド、何かに似てないか?」

「そうですねぇ。リスとかマーモセットの鳴き声でしょうか。」


マーモセットって何だっけ?


「マーモセットというのは小さい猿のことだ。危険を察知するとうるさく叫ぶ。お前みたいだろ?」 


小さい猿? 
イメージは可愛いけれど、うるさく叫ぶってひどくない?
 
 
 

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