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初夜を行う日が来た。
マーシャリーは、体中を磨かれた後に透けている夜着を目にした途端、叫んだ。
「い、い、いつものようなネグリジェにしてっ!!」
渋々、テッサが手にしたロング丈のネグリジェをマーシャリーは奪うようにして着た。
いつものよりも肌触りが良かった。
「こちらでお待ちください。」
テッサが案内したのは、いつもは鍵がかかっていて開かない扉だった。
「ここって、夫婦の寝室?」
「そうでございます。」
公爵家に来てから寝ているベッドよりも大きいベッドがそこにはあった。
ベッドに座った途端、急に怖くなった。
閨教育で教わった知識が頭を駆け巡ったから。
フィリップに身を捧げる。
つまり、彼の手が、マーシャリーの体中に触れることになる。
ゾゾッと寒気がした。
「む、無理よ。そんなの嫌っ!!」
耐えられそうにないと自分の部屋に戻ろうと扉に手をかけたが、開かなかった。
「テッサ、開けてっ!!開けてよぉ……」
マーシャリーは泣きながら扉を叩いたが、開かなかった。
わかっている。
マーシャリーがフィリップとの間に子供をつくるための王命結婚なのだから、逃げるわけにはいかないということを。
それでもまだ、心が追いついていなかった。
自分でも往生際が悪いとわかっていた。
フィリップが寝室に入ってきた時、マーシャリーは酒を飲んでいた。
この寝室に用意されていた酒で、おそらくフィリップ用の強い酒。
辛くて美味しくなかった。
それでもこれしかないと思った。
「……ちょっと待っていてください。そんなに強くないので限界が来たら寝てしまいます。そうしたら寝ている間に終わらせてくださいね。」
マーシャリーは眠ってしまうつもりでいた。
フィリップのため息が聞こえたため彼の方を見ると、いつもの不機嫌さに加えて濡れて無造作になっている髪が顔にかかり、色気を醸し出していてドキッとした。
そう見えたのは、お酒のせいに違いない。
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「……萎えるってどういう意味?」
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確か、男性器は性的興奮によって硬くなり、その状態にならないと繋がれないと習った。
つまり、彼はマーシャリーが相手だと興奮しないと言っているも同然だった。
「失礼ねっ!!私だって、私だって……ううぅ~」
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こんなんだからソノ気になれないと言われているのに。
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