恋心を利用されている夫をそろそろ返してもらいます

しゃーりん

文字の大きさ
1 / 9

1.

 
 
マーキュリー侯爵令嬢ソランジュは、今日、マーズ伯爵令息オーリオと結婚した。

私たちは政略結婚。

オーリオはソランジュの1歳年上。
二人の仲は婚約時代に全く深まることはなかった。

しかし、初夜は行われた。

ほぼ会話はなく、淡々と。共に眠る気はないようで部屋を出て行った。
しかし、侍女を呼んでくれたことで、労わる気持ちは持ち合わせていたようだ。

体をきれいにした後、自分の部屋のベッドで眠った。

夫婦の寝室で戻ってこない夫を悲しみ、泣きながら眠る妻を演じるつもりはない。

初夜は終わった。

ソランジュは間違いなくオーリオの妻になったのだ。




ソランジュがオーリオと婚約したのは14歳のとき。
顔は好みだけど、頭は弱そうだと少し会話をして思った。

オーリオは15歳で既に学園に入学して半年が過ぎていた。
そのせいで、オーリオは忙しいのか婚約時に顔を合わせた以外はデートにも誘われなかった。

しかし、忙しいのだと思っていたのは間違いだったと半年後にソランジュが入学してから気づいた。



オーリオは王太子殿下の側近候補になったのか、取り巻き、もとい、友人のように行動を共にしていた。

『意外と野心があるのね』

ソランジュは初め、そう思った。だから忙しいのだ、と。

婚約者であるソランジュが入学しても会いに来ない。連絡もない。
交流を深める気がないのは明らかだった。

恋愛によって婚約したわけではない。政略的なもの。
徐々にお互いを知っていけばいいと思っていたが、今のオーリオにその気はないらしい。

しかし、結婚すれば嫌でも同じ家に住むことになる。跡継ぎも必要になる。
人生は長い。結婚後に歩み寄ればいい。それでもオーリオの態度が変わらなければ、その時考えよう。

そう思っていた。 

だが、オーリオの視線の先を辿ることで気づいた。

『あぁ、オーリオ様には好きな人がいたのね』

だからソランジュと交流する気がなかったのだ。

しかし、その相手はウラノス王太子殿下の婚約者サミア・プルート公爵令嬢だった。

輝くような美貌で、人を魅了するような笑顔。

オーリオも恋心を抱いてしまったのだとわかった。

報われない恋。

王太子殿下と行動を共にすることでサミア様を好きになったのか、サミア様に恋をしたから王太子殿下の友人枠を獲得したのかはわからないが、不毛な恋であることは確かだった。


ウラノス王太子殿下とサミア公爵令嬢の結婚はよほどのことがない限りなくならない。

サミア様が王家に嫁ぐことは、王家とプルート公爵家との密約、悲願が背景にあると言われている。 


それでも近くにいられるだけで幸せなのだろうか。

あるいは、ウラノス王太子殿下にサミア様ではない恋人がいるせいだろうか。

王太子殿下には側妃を選ぶという理由があるため、恋人がいても何も問題はない。
だが、サミア様が恋人をつくることはない。恋人をつくれば王太子殿下との婚約はなくなるからだ。

つまり、実ることがない恋を、ソランジュの婚約者オーリオはしていた。 







 

あなたにおすすめの小説

いくつもの、最期の願い

しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。 夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。 そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。 メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。 死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

さよなら私の愛しい人

ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。 ※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます! ※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話