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しおりを挟むこの国では、学園1年生が終えると社交デビューとなる。
つまり、全員が16歳になってから。
女性は、16歳になりデビューを終えると結婚できるようになる。
だけど、今の時代は学園を卒業してから結婚することが主流となっているので2年生になった時に結婚して来なくなる令嬢は少なくなっている。
そんな社交デビューまであと1か月といった頃、久しぶりにロメオ様がクレージュの前に姿を現した。
「仕方がないから、1曲だけ踊ってやる。わかったな。」
「え?1曲?って?」
「図々しいな。2曲はダメだ。リリスがいるからな。1曲だけなら婚約者として踊ってやる。」
「は?デビューのダンスの話ですか?私はあなたの婚約者ではな……いんですけど。」
ロメオ様は私の言葉をまた最後まで聞かず、言い逃げのように去って行った。
「はぁ。また最後まで聞かないで行ってしまったわ。」
カッシーナもメイベルもリナも大笑い。
「何?なにアレ。まだ勘違いしてるの?
1曲だけ踊るって、婚約者扱いしてもないのに婚約者気取りなの?」
入場と始めのダンスは、父親や兄、親族が相手をつとめる。
すでに婚約者がいる場合は、2曲目以降に同じ飾りをつけて踊ることになる。
婚約者いる者は飾りを左に、いないものは右につける。
婚約者がいるかいないかがわかるようになっているのだ。
一瞬、ロメオと同じ飾りをつける自分を想像してしまい、寒気がした。
「アレの頭の中って、自分に都合よく書き換えたままなんじゃない?」
「前に『計画が狂う』って言ってたわね。まさか私と結婚するけどリリスを愛人にするとか?」
「まさかぁ。リリスも一応伯爵令嬢よ。愛人はプライドが許さないでしょう。」
「でも、アレとの中庭での交流は学園内だけじゃなく知れ渡るわ。縁談の申し込みある?」
「そうよね。それに私と婚約は解消しない、結婚するって前に言ったあの言葉は本気なの?」
「リリスは学生時代の遊びってこと?リリスの社交デビューに来る気なのに?」
「そこは、クレージュの社交デビューって言うべきところよ。
アレの中では一応、クレージュが婚約者だから。」
既にデビューしている者は出席は自由。
ロメオ様はデビューを終えているし婚約者はいないので、出席しなくても問題ない。
基本的に婚約者がデビューする場合は出席することになるが。ロメオ様が来る気なのはそのせい。
あとは婚約者を探している者が物色しに来る場合もある。
「どんな計画を立てていても実現はしないけどね。」
「でも、アレが立てた計画がどんなにおバカか聞いてみたくない?」
「絶対に笑えそうね。リリスに聞いたら喜んで教えてくれるんじゃない?」
「いやよ。もうかかわりたくないもの。」
何か起きては面倒なので、父からブラック伯爵に伝えてもらおう。
万が一、デビューの日に絡まれれば騒ぎになってしまう恐れもある。
ロメオ様が恥をかくのは自業自得だけど、そのせいでブラック伯爵家まで巻き込まれるのは気の毒だから。
だけど、これが最後の忠告にしよう。
ロメオ様の暴走を今後も放置し続けるつもりなら、我がオリーブ伯爵家はブラック伯爵家とのかかわりを断つことにするだろうから。
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