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しおりを挟むハルモニア伯爵家の家族構成は少々複雑である。
パトリシアにしてみれば、複雑でも何でもないのだが、イゾベラの存在が複雑に思われる原因である。
父であるハルモニア伯爵アラベルトの子はパトリシア一人。
そのため、ハルモニア伯爵家を継ぐのはパトリシアと決まっている。
パトリシアの母は、出産後、体調不良のまま半年後に亡くなった。
その後、父はリーシェという子爵令嬢と再婚した。
リーシェの連れ子がイゾベラであり、ちなみにリーシェの子ではなくリーシェの姉の子である。
リーシェの姉、サラーナは平民の男と恋をし、駆け落ち同然に結婚した。
しかし、イゾベラを妊娠している時から男は別の女と浮気しており、イゾベラが生後三か月の頃にサラーナとイゾベラを置いて逃げた。
サラーナはイゾベラがいると新しい恋ができないと言って、リーシェにイゾベラを押しつけて逃げた。
リーシェの両親も、兄夫婦も、平民の血を引いているイゾベラの面倒を見る気はないと言った。頼まれたのはリーシェなのだからと。
リーシェはイゾベラを連れて嫁いでもいいかと婚約者に頼んだが、断られて婚約破棄の慰謝料を求められた。
しかしそれは、婚約者に平民の愛人と庶子がいることを新たな婚約者に教えると言ったことで、円満な婚約解消となった。
リーシェは婚約者のことを嫌っていたので、イゾベラを利用して結婚せずに済んで助かったのだ。
しかし、両親からは新たな婚約者を自分で探すか、イゾベラを孤児院に捨ててくるか、半年以内に決めろと言われてしまう。
途方に暮れていた時、妻を亡くしたアラベルト・ハルモニアの後妻を狙っている令嬢が何人もいると耳にし、リーシェはなりふり構わず、アラベルトに頼み込んだ。
父アラベルトは、再婚を断り続けることも難しいとわかっていたし、パトリシアに母親が必要であることもわかっていたため、訳ありなリーシェとならと煩わしさから逃れられると契約結婚をすることにした。
愛は求めない。
子供は作らない。
パトリシアを大切にする。
実家とは付き合わない。
イゾベラは養子にしない。養育は最長18歳まで。
こうして、リーシェは父アラベルトと結婚して後妻となり、パトリシアの継母となった。
パトリシアとイゾベラは物心ついた頃から、当然のことながら明らかな差をつけて育てられていた。
だが、父がいない時は食事を一緒にする機会も多く、しかも、イゾベラの立場を正しく理解していない使用人が父の庶子だと勘違いしてイゾベラの待遇に同情し、それをイゾベラも真に受けて勘違いしていた時期があった。
ハルモニア伯爵家の者でもなく、使用人でもないイゾベラは、自分とパトリシアを比較して不満をよく口にするようになった。
しかし、何を言おうがイゾベラは伯爵家の者ではない。
パトリシアは学園を卒業すればイゾベラとはお別れであるため、何を言われようが相手にすることはなかった。
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