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しおりを挟む学園の最終学年が始まった日、パトリシアは教室に入るとクラスメイトたちから質問をされた。
聞かれるだろうとは思っていた。
ダリス侯爵が息子リチャードの婚約を吹聴しているから、多くの貴族の耳に入っている。
「パトリシア、リチャード様と婚約ってどういうこと?ブライアンと別れたの?」
ブライアンは伯爵家の次男で、パトリシアの恋人だった。
彼と婚約を結ぶはずが、リチャードに代わってしまったのだ。
「父が、ダリス侯爵に押し切られて断れなかったのよ。仕方なく婚約はしたけれど、リチャード様と結婚する気はないわ。この一年の間に婚約解消になるように仕向けるつもりよ。」
パトリシアはクラスメイトとブライアンに向けてそう言った。
ブライアンにはリチャードとの婚約の話が出た時に事情を話している。
彼との関係を続けたままではリチャードとの婚約解消に支障が出る恐れもあるため、今は別れている。
パトリシアが婚約解消できるまで待つとブライアンは言ってくれた。
彼との関係は、このクラスでは公認だったのだ。
成績優秀者十人だけのこのクラスの顔ぶれはずっと変わっていないため、団結力もあり、味方になってくれる。
「仕向けるってどうやって?」
「我が伯爵家の同居人が勝手に動いてくれると思うの。彼女は私の結婚相手の愛人になる気だから。」
イゾベラの立場のことも彼らは知っている。
パトリシアの異母妹と勘違いしていた者もいたが、今は居候の平民だとわかっている。
ブライアンともっと早く婚約しなかったのも、イゾベラが彼の周りをうろつきそうで面倒だったから。
そう思って遅らせたことが裏目に出てしまったけれど。
パトリシアとブライアンの婚約を阻止するかのような土壇場でのリチャードとの婚約だった。
「あー……イゾベラね。そう言えば、今日からあの二人って同じクラスになったんじゃない?」
元々、最下位クラスにいるイゾベラと、一つ上のクラスから落ちたリチャード。
忖度なく成績順でクラス分けされており、侯爵令息であるリチャードの最下位クラス落ちはかなり不名誉なことだ。
「そうなの。だから仲良くなると思うの。しかも、イゾベラが私の悪口とか吹き込んでくれそうでしょ?」
「なるほど。リチャード様なら信じそうね。」
「それにね、イゾベラもまた私に絡んで来るかもしれない。私が冷たいとか何とか言って。」
過去に何度かあった。
『一緒に暮らしているのに話しかけても無視されるの』と周りの同情を引こうとしていたが、パトリシアとイゾベラが赤の他人だと知っているここのクラスメイトたちは彼女を相手にしなかった。
リチャードは父親からイゾベラの素性を聞いただろうが、すぐに忘れてイゾベラの話を鵜呑みにしそうである。
イゾベラは相手が勘違いしそうな言い方をするのが上手いから。
「私ね、リチャード様には淡々と接するつもりなの。彼はそんな女性が苦手そうでしょう?」
「確かに。ヘラヘラした態度が通じないから。」
「イゾベラとリチャード様が一緒になって、私を批判するかもしれない。そうなっても皆には私の援護はしないでほしいの。」
冷たい女だと思わせたい。
婚約を解消したくなるように。
パトリシアの狙いを聞き、クラスメイトたちは了承してくれた。
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