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しおりを挟むパトリシアがリチャードと婚約してから三か月、思ったよりも早くその日はやってきた。
いつものように学園内でイゾベラに呼び止められて、パトリシアは足を止めた。
「お姉様!あの、来月のお姉様のお誕生日パーティー、私も一緒にお祝いを……」
「お断りするわ。」
イゾベラはどちらの意味で口にしたのだろうか。
二日違いの自分の誕生日も一緒に祝ってほしい?
それとも、パーティーに自分も出席させてほしい?
どちらの意味にしても、お断りだ。
以前、イゾベラはパトリシアが贈られたプレゼントを『自分ももうすぐ誕生日だから』と勝手に持ち去ろうとしたことがある。
小さい頃は何度か同居人として贈り物をしたことがあったが、それ以降、何も渡さないことにした。
使用人ではないから、という待遇が、イゾベラを増長させていたことに気づいたからだ。
継母の姪ではあるが平民という立場は誰にとっても扱いづらいところがあった。
パトリシアが冷たく言い、イゾベラが涙を流すのはいつものことだった。
また前向きな言葉を口にして『健気な妹』を演じるのだろうと思いながらパトリシアはイゾベラの前から去ろうとしたのだが、リチャードがそれを止めた。
「パトリシア嬢、君みたいな冷徹な女がこの僕の婚約者だなんて、もう耐えられない。婚約は解消だ!僕はベラと婚約を結びなおし、彼女と結婚する!」
「あら。喜んで婚約解消を受け入れますわ。」
パトリシアは思わず満面の笑みで答えた。
その反応に、リチャードは驚き、イゾベラは慌てている。
「リチャード様?婚約解消だなんて、どうしてそんな……ダメですよ。取り消してください。」
イゾベラにしてみれば、リチャードの発言は予想外のことだったのだろう。
彼女はやり過ぎたのだ。
リチャードはイゾベラがパトリシアの異母妹なのだと信じてしまっているのだから。
「イゾベラ、よかったわね。リチャード様とお幸せにね。」
「あ、ちがっ……誤解よ。私、そんなつもりじゃ……」
イゾベラは焦ってなかったことにしようとするが、リチャードが止まらない。
「ベラ。君は伯爵夫妻の子なのだから伯爵令嬢で間違いないんだ。僕と結婚してハルモニア伯爵家を継ごう。この僕がパトリシア嬢ではなく君を選ぶのだから、跡継ぎは君に代わるのは当然のことだ。」
「「「………………?」」」
周りで様子を伺っていた者たちのほとんどが、リチャードが言ったことに首を傾げた。
何故、ハルモニア伯爵家の跡継ぎなのにリチャードが選べるのか、と。
しかし、二人のクラスメイトたちは疑問に思うことなく拍手を送っていた。
「おめでとう!思い合っている二人の絆が勝ったのね。恋愛結婚なんてステキ!!」
「『健気な妹』が『冷徹な姉』より愛されるのは当然のことだ!」
イゾベラのクラスメイトたちがそう囃し立て、リチャードはイゾベラの肩を抱いて嬉しそうだ。
だが、イゾベラの顔は引き攣っているのではないか。
さあ、仕上げにかかろう。
「まあ!おかしなことをおっしゃるのね。ハルモニア伯爵である父の娘は私一人。イゾベラは赤の他人だわ。」
パトリシアの言葉は、その場にいた多くの者を沈黙させた。
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