冷徹な姉と健気な妹……?

しゃーりん

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リチャードとの婚約を解消した翌日、パトリシアはブライアンとクラスメイトたちにそれを報告した。


「おめでとう!まさか、昨日のうちに手続きまで済ませるなんて。」


パトリシアも、週末にでも時間を取り付けてからになると思っていた。


「家に帰ったら、ダリス侯爵とリチャード様が来ていたの。婚約解消の話は誤解があったのだと父を丸め込もうとしていたようだけど、これまでも婚約者らしい付き合いをしていなかったことを話したら、リチャード様を婿に出すには常識が無さ過ぎて危ういと気づいたのでしょうね。」


父は、婚約を結んだ時から、いつか解消されることを願って書類を準備していたので、すぐに手続きができた。


「婚約破棄にはしなかったの?」

「ええ。たった三か月間だけだったし、居候だったイゾベラの言動が誤解を招いたことだし。
双方の同意で解消に至ったという方が気が楽だと思って。」


積極的にイゾベラの言動を否定しなかったパトリシアにも非があると言えばある気がする。
それを理由に再構築を言われる前に、サラッと解消で済ませた方が無難だった。
慰謝料だの何だのと欲をかけば、父がまた押し切られてしまう可能性もあったということもある。


「週末、ハルモニア伯爵にお会いしたいと伝えてくれないか?両親にも訪問伺いの手紙を送ってもらうから。」


そう言ったのはブライアンだった。


「ええ。わかったわ。待ってる。」


今度こそ、ブライアンと婚約を結べる。
そう思うと、パトリシアの頬は緩んでいた。



少しして、リチャードとイゾベラのクラスの様子を見てきた令息が戻ってきた。


「イゾベラは来ていない。リチャードが言うには、彼女は身を引くという手紙を侯爵家に渡して出て行ったらしいぞ。嘘を言っているようには聞こえなかった。」


パトリシアは首を傾げた。
イゾベラが頼れるのはリチャードだけだったはずなのに。 
 

「逃げたんじゃないか?イゾベラは平民だから、もしリチャードとの結婚を許されても平民として暮らすことになったら、リチャードの世話をするのは彼女だろう?彼女の両親も貴族と平民の結婚で逃げ出したんだから、うまくいかないって気づいたんじゃないかな。」


みんな、なるほど、と頷いている。

イゾベラは自分が楽に暮らすために、パトリシアの夫の愛人になろうと考えるような女である。

それなのに、このままではリチャードというお荷物を背負うことになるかもしれないと侯爵家を訪れてから気づいたのかもしれない。

屋敷を見て、愛人ならともかく、妻になるのを侯爵が許すはずもないと悟ったのだろうか。 
むしろ、リチャードを切り捨てて、イゾベラに押しつけるかもしれない、と。
 
もしもそうなら、その考えはあり得ない話でもない。

イゾベラ一人なら、自活できるだろう。
念のため、鞄の中には数日くらいは宿に泊まれる金が入っているはずなので、住み込みの仕事を探せば何とかなるだろうから。
 
そう思っていた。
 

  *  *  *

パトリシアの耳に、イゾベラが娼婦になっていることが届いたのはこの三年後のことだった。

ちなみにその時には、最初にいた娼館から二つランクが下の場所にいたという。一応、まだ下はある。
客を貶したことで苦情があり、それが積み重なって娼館を移動させられている。
それでも挨拶のように、”愛人にして!楽に暮らしたいの!”と諦めていないらしいが、”金持ちになったらな”と誰も可愛いだけの顔に絆されることなくあしらっている。だが、そこそこ客はつくという不思議な状態らしい。

リチャードの方は、子爵令嬢と結婚し、王都ではなくダリス侯爵家の領地で簡単な仕事にも頭を悩ませるが、妻に励まされて仲良くやっているという。
ただ、嫉妬深く常に見張られていて浮気のしようもないのだとか。

  *  *  *



週末になり、ブライアンが両親とハルモニア伯爵家を訪れて、婚約を交わした。


「卒業したら、なるべく早く結婚しような。」

「そうね。そうしましょう。」


もう、誰にも邪魔されないように。


パトリシアとブライアンは、庭の大きな木の後ろに隠れて抱きしめ合い、キスをした。

別れなければならなかった三か月間は、恋しく思う気持ちを募らせて、二人の絆はより強くなったように感じた。
 


<終わり>


 
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